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教員による“指導死”なぜ繰り返される 「現場から離す仕組みを」


 教師による行き過ぎた指導で児童・生徒が自殺に追い込まれる「指導死」が後を絶たない。我が子を亡くした遺族らでつくる「指導死 親の会」は2008年の結成以降、シンポジウムの開催や文部科学省への申し入れなどで、再発防止に向けた取り組みを求めてきた。共同代表の大貫隆志さん(66)=東京都=は19年4月に熊本市で起きた中学1年の男子生徒(当時13歳)の自殺を巡り、市の第三者委員会の委員として原因などを調査した。自身も中学2年の次男を長時間の生活指導がきっかけで亡くした大貫さんは「不適切な指導をする教員を子供がいる現場から引き離す仕組みが必要だ」と指摘する。【聞き手・栗栖由喜】

 ――「指導死」とは?

 ◆何らかの生徒指導があり、そのことを直接の原因あるいは背景要因として子供が命を絶ってしまうことを「指導死」と呼んでいます。19年の熊本市での事案も、担任の不適切な指導を原因に生徒が重度の抑うつ状態となり、結果として命を絶っていることから指導死の定義に当てはまると思います。

 ――熊本市での事案で、生徒が自死に至ってしまった要因は何だと考えられますか。

 ◆三つの出来事が複層的に重なったことが特徴でした。一つは、不適切な指導を常習的に行う教員がいたこと。二つ目は、管理職がその教員の言動を適切な方向に導くことができなかったこと。三つ目は、教育委員会が教員の言動に問題があることを知りながら具体的な対応を取らなかったことです。

 ――学校の中で起きている出来事は保護者など外部からは見えづらい。そうした中で、どのように子供の命を守るかが課題となっています。

 ◆少なくとも熊本市の事案の場合は、保護者が教育長に嘆願書を出したり、同僚教員が市教委に直接相談したりと、たくさんのサインが出されていました。問題は確実に見えていて、学校も教育委員会も危険性は認識できていたはずですが、「まさか死ぬことはないだろう」と思っていたのでしょう。子供がいかに簡単に命を落としてしまうかということに対する認識が極めて甘かったと言えると思います。

 ――管理職が注意した後も、不適切な指導が繰り返されていました。

 ◆不適切な指導をする教員を学校現場から引き離す仕組みがなかったことは大きな問題です。不適切な指導をしている疑いが生じた時点で、緊急措置として教員を子供がいる学校現場から引き離す仕組みをつくることは絶対に必要な制度です。

 ――指導死は全国で起きています。なぜ繰り返されてしまうのですか。

 ◆二つ要因があります。一つは、乱暴だったり、子供に圧力をかける指導をしたりする教員がいること。もう一つは、そのような教員の行為を学校管理職や教育委員会が適切に管理・監督できないことです。また、部活動で優秀な成績を収めている教員の体罰や暴言が見過ごされてしまうことも多いです。でも、どんなに素晴らしい指導力があったとしても、子供を命の危険にさらしたり、精神的に過剰に追い込んだりする行為が許されることがあってはいけません。

 ――文部科学省は22年度から初めて「指導死」の実態調査に乗り出しました。

 ◆指導死に関する公的な統計はありませんが、教育評論家の武田さち子さんの調べによると、平成以降で少なくとも108件(自殺未遂15件を含む)起きています。文科省が調査を始めたことは一歩前進だと思います。一方で、どのくらい現状を反映した数字が上がってくるのか疑問もあります。そもそも児童・生徒の自殺の発生件数は、学校から文科省に上がってくる数字と警察が発表する数字の間には大きな開きがあり、文科省の全国調査も児童・生徒や保護者ではなく学校側の認識を問うものだからです。まずは不適切な指導が行われないよう努力することが重要ですが、今回の調査が実態をより正確に反映した統計づくりのきっかけになってほしいです。

 ――学校現場や教育委員会には何を求めますか。

 ◆先生の一言というのは、子供にとってものすごく重たいものです。何気ないたった一言が子供をとても強く勇気づけたり傷つけたりするのです。その影響力の大きさをよく自覚して子供と接してほしいと思います。また、再発防止策は遺族らの立ち直りを支援できるようなものでなければ意味がありません。実効性のある再発防止策ができて初めて、被害を受けた児童・生徒や遺族の立ち直りがスタートできる。そうした意識を持って取り組んでほしいと思います。

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