植物の管理において「剪定(せんてい)」は、とても重要な作業の1つです。剪定を行うことで、植物の見栄えを良くするだけでなく、生長の流れを促進させ、より健康的な株に育てることができます。
ただし、間違った剪定方法を行なってしまうと樹形が暴れ出したり、管理のしにくい株に仕上がったりすることも。また剪定時期が適していないと、枝葉が枯れて見た目が悪くなってしまうこともあります。しっかりと植物の剪定方法を知って取り組むことが大切です。
この記事では、植物の剪定方法について紹介します。
植物の剪定の目的とは
「大きくなり過ぎたから植物を剪定する」だけでなく、それ以外にも目的がいくつかあります。目的をしっかりと把握した上で定期的に剪定をしましょう。
樹形を整える
植物の茎や枝をそのまま放置していると四方八方に伸びることもあり、インテリアとしての見た目が悪くなることもあります。 大きくなり過ぎると管理がしにくくなったり、圧迫感を感じたりして障害物に感じる ことも。
植物にとって適切な時期に剪定を行うことで、スタイリッシュな樹形になり、シルエットの美しい姿に見えます。枝葉が横に伸びて部屋のスペースを取られ過ぎているときにも剪定します。
生長の流れをコントロール
剪定を定期的に行うことで、植物の生長の流れをコントロールでき、新しい芽を出して、花・実の付きを良くすることができます。
基本的にシダ類を除いたほとんどの植物は、「頂芽優勢」といわれる生長の流れのメカニズムをもち、地面から吸い上げた養分を中心の幹のてっぺん(頂芽)に流します。そのため、幹の横から芽が出にくく、一本で真っ直ぐと伸びやすいです。
幹・枝・茎を適切な箇所で剪定することで、吸い上げた養分の流れ方が切り替わり、「枝分かれ」をして生長します。樹形が変わるだけでなく、新しい芽が出るので花・実の付きがより多くなります。
落葉・病気の予防
植物の株の内側が混み合っていると、日当たりと風通しが悪くなるため葉が落ちたり、病気の被害にあったりすることもあります。
そもそも株の内側に光や風が通らないと熱や湿気が溜まりやすいため、気温と湿度が高くなり、菌やウイルスが繁殖しやすくなります。植物の切り口から感染して病気を引き起こす場合も。また、光がないことで光合成がうまくできないため、葉を落とすようになります。
病気にかかるとほかの植物にも感染することもあるので、二次災害とならないように定期的に剪定しましょう。
植物の剪定時期
植物と一言でいっても、現代の植物はさまざまで種類がたくさんあります。どの植物も剪定時期が決まっているので、各植物の生長に合わせて適期を選びましょう。 落葉樹は葉が落ちた11月下旬〜3月上旬の休眠期に、常緑樹は葉が入れ替わる前の3〜4月か葉が生えそろった6〜7月、または生長の流れが穏やかになる10〜11月に剪定 します。
基本的に常緑性の植物は、熱帯・砂漠地帯に自生するものが多いので、暖かい時期の6〜7月に行うのが良いです。
ただし、気温が35℃を超えるような真夏に剪定してしまうと、切り口から水分が多く出てしまい、枝葉が枯れることもあります。
基本的な剪定の種類を覚えておこう!
植物の剪定は、基本的な切り方を知っていれば、株に大きなストレスを与えることも少なくなり、良好に生長もしてくれます。
切り詰め剪定
「切り詰め剪定」は、樹形をコンパクトに仕立てながら、新しい枝葉を出す役割があります。長く伸びた古い一本の枝を、節目・枝分かれ箇所で切り詰め剪定をして、新しい元気な枝葉をたくさん出せます。
透かし剪定
不要な枝を根元・付け根から切り落とす「透かし剪定」。別名「間引き剪定」ともいい、枝数を少なくして、樹形・樹高を低く保ち、病害虫の予防として行います。
切り戻し剪定
「切り戻し剪定」は、細い枝を残すように幹から伸びる太い幹を切って樹形を整えます。自然の中に生えるようなやわらかい樹形になり、株も小さくできます。
植物の剪定方法
難しそうと思われがちな植物の剪定。ステップを踏んで行えば、失敗することもあまりありません。
また、切った枝葉を使って挿し木をするのもおすすめですよ。
理想の高さ・幅のラインと樹形を決める
どんな植物にも当てはまりますが、まずは 植物全体を遠くから見て、樹高や幅をチェックすることが大切 です。そのときに理想とする高さ・幅のラインと樹形を決めることがポイント!
どこまで高さ・幅を抑えるのか、部屋の空間に圧迫感を感じないか、さらに樹形が美しく見えるかなど確認してみると良いです。
決めたラインに合わせて剪定する
仕上がりのラインが決められたら、その高さ・幅にあわせて枝葉を切ります。木の幹や枝が葉の隙間から少し見えるくらいまで数を減らしましょう。
ただし、節と節の間など、中途半端に枝を切ってしまうと枝が枯れたり、新しい枝葉が暴れるようでたりして、管理しにくい格好悪い姿になる場合もあります。そのため、どこで切るかしっかりと確認してから剪定してくださいね!
不要な枝・枯れ枝を近くで剪定する
平行に同じ方向へ伸びる枝葉や、枝と枝が十字に交差したり絡まって伸びる枝、さらに地面に向かって伸びる枝などは、樹形を乱し健康的な生長の阻害となるので、付け根から全て置き落としましょう。
不要な枝を切るときは、枯れ枝も一緒に切ります。
枝の数を間引くように剪定する
不要な枝や枯れ枝を間引いても、株の内側に陰ができていたり密集していたりする場合は、枝の数をさらに間引きます。
不格好な樹形にならないように、下向きに伸びる枝葉を切り落とし、上に向かって伸びる枝を残して剪定します。そうすると樹形が整い、切った箇所が隠れ、よりナチュラルな仕上がりになりやすいです。
輪郭を整える
最後に、ラインの外側に伸びている枝先部分、乱れている枝葉を株の内側に切り詰めるように剪定し、植物の樹形やたたずまいをきれいに整えましょう。あまり切り過ぎると思うように形が整いにくいので、気になる箇所の枝数を数本減らすだけで大丈夫です。
植物の剪定後にすること
植物の剪定後は、 直射日光が当たらない半日陰の風通しの良い場所に置きましょう 。土を乾燥させ過ぎないように適度に水やりを行います。
また、活力剤や肥料もやると、生長に促進がかかり、すぐに新しい芽を出すようになりますよ!
剪定方法を知って、植物を元気に美しく育てよう!
植物が剪定を適切に行うことで、花や実の付きを良くし、樹形を整えられ、より元気で美しい姿を観賞できるようになります。反対に剪定をしないでいると、植物は養分を無駄に消耗し過ぎてしまったり、病害虫の被害に遭ったりして、元気に育たないことも。
植物を育てるときはケアを怠らず、定期的に観察をして、日々の変化に気づいてあげてください。
柴﨑光一
余暇プランナー
建築・インテリア学科卒の元造園士・花屋のバイヤー。 東京で建築の仕事をした後、カナダのトロントで造園士を、その後カナダの最東端にあるハリファックスの大自然で植物と戯れながら、植物・庭のWebコンテンツクリエイターを開始。 建築・造園・花屋の経験に加え、趣味の植物・コケの収集、アート作りを生かして、 みなさんに植物やガーデニングの魅力をお届けします!