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仏で安楽死容認に危機感=医師ら「使命ではない」と反対―多数派世論は合法化支持


 【パリ時事】フランスで、終末医療を巡る議論が活発化している。医師の薬物投与による「積極的安楽死」や自殺ほう助は現在禁止されているが、世論調査では約8割が合法化に賛成し、仏尊厳死協会も法整備を訴える。一方、医師らは「患者に死を与えるのが医師の使命ではない」と反対し、安楽死容認の風潮に危機感を強めている。  ◇「死ぬ権利」国外で  フランスでは2016年に成立した法律により、回復の見込みがなく深刻な苦痛を抱える末期患者本人が望んだ場合、延命措置を停止し死に至るまでの苦痛を緩和する「消極的安楽死」が認められている。一方、医師が致死薬を投与する積極的安楽死や、医師が用意した致死薬を患者が自身に投与する自殺ほう助は法律で禁じられている。  ただ、仏映画界の巨匠ジャンリュック・ゴダール監督が昨年9月、スイスで自殺ほう助を受け91歳で死去するなど、近年「死ぬ権利」を国外に求めるケースが続出。調査会社IFOPが昨年10月に公表した世論調査結果では、78%が安楽死や自殺ほう助の合法化に賛成すると回答した。  仏尊厳死協会のロメロミシェル名誉会長は仏メディアに対し、現行法は不十分だと指摘。「自らの最期を皆が自分で選べるようになるべきだ。尊厳を持って死ぬことも重要だ」と強調した。  ◇緩和ケアの体制整備訴え  一方、仏緩和ケア・みとり協会のクレール・フルカド会長は、時事通信の取材に「安楽死は患者の苦痛を和らげる解決策ではない」と断言した。フルカド氏によれば、専門医や施設の不足により、緩和ケアを受けられる患者は希望者全体の3分の1程度。「全ての患者が緩和ケアを受けられる体制の整備が急務だ」と訴える。  緩和ケア専門医のフルカド氏は「過去約20年間で、安楽死を強く求めてきた患者は3人だけだった」と振り返る。「『死にたい』という要望は珍しくないが、同時に『生きたい』と思うのが人間だ」と主張。「患者が本当に求めているのは、できるだけ長く元気に過ごすこと。医師の使命は苦痛を和らげ、最後まで寄り添うことであって、死を与えることではない」と力を込めた。  ◇「弱者切り捨てぬ社会を」  南西部トゥールーズの病院で緩和ケアを専門とするジャン・フォンタン医師は、安楽死の合法化を巡る世論調査結果に懐疑的だ。「安楽死に関する報道は非常に多いが、緩和ケアが取り上げられることは少ない。苦痛を和らげることができると知れば、世論は変わるだろう」と指摘。「命の最後に向き合う時、安楽死を求める患者は本当に少ない。78%という数字には程遠い」と述べる。  フォンタン氏は「安楽死を認めるのは、衰弱し他者に依存する人に対し、自分の命にもう価値がなく、生きているのが申し訳ないと思わせるのに等しい」と憤る。「弱者を切り捨てず、連帯して面倒を見るのが美しい社会だ」。 【時事通信社】 〔写真説明〕フランス緩和ケア・みとり協会会長のクレール・フルカド医師=2021年1月、仏モンペリエ(本人提供・時事) 〔写真説明〕フランスで緩和ケアを専門とするフォンタン医師=2021年1月、仏南西部トゥールーズ(本人提供)
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