吉野神宮、重文に＝「水煙」など国宝追加も―文化審議会

　文化審議会（佐藤信会長）は２０日、後醍醐天皇を祭った奈良県吉野町の吉野神宮や、大分県中津市にある石造アーチ橋の耶馬渓橋など建造物８件を重要文化財に新たに指定するよう末松信介文部科学相に答申した。 　また、既に国宝に指定済みの薬師寺東塔（奈良市）や唐招提寺金堂（同）の修理の際に取り外され、再利用できなかった塔最上部を飾る「水煙（すいえん）」などの部材について、「建物と一体となって価値をなす重要なもの」として国宝への追加指定を要請。重文の不動寺本堂（大津市）の厨子などの追加も求めた。近く答申通り告示され、重文の建造物は２５４８件（うち国宝２２９件）となる。　 　吉野神宮は、吉野山北部に朝廷を構えた後醍醐天皇を祭る神社として明治中期に創建。本殿に向かって地面を高め、神聖さが増すよう整備された境内や、細部の意匠に近代的な創意が認められることなどが評価された。 　耶馬渓橋は、国の名勝に指定されている耶馬渓の観光開発で１９２３（大正１２）年に建設された。８連のアーチを有し、国内に現存する最長（約１１６メートル）の石造アーチ橋という。 　◇指定答申された国宝・重文 文化審議会の答申は次の通り。 【国宝（追加）】 　薬師寺東塔（奈良市）の部材▽唐招提寺（同）の金堂や講堂などの部材 【重要文化財（新規）】 　中谷家住宅（石川県能登町）▽洲さき（岐阜県高山市）▽清水灯台（静岡市）▽小栗家住宅（愛知県半田市）▽菅島灯台（三重県鳥羽市）▽十二社神社本殿（奈良県大和高田市）▽吉野神宮（同県吉野町）▽耶馬渓橋（大分県中津市） 【重要文化財（追加）】 　旧千葉家住宅（岩手県遠野市）の宅地内の便所▽幡頭神社（愛知県西尾市）の境内社熊野社本殿と境内社神明社本殿▽不動寺本堂（大津市）の厨子など（了） 【時事通信社】 〔写真説明〕新たに重要文化財に指定される奈良県吉野町の吉野神宮（吉野神宮提供） 〔写真説明〕新たに重要文化財に指定される大分県中津市にある石造アーチ橋の耶馬渓橋（文化庁提供） 〔写真説明〕国宝に追加指定される薬師寺東塔の最上部に飾られていた水煙（奈良県提供）