「今この会場に女性の方がいたら、手を挙げてもらえますか」――。東京電力福島第1原発事故からの復興に向けて福島県大熊町で10日に開かれた会議で、出席者が男性ばかりの光景を見た同県の内堀雅雄知事が皮肉交じりに苦言を呈する一幕があった。
内堀知事が発言したのは、国が同県浪江町で整備を進める「福島国際研究教育機構」(通称エフレイ)の事業に関する国や地元自治体の協議会の初会合。復興庁や被災15市町村など35団体で構成され、市町村長や関係省庁の職員ら109人が出席した。担当者は「出席者の性別は把握していない」としたが、記者が見た限り、女性とみられる出席者は5人に満たなかった。
内堀知事はあいさつの中で、大切にすべき三つの視点の一つ目として「女性の視点」を挙げ、「今この会場に女性はおられますか。実は非常に少ない。エフレイの活動や新産業創出には女性の視点を50%以上入れないとバランスが取れない」と強調。エフレイは6月以降、各市町村で住民や地元企業との座談会を計画しており、「各市町村に足を運ぶ際に女性を積極的に参加させていただきたい」と訴えた。
同県は2011年の東日本大震災前から女性の人口流出が多く、22年は県外へ転出する人が転入者を上回る「転出超過(社会減)」が3910人で、47都道府県のうち2番目に高かった。また、原発事故に伴う避難指示が解除された町は単身男性が多い傾向にあり、20年の国勢調査でも人口の女性割合が浪江町で30%、富岡町で28%など極端に低かった。内堀知事の発言はこうした状況を念頭に置いていたとみられる。【尾崎修二】