テロ活動にほぼ影響なし＝ＩＳ指導者死亡でも勢力拡大―米専門家

　【ワシントン時事】過激派組織「イスラム国」（ＩＳ）最高指導者のバグダディ容疑者に続き、後を継いだアブイブラヒム・ハシミ容疑者も米軍の急襲作戦で死亡した。ただ、ＩＳのテロ活動に対する大きな影響はほぼないと厳しい見方が大勢を占める。むしろ、ＩＳはアフリカなどで勢力を拡大しつつあると米専門家は警戒を強めている。 　非営利団体「対過激思想プロジェクト」などによると、ハシミ容疑者はサダム・フセイン政権下のイラク陸軍に入隊。同政権崩壊後、国際テロ組織アルカイダに加わった。 　一時は米軍に身柄を拘束されたが、釈放後の２０１４年にバグダディ容疑者に忠誠を誓った。ＩＳのナンバー２として、クルド系少数派ヤジディ教徒の大量虐殺などを主導。バグダディ容疑者が１９年に米軍の作戦で追い詰められ死亡すると、最高指導者に就任した。 　ＩＳはその前後からアフリカ・サハラ砂漠のサヘル地域で勢力を拡大。コンゴ（旧ザイール）やモザンビークでも新たなＩＳ系組織が立ち上がった。 　米シンクタンク民主主義防衛財団のビル・ロッジオ上級研究員は「イスラム過激派の指導者には常に殺害される危険が付きまとっており、ハシミ容疑者は新たな指導者に取って代わられるだけだ」と指摘。「（同容疑者死亡は）米国にとって戦術的な成功で、ＩＳにとっても不都合なことだが、ＩＳの指揮系統は分散されており、世界的なテロ活動が大幅に低下するわけではない」と説明した。　【時事通信社】 〔写真説明〕過激派組織「イスラム国」（ＩＳ）の最高指導者だったバグダディ容疑者＝２０１４年７月、イラク北部モスル（ＡＦＰ時事） 〔写真説明〕過激派組織「イスラム国」（ＩＳ）の最高指導者アブイブラヒム・ハシミ容疑者（米国務省が２０２０年７月公開）（ＡＦＰ時事）