第81期名人戦七番勝負(毎日新聞社、朝日新聞社主催)の第5局は1日、長野県高山村の山田温泉「藤井荘」で指され、藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋王、棋聖=が渡辺明名人(39)を破り、対戦成績4勝1敗で名人位を奪取した。熱戦の末に敗れ、2004年に竜王を初獲得して以来、19年ぶりに無冠となった渡辺名人は対局後のインタビューで、「4局目、5局目と敗れた将棋の内容が悪く、(失冠という)結果は仕方ない」と振り返った。一問一答は次の通り。【丸山進、最上聡】
手の広いところで誤る
――序盤の構想は。
◆渡辺名人 前例もある形なので、一応予定でした。
――6五歩で駒がぶつかったあたりの手応えは。
◆そこの交換になるパターンはいろいろある。その後の微妙な玉の位置とか角の位置でいろいろ違ってくるので、進んでみてという感じで思っていました。
――封じ手の時刻が迫る中で3七桂。そのあたりの手応えは。
◆(封じ手は)9五歩かなと思っていたので、その後の攻め合いがどうかなと、昨晩考えていた感じですかね。
――4七銀と打たれ、角を切って攻めていった場面の手応えは。
◆成否は分からなかったですが、先手がいけるとしたらそういう手順かなと思っていたんですけど。
――4六角から6六角が(藤井王将の)勝負手。対応は悩ましかったか。
◆手が広かったところで、結果的にはそこ(6六角に対して長考して指した2三桂)で間違えてしまったので、どうやればよかったかなという感じですかね。
――その後、こうやっておけばというところは。
♦6六角のとき、違う手を指さないといけなかったですね。
――一局を振り返って。
◆6六角のところは局面としても一番複雑だったと思うので、候補手も広かった。そこで長考した結果、間違えてしまったのが残念な一局でしたね。
ここ数年の戦いぶりでは……
――シリーズを振り返って。どんなシリーズだったか。
◆4局目、5局目と負けた将棋の内容は特に悪かったので、そこはちょっと残念な将棋だったですね。
――作戦的には(後手の)雁木(がんぎ)や雁木模様が多かった。手応え、感想を。
◆息が長い将棋になることが多かったんですけど、局面が難しくなってきた時に、そこの(藤井王将との)差が出てしまったかなと思います。
――名人を失冠したことについて。
◆負けた将棋が特にチャンスも少なかったので、こういう結果になるのは仕方がないかなと思います。
――04年以来ずっとタイトルを保持してきた。タイトル失冠について。
◆この3年くらいのタイトル戦の戦いぶりからすると、こういう結果になるのも当然というか、そこは力が足りなかったとは思いますね。
――39歳という年齢的なものに感じることはあるか。これから自分の将棋をどう鍛え直すか。
◆年齢のことについては具体的にいつまで、という目標があったわけではないですが。それは年々厳しくなる中で、1年でも長くという思いはありましたけれど。30代とか40代ということについては、特に何も思っていないです。