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性的暴行を受けた女性、願う「変化」 改正刑法成立、声上げた被害者


 性暴力被害の実態に合わせて性犯罪規定を見直した改正刑法などが、16日の参院本会議で可決・成立した。強制性交等罪などを「不同意性交等罪」に改称。上司・部下といった関係性の悪用など、構成要件として被害者が「同意しない意思」を表すことが難しい事例を初めて明示した。かつて勤務先の社長から性的暴行を受けたという女性は、「私のような被害者が一人でも減る世の中になってほしい」と願う。

 宮崎市内に住む40代女性は2022年1月、パートの事務員として働いていた運送会社の社長から被害を受けた。新年会の帰りに「給与の話をする」「会社ではできない」と社長の自宅に連れて行かれ、暗い部屋の中で暴行されたという。

 その会社で働き始めたのは21年夏だった。勤めていた飲食店の経営が新型コロナウイルスの流行で打撃を受けたため、簿記などの資格が生かせる事務職への転職を考えていたところに、知人だった社長から「ちょうど採用しようと思っていた」と誘われた。希望を抱いて選んだ職場だった。

 しかし入社して間もなく、女性の胸や頰を触るなど、社長のセクハラ行為に苦しむことになる。机は同僚の目が届きにくい場所に配置されていた。「やめてください」と訴えても行為は止まらず、「彼女になれ」と命令口調で迫られることもあった。転職を考える一方で、事務の仕事を覚えたい気持ちが強く「自分が我慢すれば丸く収まる」と周囲には明かさなかった。

 給与などの待遇が入社時の約束と大きく異なることに説明を求めていた中で1月の暴行は起きた。ショックは大きかったが「誰にも相談できなかった」。生活のため勤務を続けたが約4カ月後、仕事中に来客の前で社長から下品な言葉で中傷されたのを最後に、会社に行けなくなった。

 受診した診療所でうつ病と診断された。休職中は収入もなくなった。1人暮らしだった女性は、親に事情を打ち明け、生活費を頼ったが、自責の念にさいなまれた。食事も喉を通らなくなり、入社前と比べて体重が10キロ近く落ちたという。

 改正前の刑法上で強制性交等罪が成立するには、被害者の抵抗を著しく困難にさせる「暴行・脅迫」があったかどうかが判断材料になっていた。今回の改正では「アルコールや薬物の摂取」などに加え、「経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力で受ける不利益を憂慮させること」が成立要件として盛り込まれた。女性の弁護士は「これまで罰せられる事案が取り逃されてきた中で改善の一歩」と評価し、女性のケースは「まさに経済的な上下関係の中で起きた事案にあてはまる」と指摘する。

 22年秋に会社を辞めた女性は現在、再就職が決まり新たな生活に踏み出した。しかし被害のショックから今も夜は部屋の電気を消せず、通院を続けている。休職や通院に伴う補償などを求めるため、弁護士を介して暴行について問うと、社長側からは「同意があった」との返答があったという。女性は「私の笑顔を奪い、家族もつらい目に遭わせた罪をつぐなってほしい」と刑事告訴や損害賠償請求を検討している。

 改正を巡る報道などで、被害者支援団体の存在も知り、全国に仲間がいるという心の支えができた。女性は「雇用主が社員に性暴力を振るうことを絶対に許さない社会に少しでもなってほしい。法は弱い人に寄り添うものであってほしい」。被害に遭った多くの人が声を上げ、たどり着いた法改正だからこそ、社会の変化を心から願う。【塩月由香】

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