米ニューヨーク州は、新築の住宅・ビルの暖房や料理用コンロなどで、ガスを含む化石燃料の使用を禁止する。家庭や企業の温室効果ガス排出量を減らす取り組みの一環で、州レベルでの規制は米国で初めて。化石燃料業界などからの反発が予想される。
州議会が2日夜、州内の新築の建物でガスの使用などを禁じる内容を盛り込んだ予算案を可決した。7階より低い新築の建物では2026年まで、それ以上の高さの新築の建物では29年までに、暖房やキッチンをオール電化とすることを事実上義務づけた。大規模な製造施設や病院、飲食店、コインランドリーなど一部の例外は認められている。既存の建物には影響は及ばないという。ニューヨーク州では、住宅・建築物からの温室効果ガスの排出量が全体の3割を占めている。ニューヨーク市は州に先駆けて類似の規制を導入済みで、一部で今年12月から適用される。
ヒースティ州下院議長は声明で、「化石燃料への依存度を下げることは、我々と子供たちにとってより健康的な環境を確保することにつながる」と述べた。同州議会は民主党が多数を占める。
米国の自治体レベルでは、西部カリフォルニア州バークリー市が19年に全米で初めて地球温暖化対策として新築建物でのガス使用禁止を決めた。しかし、規制に反対するレストラン業界などが起こした訴訟で連邦高裁は今年4月、同市でのガス禁止は強制できないとの判断を示した。電力価格が高騰する中で禁止への反対も根強い。米メディアは、ニューヨーク州も法廷闘争に直面する可能性が高いと報じている。
米国でガスコンロの禁止と電化の政策は党派対立の象徴の一つに浮上している。気候変動対策として推進する民主党に対し、エネルギー産業に近い共和党が反発する構図だ。今年初めに米消費者製品安全委員会の高官が小児ぜん息のリスクへの対応としてガスコンロ規制の可能性を示唆したところ、反対派から大きな反発を招き、釈明に追われた。【ニューヨーク八田浩輔】