ソフトバンクグループ(SBG)は21日、東京都内で定時株主総会を開いた。経営トップとして約半年ぶりに表舞台に立った孫正義会長兼社長は、ファンド事業で巨額の資金を投じてきた人工知能(AI)について、「(能力が)全人類の英知の1万倍になるのではないか。グループを挙げてAI革命の先端を担っていきたい」と述べ、「いよいよ反転攻勢の時期が近づいてきた」と意気込んだ。
孫氏はプレゼンテーションの冒頭、SBGがファンド事業の不振で巨額の赤字に陥っていた昨秋のエピソードを披露。自身の事業家人生を振り返り、「こんな程度でよいのだろうか」とむなしく感じ、数日間涙が止まらなかったという。
そこで、自分がやりたかったことは何かと自問自答し、「人類の未来のアーキテクト(構築)」だと行き着いた。それから約8カ月間で、AI関連を中心に約630件の発明をしたという。
孫氏は「大半は駄作だと思うが、中には自分でもびっくりするくらいのものもある」という。「右脳が活発に働き、幸せいっぱい、忙しさいっぱいでやっている。結果的には、ソフトバンクの事業経営に大幅に役立つと実感し始めている」と語った。
世界で急速に浸透している対話型AI「チャットGPT」にも言及し、「毎日使っていて、(GPTと)2人で『知恵の壁打ち』みたいなことをしている」と述べた。あるテーマの時は、十数回にわたりやり取りを繰り返し、最後に「実現可能な素晴らしいアイデア」と返答がきて、「GPTに勝った。非常にうれしかった」と話した。推論マシンとして生成AIが底知れない力を持っていることを実感したという。
孫氏は昨年11月のSBGの決算記者会見以降、表舞台から遠ざかっていた。6月20日に都内であったSBG傘下のソフトバンク株主総会で、株主から促される形で久々に発言した。【後藤豪】