昨夏、帰宅する観客が殺到し、JR亀岡駅(京都府亀岡市)周辺で混乱が起きた「保津川市民花火大会」を巡り、亀岡市などで作る実行委員会は、今夏の大会は会場内の無料エリアをなくして「完全有料化」する方針を決めた。有料席だけにして来客数を減らし、終了後にドローンショーを実施するなどして人の流れを分散する。一方、料金収入を基に花火の規模は拡大し、大会充実と安全対策との両立を目指す。
観覧客減らし安全確保、収入基に規模拡大
大会は今年で72回目を迎える恒例行事。近年は毎年8月11日夜、亀岡駅北側の保津川河川敷から打ち上げられている。昨夏は新型コロナウイルスの影響に伴う休止期間を経て3年ぶりに実施されたが、終了後に帰宅しようとした観客らで駅周辺が大混雑した。
駅には一時約2万人が殺到し、怒号や悲鳴が上がったほか、熱中症で体調を崩す人も出たという。その様子はSNS(ネット交流サービス)でも拡散され、群衆事故の危険があると批判が集まった。
実行委が当時の状況を検証した結果によると、観客の帰宅時間と重なる午後8時ごろ、亀岡―並河駅間の線路に人が立ち入り、列車に最大40分の遅れが発生。人が流れなくなった上、観客への情報伝達も不十分だった。また、コロナ禍で同時期に開催される近隣の花火大会が相次いで中止され、想定の10万人を上回る11万人超が来場したことも、混乱の一因となった。
こうした反省を踏まえ、従来は河川敷や駅周辺に設けていた無料エリアを廃止し、今年は有料の観覧席のみとする。昨年の有料席利用者は約1万人だったが、リクライニングシート付き(1万5000円)から立ち見(2000円)まで10種類、計約2万席を用意。有料席を買わない人も含め、来場者は8万人と見込む。警備を強化し、会場の情報伝達に使う音響設備も設置する。
一方、打ち上げる花火は昨年の8000発から1万発に増やし、受賞歴豊富な花火師が担当。音響設備を活用して音楽とも連動させる。総事業費は昨年の3倍となる1億2300万円。うち8700万円を有料席の収入で賄う想定で、市の補助金は昨年の1200万円から今年は2000万円に増額する。
桂川孝裕市長は「混乱が二度と起きないよう安全管理を徹底する。お金を払ってでも見たい人にアピールしたい」と話している。
市民優先席の先行販売は6月11日~7月20日、亀岡駅構内で。一般6000円を3000円に割り引く。一般向けの販売は決定次第、大会のウェブサイトで発表する。問い合わせは実行委事務局(0771・25・5033)。【千葉紀和】