夫婦殺人放火、１９歳を起訴＝「特定少年」氏名初公表―甲府地検

　甲府市で昨年１０月、夫婦が殺害され自宅が放火された事件で、甲府地検は８日、家裁から検察官送致（逆送）された無職遠藤裕喜容疑者（１９）＝同市＝を、殺人と現住建造物等放火などの罪で起訴した。地検は、事件を起こした１８、１９歳を「特定少年」と位置付け実名報道を可能とした改正少年法に基づき、容疑者の氏名などを公表した。１日の同法施行後、特定少年の氏名公表は初めて。 　実名を公表した理由について、岡本貴幸次席検事は「改正少年法の趣旨などを踏まえた。重大事案で地域社会に与える影響も深刻であることから、諸般の事情を考慮し公表した」と説明した。同容疑者は今後、２０歳以上と同様に裁判員裁判で審理される。 　起訴状によると、遠藤容疑者は昨年１０月１２日午前３時３０～５５分ごろ、甲府市蓬沢の民家に侵入し、住人の会社員井上盛司さん＝当時（５５）＝と妻章恵さん＝同（５０）＝を刺殺。夫婦の次女も襲撃し、室内に放火して全焼させたとされる。 　今月４日の少年審判で甲府家裁は、高校の後輩だった夫婦の長女への逆恨みから家族全員の殺害を企てたと認定。「計画的で、態様も残虐。内省が深まっているとは到底言えない」と指摘し、刑事処分が相当として逆送を決定した。 　事件では、言い争う声を聞いて１階に下りようとした次女が、同容疑者と鉢合わせとなり襲われた。次女と長女が２階ベランダから逃げた直後に室内から出火し、焼け跡から夫婦の遺体が見つかった。同容疑者は山梨県内の駐在所に出頭した。 　地検は同容疑者を鑑定留置して事件当時の精神状態を調べ、刑事責任能力があったと判断して３月に家裁送致していた。 　◇おことわり 　事件を起こした少年について、これまで匿名で報じてきましたが、改正少年法で１８、１９歳の「特定少年」は実名報道が可能となりました。今回は、地検が少年の氏名を公表したことに加え、事件の重大性や社会的影響を踏まえ、実名で報道します。（了）【時事通信社】