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中国、自動車輸出で世界首位 EV・電池急成長、「リスク」警戒


 中国の2023年1~6月の自動車輸出台数が日本を上回り、世界首位となった。電気自動車(EV)など新エネルギー車の輸出が伸びたのが主因だ。中国政府の普及支援策を追い風に中国は世界最大のEV市場となっているが、欧州など海外でも人気が高まっている。勢いは今後も続くのか。

 ブリュッセル郊外の町、ザベンテム。通り沿いにフォルクスワーゲンなど各国自動車メーカーの販売店が軒を連ねている。この場所に9カ月前に出店したのが中国EV最大手、比亜迪(BYD)だ。販売店のマーケティング担当、ローラ・ビラット氏は「売り上げはどんどん伸びている。環境意識の高まりと、EVへの税控除が原動力になっている」と語る。

 中国自動車工業協会によると、1~5月の新エネ車の国別輸出台数はベルギーが首位。BYDの販売台数は23年に米テスラを超え、世界首位になることが見込まれている。ビラット氏は「以前の中国車は低価格で低品質とみられていたが今は違う。中国メーカーは研究開発力でも欧州製をしのいでいる。低価格だけでなく、高品質であることが顧客に理解されてきている」と話す。

 同協会によると、中国の1~6月の自動車輸出台数は前年同期比75%増の214万台だった。これに対し、日本自動車工業会が31日発表した輸出台数は同16%増の202万台。半期ベースで中国が日本を上回り世界首位になるのは初めてとみられ、中国メディアは「23年は400万台超となり、通年でも世界最大の自動車輸出国になる」と相次いで報じている。

 中国の輸出拡大をけん引したのは新エネ車で、上半期53万台と前年同期の2・6倍となった。タイやフィリピンなど中国の経済的影響力が近年増している東南アジアだけでなく、ベルギーや英国など自国の自動車メーカーが強い欧州向けが目立つ。

 背景にあるのが中国メーカーの急成長だ。中国は22年の新車販売台数が2686万台と、世界で最も自動車が売れている。EVだけでも536万台で、ガソリン車を含む日本の新車販売台数(420万台)を上回る。政府の補助金や減税政策の影響は大きいものの、各社は車体価格や、人工知能(AI)を駆使した音声認識機能などのサービスでしのぎを削っている。中国内で競争力を高めたことで、近年は海外進出を本格化させている。

 中国勢の強みとして、EVの性能や価格を決定づける動力源のリチウムイオン電池の供給網を国内で確立していることも大きい。中国内陸部の貴州省は原料となる鉱物資源が豊富で、車載用電池で世界最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が生産工場を構えるほか、関連する素材や部品メーカーが集積する。電池の正極部分の素材を製造する中偉新材料(同省銅仁市)は「亀裂を抑え、電池のエネルギー密度の高度化に貢献している。高価なコバルトの使用量を減らす開発を進め、製造コストも大幅に抑えている」(広報担当の楊翠さん)といい、中国勢以外でもトヨタ自動車やホンダ、米テスラにも採用されている。

 欧州では今後、中国勢への警戒感が高まる可能性がある。欧州連合(EU)の後押しで新エネ車の普及が進み、市場規模は中国に次ぐ2位だが、仏コンサルティング大手・イノベブは、中国勢の販売シェアは22年段階で既に9%に達し、30年には20%を握ると予測する。特に価格の低さが目立つ。調査会社S&Pグローバルモビリティーによると、今年6月中旬時点で英国で販売されている独フォルクスワーゲンのEVは1台3・7万ポンド(約670万円)だが、同等のクラスの上海汽車集団傘下の英MGが販売する最新EVは最大約1万ポンド安いという。

 これまで世界2位の自動車輸出大国だったドイツは、22年に中国にその座を奪われた。独保険会社アリアンツ・トレードは今年5月に発表したリポートで、欧州メーカーは中国や欧州での販売不振で30年までに年間70億ユーロ(約1兆円)の利益を失う可能性があると指摘。「最大のリスクは中国」と警告した。

 もっとも中国勢のEVは、米中関係の悪化を背景に電池で「脱中国依存」を目指す米国では税制優遇措置の対象外となり苦戦している。今回の輸出増の背景には、ウクライナ侵攻に伴う経済制裁で日米欧のメーカーが相次ぎ撤退したロシア向けのガソリン車が急増したこともある。

 日本はEV開発で出遅れ、これまでシェアの高かった東南アジア市場も中国勢に侵食されるなど苦戦が続いており、各国の競争の行方が引き続き注目される。【北京・小倉祥徳、ブリュッセル宮川裕章】

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