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「国道を時速160キロ」追突事故は過失か 危険運転、求める遺族


 法定速度の3倍に迫る時速約160キロでの走行は「危険運転」に該当しないのか――。今年2月、宇都宮市の国道で大幅にスピード超過した乗用車がオートバイに追突し、乗っていた男性を死亡させる事故があった。乗用車を運転していた男性は自動車運転処罰法違反(過失運転致死)罪で起訴されたが、亡くなった男性の遺族は「過失や不注意で裁かれるのは納得できない」と、法定刑がより重い「危険運転致死罪」への訴因変更を求めオンライン署名を始めた。

 乗用車を運転していたのは足利市のアルバイト、石田颯汰被告(20)。起訴状や関係者によると、事故は2月14日午後9時35分ごろ、宇都宮市下栗町の国道新4号で起きた。石田被告が運転する乗用車が時速161~162キロで走行し、同市内に住む会社員、佐々木一匡さん(当時63歳)のバイクに追突し、佐々木さんを死亡させたとしている。法定速度は60キロだった。

「当然、適用されるだろうと」

 石田被告は当時、宇都宮市内の友人宅から友人2人と下野市の道の駅に向かっており、石田被告が乗用車、友人2人がバイクに乗っていた。石田被告は時速100キロ超で走行していたが、追い抜いていった友人2人のバイクを追いかけようと、事故の直前は161~162キロにまで加速。66~68キロで走行していた佐々木さんのバイクに追突したとされる。

 急に夫を失った悲しみの中で、妻の多恵子さん(58)は「法定速度を大幅に超えており当然、危険運転致死罪が適用されるだろう」と考えていた。だが、宇都宮地検は3月、過失運転致死罪で石田被告を起訴。危険運転致死罪に該当しない理由について、地検からは過去の判例を挙げた上で「直線道路を真っすぐ走っており、車を制御できていたため」と説明を受けたという。

 それに対し、多恵子さんは「制御できていたら事故になっていない。(「過失運転」を意味する)『うっかり』スピードを出してしまったというレベルのスピードではない」と悔しさを募らせる。

 初公判は4月にあったが、多恵子さんは5月、危険運転致死への訴因変更を宇都宮地裁に申請するよう地検に要請した。仲間と暴走した道路交通法違反(共同危険行為等の禁止)での追起訴も求めることも検討している。7月ごろには、要請の理由を詳しく説明した意見書を地検などに提出する予定で、訴因変更への協力を求めるオンライン署名も、サイト(https://www.change.org)で集めている。

 遺族側の高橋正人弁護士によると、危険運転致死傷罪は、過去の判例ではカーブや凹凸、アップダウンのある道路などでの事故に適用されることが多く、直線道路では適用されにくいという。

 ただ、訴因変更された事例もある。大分市で2021年2月、当時19歳の元少年が運転する車が法定速度の3倍超となる時速194キロで対向車と衝突し、対向車の運転手が死亡した事故では、元少年は当初、自動車運転処罰法違反(過失運転致死)罪で起訴されたものの、遺族が訴因変更を求める署名を提出後、危険運転致死への訴因変更が認められた。

 多恵子さんらは18日に宇都宮市馬場通り4のバンバ市民広場で街頭署名活動も行う予定。問い合わせは多恵子さんのメール(sasaki.kz0214@gmail.com)。【今里茉莉奈】

被害者、車の安全に関する部署に勤務

 佐々木一匡さんは栃木県芳賀町の本田技術研究所に勤めるエンジニアで、車の安全に関する部署で仕事をしていた。

 事故があった日はバレンタインデー。佐々木さんが前日にパンを買ってきており、多恵子さんはパンに合う料理を作って待っていたが、帰らぬ人になってしまった。多恵子さんは今も現実を受けとめられず「あの事故から時が止まっている」と話す。

 佐々木さんは子どものころから車が好きで、多恵子さんによると、常に車の安全について考えていたという。「そんな人の命が悪質な暴走車によって奪われたことがどれほど残酷か。適切な法令を運用し、加害者を正しく裁いてほしい。そうでないと主人の無念を晴らせない」と訴える。

危険運転致死傷罪

 東名高速で飲酒運転の大型トラックが乗用車に追突し女児2人が死亡した事故をきっかけに2001年に新設された。過失運転致死傷罪は懲役7年、危険運転致死傷罪は20年と法定刑の上限が大きく異なる。アルコールか薬物の影響で正常な運転ができなかった▽車の進行を制御できないほどの高速度だったか、制御する技能がなかった▽危険な速度で赤信号を意図的に無視した――などの要件を満たす場合、危険運転致死傷罪が適用される。

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