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全線赤字のJR四国、新法成立で活路? 鉄道の存廃協議を国が仲介


 全国各地で鉄道ローカル線の経営が悪化する中、4月21日に「地域公共交通の再編に向けた関連法」が成立した。5月25日には、再編法についての四国ブロック説明会が高松市であり、JR四国など事業者や各自治体から約100人が参加した。四国の主要鉄道網を維持するJR四国も、全路線赤字という厳しい経営環境にある。再編法によって展望は開けるのだろうか。【佐々木雅彦】

 再編法の柱は、地方鉄道の存廃を自治体や事業者が話し合う「再構築協議会」制度をつくったことだ。自治体か事業者の要請を受けた国交省が設置し、存続させるか、バスなどに転換するかを議論する。対象は、1キロ当たり1日平均乗客数を示す「輸送密度」が1000人未満を目安としている。協議期間は3年間を想定し、国が協議会開催や実証事業費などを財政支援する。

 JR四国の西牧世博社長は4月25日の記者会見で存廃議論の候補に、新型コロナウイルス禍前の2019年度の輸送密度が1000人未満だった3線区4区間を挙げ、「どれかから(議論を)始めたい」と話した。4区間は、予土線の北宇和島(愛媛)―若井(高知)▽牟岐線の阿南(徳島)―牟岐(同)▽牟岐線の牟岐―阿波海南(同)▽予讃線(海回り)の向井原(愛媛)―伊予大洲(同)。各県担当者に申し入れたことも明らかにした。

 再編法成立の背景には、全国で鉄道各社が運行の見直しを模索しているものの、沿線自治体が廃線を警戒して反発し議論が進まないケースが多い現実がある。国が仲介することで、望ましい地域公共交通のあり方の議論を進めることが目的だ。

 JR四国はコロナ禍前には瀬戸大橋線が唯一の黒字路線で、全国に先駆けて地元自治体と利用促進に向けて話し合いを続けてきた。10年4月~11年7月に「四国における鉄道ネットワークのあり方に関する懇談会」が、17年8月~19年10月には「同懇談会Ⅱ」が開かれ、4県、国、地元経済界などと議論を重ねてきた。

 その結果、JR四国は非鉄道部門での収益確保など経営努力を続ける▽他の交通機関との連携を強化する――といった内容がまとまり、現在も各県で利用促進策の取り組みが進んでいる。

 また、JR四国は20年3月には国交省から経営改善指導を受けて、21年度から5年間の中期経営計画と10年間の長期経営ビジョンを作成。地域と一体となった利用促進やワンマン運転の拡大によるコスト削減への取り組みを進めている。

 再編法は10月1日に全面施行される。いきなり再構築協議会が設置されるわけではなく、まずは、県など自治体が中心となって協議会を設けて検討を進めることが原則だ。うまく機能しない場合に、国が仲介する再構築協議会に移行することになる。国交省四国運輸局交通企画課は「再編法の一番の目的は、議論の場ができること。財政支援も充実させた」と説明する。

 JR四国は、これまでの自治体との話し合いや、国の指導を受けた取り組みを活用しながら、再編法に対応していくことになる。関係者からは「再編法ができたことで議論がしやすくなるのでは」という声も聞かれる。

 一方、自治体からは「国の責務」を強調する声が上がる。6月6日にあった四国4県の知事会議でも鉄道網の維持・活性化が議題になり、国への緊急提言を採択し、国交省に提出された。

 提言では「四国の鉄道は全体でネットワークを形成しており、赤字を理由に一部が廃止されてしまうと、ネットワークの効果が失われ、大きな負の影響を及ぼすことが懸念される」と指摘した。

 その上で、(1)JR四国では、国鉄分割民営化の際の経営安定基金を活用した事業継続スキームによる路線維持が困難になっている現状を踏まえ、経営課題の解決に国の責務として引き続き取り組む(2)路線ごとの利用状況を過度に重視して廃止などを促進することがないようにする(3)これまで鉄道事業者と沿線地域が進めてきた取り組みを尊重して実情に応じた財政支援を講じる――ことなどが盛り込まれた。

 国が仲介することで果たして活路が開けるのか、注目される。

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