2025年5月、埼玉県川越市に、少女漫画というジャンルの礎を築いたパイオニア・花村えい子の世界観をまるごと体験できる特別なコンセプトルームが誕生しました。宿泊施設「旅籠 小江戸や」に登場したこのお部屋は、川越市民と観光客による投票で選ばれた川越応援キャラクター「小江戸川越ほの香ちゃん」が大きく壁面に描かれ、カーテンやベッドカバーに至るまで、花村えい子の作品世界を感じられるデザインに包まれています。
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コンセプトルーム誕生の背景と秘話
この企画は、令和6年度川越市協働事業「川越が生んだ漫画家・花村えい子の推しガール総選挙」に端を発します。市民や観光客の投票により、川越の魅力を体現するキャラクターとして「小江戸川越ほの香ちゃん」が選ばれ、そのビジュアルを中心としたコンセプトルームが誕生しました。
企画を担当したアトリエえい子の河合さんは、次のように語ります。
「ほの香ちゃんは、川越でご商売、ご活動されている方々に許可制で使用可能。川越市役所職員の名刺、お店の看板など、徐々に使用が広がっています。今回のコンセプトルームでは、えい子作品に囲まれて過ごせる“華やかで楽しい”空間を目指しました。」

お部屋のカーテンやベッドカバーは、すべて特注で揃えられ、壁には1960〜70年代の花村作品のアクリルフレームが飾られています。代表作『霧のなかの少女』の日本語・フランス語版を室内で読むことも可能で、宿泊体験がまさに“えい子ワールド”そのものとなっています。
“泊まる”という体験を選んだ理由については、河合さんは次のように語ります。
「2021年に川越市民美術館で開催した「画業60周年のかわいい伝説 花村えい子と漫画」展では実際に原画作品を”見る”、花村えい子作品を”読む”、フランスのブランドBrigitte Tanakaとのコラボバッグなどのグッズを”買う”以外に、どんな体験をしていただけるだろう?と考えていました。今回、旅籠小江戸やさんで新たに”泊まる”という体験が生まれました。楽しんでいただきたいので、お土産もたくさんご用意しています。これを機に、川越へ遊びに行きましょう!」。

花村ひろ子さんが語る“川越とえい子”
花村えい子の長女であり、作品の継承に携わる花村ひろ子さんは、このプロジェクトに対し次のように述べています。
「川越はえい子さんの生まれ育ったところです。幼い頃から絵を描くことと本を読むことが好きで、地面にいたずら書きをしたり、お蔵の中で本を読み耽っていたとよく話してくれました。暗い戦争中に過ごした青春時代はきれいな色に憧れ求め続け、その思いが可愛いイラストに放たれたのでしょう。そして川越の歴史、文化は情緒をはぐくみ、後の耽美的な美しい世界を生み出したのだと思います。」
近くの蓮馨寺や熊野神社の境内は幼少期の遊び場であり、氷川神社には2019年に絵を奉納したこともあるとのこと。『花影の女』など、川越を題材にした作品もいくつか存在します。
花村えい子作品の魅力と創作背景
花村えい子は1950年代末に登場し、少女漫画に繊細な感情描写や詩的演出を持ち込んだ革新者でした。
代表作『霧のなかの少女』は1966年「週刊マーガレット」で連載され、リカちゃん人形の幻のモデルとされる“リカ”が登場。原田康子の小説『挽歌』に影響を受けて構想され、淡い恋の物語を“兄妹の話”に改変しなければならなかったような“子ども雑誌に恋愛はNG”だった時代に、親の恋愛が娘たちの運命を左右するという挑戦的なストーリー展開で話題をよびました。
また『源氏物語』を原典に忠実にコミック化し、上中下の三巻で描いた作品もライフワークの一つでした。読者が成長していく中で、自然に絵柄も変化し、可愛い画風と抒情的な美人画、両極のスタイルを生み出していきました。少女マンガからレディースコミックへの移行も、読者との“共成長”のあらわれだったのです。
海外での評価と今後の展望
花村作品は現在、関西万博の漫画展にて『源氏物語』が展示されるほか、2024年にはパリで個展を開催。フランス語版『霧のなかの少女』の出版を通じて、海外評価がますます高まっています。
「フランスのサロン展では、漫画家として世界初の正会員に招かれました。現地では多くの方が“セボン!”と声をかけてくれて、本人も驚きつつ大喜びでした。」
今後の展望としては、生誕100周年を見据えて美術展やアートブックの出版、花村えい子美術館の設立構想も進行中とのこと。
「作品が絶版になっているものが多いのは残念ですが、『源氏物語』や『落窪物語』はぜひ読んでほしいです。上品でおしゃれな“花村えい子ワールド”を再発見してください。」(アトリエえい子河合さん)
泊まれる“えい子ワールド”へ
小江戸・川越の情緒あふれる街並みに佇む「旅籠COEDOYA」では、花村えい子の世界観を体感できる特別なコンセプトルームの宿泊販売がスタートしました。
川越応援キャラクター「小江戸川越ほの香ちゃん」が大きく描かれたお部屋には、えい子作品を彩ったお花柄のカーテンや壁紙、ベッドカバー、アクリルアート、クッションが設えられ、まるで作品の中に入り込んだような空間が広がります。
お部屋には、世界的ブランド「ファーバーカステル」の色鉛筆で楽しめる「塗り絵」もご用意。宿泊された方は、以下のオリジナルグッズをすべてお持ち帰りいただけます。
【宿泊者限定特典(6点セット)】
- 小江戸川越ほの香ちゃん マグカップ
- 花村えい子の塗り絵(着せ替えつき)
- はる子ボックス
- 奈津子ボックス
- 花村えい子オリジナル手拭い(3柄からランダムで1点)
- オリジナルペーパーバッグ

【宿泊情報施設名】
旅籠COEDOYA(はたご こえどや)
https://hatago-coedoya.com/
住所:埼玉県川越市連雀町8-1
アクセス:西武新宿線「本川越駅」から徒歩約5分
部屋タイプ:セミダブルルーム(1〜2名利用)
料金:平日 1万5000円〜(税込)
※土日祝は20%増/小学生は30%割引/2名利用時は20%割引あり
宿泊予約方法:旅籠COEDOYA公式サイトにて受付中

少女漫画の原点にして革新者・花村えい子の世界観に包まれる一夜。川越の歴史とアートを感じながら、心に残る“泊まれる少女漫画体験”をぜひお楽しみください。
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