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人の温かみは廃れず 宗谷本線殺人事件の舞台、音威子府駅を訪ねる


 初めて訪れた1986年3月に比べ、JR宗谷線音威子府(おといねっぷ)駅は寂れていた。分割民営化(87年4月)前の国鉄時代は北海道北部の主要駅で200人以上の職員がいたという。だが、過疎が進む音威子府村の人口は当時の3分の1の約670人に減った。駅前の食堂で、村在住だった現代彫刻家の砂澤ビッキに名物のそばをごちそうしてもらったが、今の駅前は商店もなければ人通りもほとんどない。

 西村京太郎の「宗谷本線殺人事件」は国鉄時代末期のそんな駅で起きた。ちょうど私が訪ねた時期である。愛情と金銭のもつれから、ホームで恋人を刺殺したとして男が服役。真相に迫ろうとした男の恩師も消され、ご存じ十津川警部が捜査に乗り出す。

 西村はトラベルミステリーの大家だけに、作中の駅の描写が微細で見取り図まで付いている(講談社文庫版)。昔は待合室で謎解きの鍵でもあるストーブが燃えていたが、椅子などとともに取り払われ、構内は殺風景だ。ただ、ここで分岐していた天北線(89年5月廃止)の資料室ができており、展示の「お宝」に鉄道ファンが喜ぶこと必至。畳敷きの休憩スペースが残っているのもうれしい。

 物語は金に目のくらんだ駅員が真犯人の依頼でうその目撃証言をするのがポイントの一つ。しかし、実際の駅員さんはとても親切で、全国的に有名だった「駅そば」の店「常盤軒」(2年前に閉店)があった位置などを丁寧に教えてくれた。他の村人とも話し、温かみは廃れていないと感じた。【山本直、写真も】

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