５００年伝わる「甘い塩」が危機＝気候変動に後継者不足―タイ

　タイ南部パッタニー県特産の塩「スイートソルト（甘い塩）」が気候変動の影響や後継者不足で存続の危機に直面している。塩田は最盛期の２５０分の１に縮小。地元は生き残りをかけて加工品の開発に着手し、５００年の伝統を後世に残そうと取り組んでいる。 　スイートソルトは一般的な塩に比べ、塩辛さが抑えられているのが特徴で、うま味も楽しめる。地元のアムナット村長は「一度試した人は、うま味調味料に代えて使っている」と胸を張る。タイ湾から採取した海水に川の水を混ぜ、独特の風味を出している。 　マレーシアやシンガポールでも人気を集めるが、近年は乾期でも雨が続き、生産が不安定になった。また、収入が労力に見合わず、多くの塩田農園が手間のかからないエビの養殖に転じた。４０００万平方メートル以上に及んでいた塩田は、現在は１６万平方メートル。製塩業者はわずか１００人ほどとなっている。 　危機感を覚えた地元自治体は協同組合を設立し、価格の安定化に乗り出した。また、ステーキ用の塩こしょう、マッサージ用の塩などの付加価値商品を開発。肥料用として売り出した塩は除虫効果があるほか、ヤシの木に使えばココナツ水が甘くなると評判だ。 　製塩業のゴロハニさん（４７）は「伝統を守りたい。作業は大変だが、塩を心から愛する人たちに継いでもらいたい」と話している。　【時事通信社】 〔写真説明〕スイートソルトの塩田＝１７日、タイ南部パッタニー県 〔写真説明〕タイ南部パッタニー県で、スイートソルトの製塩作業を行うゴロハニさん＝１７日