ウクライナ南部ヘルソン州にあるカホフカ水力発電所のダム決壊で、大規模な洪水に襲われた同州オレシキー。「6日のダム決壊以降、残してきた親族や知人と連絡が取れない。安否も確認できない」――。オレシキー出身で、現在はポーランドに避難しているウクライナ人男性がSNS(ネット交流サービス)で日本にいる記者(宮川)に伝えてきた。「記事を出して、故郷の人たちを助けてほしい」と、悲痛な思いを訴えた。
男性はポーランド北東部ビャウィストクに住むアレクセイ・アロヒンさん(37)。元々、ドニエプル川東岸のオレシキー中心部に住んでいたが、2022年6月に妻と3人の子どもたちと一緒にモルドバ経由でポーランドに避難した。モルドバの避難者支援施設で記者(宮川)と知り合った。
その後もいとこや近所の住民と定期的にやりとりを重ね無事を確認していたが6日以降、連絡が途絶えたという。
ウクライナメディアはダム決壊に伴う洪水により、オレシキーで3人が亡くなり、町の9割が浸水したと伝えている。
SNS上には、町中が水につかり、沈んだ家屋の屋根の上で助けを求める住民らの動画や写真が投稿されている。アロヒンさんは変わり果てた故郷の姿にがくぜんとした。住民の安否に関する投稿もあり、アロヒンさんはその中から親族や知人につながる情報を探している。「ロシア軍は住民を避難させようとしない。高齢者や障害者ら自力で逃げるのが難しい人は水や食料もない」
アロヒンさんは元々警備の仕事をしていたが、22年2月のロシアの侵攻開始後、休職を余儀なくされた。ヘルソン州は度々ミサイル攻撃を受け、一家は自宅の地下室で過ごした。ロシア軍が支配下に置いてからは、親族宅にロシア兵が立ち入りロシア側に協力するよう脅迫した。それを機に国外避難を決意し、検問をかいくぐって車で同州を脱出した。
現在はポーランドの借家に住み、民間企業の調理場で働く。子どもはオンラインでウクライナの学校の授業を受けている。「占領下のオレシキーでは子どもたちは外出できず攻撃におびえる生活だった。少しずつ立ち直ってきたところだったのに」と嘆く。「このままではウクライナが破壊されてしまう。ロシアの理不尽さを知ってほしい」と怒りをあらわにした。【宮川佐知子】