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ワグネルへの非難と支持 市民の複雑な心境 混迷のロシアを反映


 ロシアの民間軍事会社「ワグネル」と創設者プリゴジン氏は首都モスクワに向けて進軍して、国内外を揺るがした。ロシアで市民にその評価を尋ねると、それぞれの立場によって非難と支持の両方の言葉が返ってきた。ワグネルとプリゴジン氏に対する市民の複雑な心境は、混迷するロシアの今の世情を反映していると言える。

 26日のモスクワは普通の月曜日だったはずだが、2日前にワグネルが起こした騒乱の余波を受け、政府によって「労働を奨励しない日」にされた。その影響を受けたのかは定かではないが、モスクワ中心部にあるコーヒー店では客の姿はまばらだった。

 「私は日本のことが好きなのです」と記者に話しかけてきた女性従業員に対し、プリゴジン氏の評価を尋ねてみた。すると「そういうテーマは話したくないのです……」と言葉を濁した。

 今のロシアではウクライナで続く「特別軍事作戦」に関して、このように極力発言を避ける人が多数派だ。ただ、毎日新聞モスクワ支局の助手が取材した12人の市民の中には、遠回しに軍事作戦に否定的な見方を示し、その延長線上でワグネルを批判する答えも少なくなかった。

 「英雄とはみんなが平和裏に暮らせるように周囲を整えていく人だと思っています」と55歳の女性マリーナさんは話す。

 モスクワでは今、世界的な音楽コンクールであるチャイコフスキー国際音楽コンクールが催されている。ドイツの作曲家リヒャルト・ワグナー(ロシア語の読みはワグネル)と、雇い兵部隊のワグネルを関連付けて「ワグネルは私の好みの音楽でありません」。56歳の男性セルゲイさんはこんな皮肉を口にした。

 ワグネルがロシア国内で否定的な印象を持たれてきたのは、国外の戦闘で汚れ役を担っているとみられてきたからだ。2022年に「特別軍事作戦」が始まった後も、裏切った戦闘員をハンマーで撲殺した事例が伝わり、粗野で凶暴な組織とのイメージも広がった。

 一方、ロシアは14年からウクライナ東部で始まった紛争をあおり、その後に本格介入してきたが、露国内ではロシア系住民への虐殺を防ぐ措置だったと信じる人が少なくない。こうした人たちの間では、この紛争にも参戦したワグネルやプリゴジン氏の評価はもともと高い。

 特別養護教育施設で働くアンナさん(44)は、ケータリング事業で財を成した実業家のプリゴジン氏の企業からは、いつも質の悪い食べ物が届いたと打ち明けつつ、ウクライナの前線でワグネルの部隊が従軍してきた点を踏まえると「我々を守ってきてくれたことを感謝しています」と語った。

 今回の騒乱では、ワグネルは南部ロストフ州にある南部軍管区司令部を占拠したが、地元住民がワグネルの部隊に支持の声援を送った光景も伝えられた。ただ、ロストフの地元住民の見方も分かれる。

 同州住民のイリーナさん(40)は、もともとプリゴジン氏とワグネルに好意的な感情を抱いていたという。その上で「唯一残念だったのはプリゴジン氏が早々に諦めてしまい、(部隊を)モスクワまで行かせなかった点です」と言い切った。

 ただ、同じ州の住民でもバディムさん(49)は、ワグネルが争乱を起こしたことにより「敵(ウクライナ軍)に得をさせる事態にもなりかねなかった」として、プリゴジン氏の行動を批判した。

 また、プリゴジン氏よりも、プリゴジン氏が「腐敗している」と非難した政府高官らに対して、より嫌悪感を示す見方もあった。プーチン大統領は反乱を起こしたプリゴジン氏らを「裏切り者」と糾弾した。しかし、その直後にワグネルがモスクワに向けて進軍すると、首都近郊に住む政府高官や実業家が相次いで専用機を飛び立たせたと伝えられている。34歳の男性マルクさんは、避難を試みた者たちこそが「裏切り者に近いと思います」と批判の矛先を変えた。【モスクワ大前仁】

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