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「ルフィ」特殊詐欺G 摘発後も日本に「かけ子」拠点作り継続か


 全国で相次ぐ広域強盗事件で指示役だった「ルフィ」と名乗る人物の可能性がある渡辺優樹容疑者(38)=窃盗容疑で逮捕=がトップでフィリピンを拠点とする特殊詐欺グループが、2019年に現地当局に摘発された後も、新たに日本に複数の拠点を作って特殊詐欺を継続していたことが17日、グループのメンバーの公判で明らかになった。

 窃盗と詐欺罪に問われた無職、阿部隆行被告(40)が17日、東京地裁(賀島敦裁判官)で行われた論告求刑公判で証言した。

 阿部被告は18年8月に渡比し、特殊詐欺の「かけ子」として活動。19年11月にフィリピン当局に現地の拠点が摘発され、日本人36人が拘束されたが、阿部被告は拘束を免れたという。「(36人と)同じくらいのメンバーが現地にまだ残っていた」と阿部被告は被告人質問で明かした。

 残ったメンバーで特殊詐欺を続けていたところ、新型コロナウイルスの影響で渡航が制限され、新たなかけ子を日本から調達できなくなった。そのため、20年3月から日本国内にかけ子の拠点を作って詐欺を継続したという。

 阿部被告はグループ幹部の指示で、日本拠点の管理役となり、フィリピンから日本のかけ子に指示を出していた。22年6月に帰国した際、警視庁に窃盗容疑で逮捕された。

 渡辺容疑者のグループによる被害は、18年11月~20年6月ごろで60億円以上に上るとされ、約70人が検挙されている。

   ◇    ◇   

 この日の公判では、阿部被告が特殊詐欺に手を染めていった経緯も明らかになった。

 被告人質問などによると、阿部被告は18年夏ごろ、ツイッターで見つけた「外国でのリゾートバイト。1月に100万円稼ぐことも可能」とうたう闇バイトに応募。秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」でリクルーターと連絡を取り合い、住民票や実家の住所、運転免許証などを提出した後に「採用」された。

 18年8月に単身でフィリピンに渡航。空港ではグループのメンバーが出迎え、その日のうちに「箱」と呼ばれる部屋に連れて行かれた。そこで初めて「日本に詐欺の電話をしてもらう」伝えられたという。

 高齢者をだますことに申し訳ない気持ちを抱き、上役に何度も「やめたい」と伝えたが、「情報は全部持っている。どこまでも追うことができる」と脅された。阿部被告は公判で、詐欺に加担し続けた理由について「家族に何かあったら嫌だった」と説明した。

 阿部被告はその後、かけ子などのリクルーターとなった。月給は20万~50万円。それとは別に滞在費や食費として月7万円の固定費をもらっていた。22年3月までの約3年半で1000万~2000万円の収入があったとみられる。

 実家が転居するのをきっかけに帰国を決意。22年6月に帰国したところを警視庁に逮捕された。逮捕されたことについて、阿部被告は「組織から守ってもらえる。助かったと思った」と語った。

 検察側は「ここまで大規模かつ高度に組織化された犯行グループによる犯行はまれで、特に悪質」と指摘。阿部被告について「一時帰国するなどある程度自由な立場にあったにもかかわらず、報酬目的で犯行に関与しており、利欲的で身勝手」として懲役7年を求刑した。判決は3月9日。【遠藤龍】

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