日本の総合寝具メーカーである株式会社エアウィーヴは、日本航空(以下、JAL)の国内線に使用されている、ビジネスクラスのマットレスパッド全8,200枚を、エアウィーヴ・JAL双方の協力の元で完全リサイクルし、寝具から寝具への「水平リサイクル」を行い、再製品化して順次交換することを発表するプレス向けイベントが開催されました。
「エアウィーヴ」JALに提供中のマットレスのマテリアルリサイクル本格化へ
株式会社エアウィーヴは国内の総合寝具メーカーで、寝具・クッション材ブランド「エアウィーヴ」の製造・販売を行なっています。
エアウィーヴはJALの国内線に向け、ビジネスクラスシートに「JAL SKY SUITE」として、エアウィーヴ製品を2013年より8200枚提供しているほか、翌年よりファーストクラスにも採用されています。
また、東京オリンピックにも1万8,000床の寝具を提供しています。
この度エアウィーヴでは、JALと共同で提供中のマットレスパッドの更新を計画し、その全てのマットレスパッドの完全リサイクル化を行うことを発表したのです。
マットレスがリサイクルされる率はたった2%!?
このイベントに登壇した株式会社エアウィーヴ 代表取締役会長兼社長の高岡本州(たかおかもとくに)氏は、昨今問題となっているゴミ問題の中でも、特に寝具は深刻な状況にあるのだとか。
高岡氏によると、都内では1日に280tもの粗大ゴミが回収されているそうなのですが、その中で粗大ゴミの収集量1位は、「棚」や「いす」を抑えて「ふとんなどの寝具」が1位となっている、というデータが出ているそうです。
※令和2年度、東京23区の品目別、「東京23区清掃一部事務組合調べ」
自動車や家電はリサイクルの関連規制によって法整備が進んでいるものの、寝具には未だ規制がなく、かつ寝具の構造には接着部分などがあるためリサイクルしづらいことから、リサイクルされる寝具の割合はたったの「2%」程度なのだそうです。
寝具を新しくするのは引越しなどの機会が殆どで、大体10年程度のサイクルで行うものということもあり、あまり社会の問題になっていないのだとか。
さらに、「本来リサイクルするためのすべが現状寝具にはないことや、リサイクルに代わる代替手段が無いために、社会の問題にそもそもならない」ことも大きな問題だと指摘しています。
水平リサイクルで「寝具から寝具」へ生まれ変わらせる
エアウィーヴでは、JALに提供しているマットレスパッド「JAL SKY SUITE」のリサイクルに向け、JALと連携して取り組むことを発表しました。
エアウィーヴでは東京オリンピックで提供した寝具1万8,000床を1つのゴミも出さずにリサイクルを行った経験を活かし、「JAL SKY SUITE」の完全リサイクルを行います。
まず使用しているマットレスパッドは、中材であるエアファイバーとカバーに分割。
エアファイバーは洗浄してリペレット化(廃プラスチックを加熱溶融して、再素材化すること)し、新たなポリエチレンを追加してエアウィーヴ用エアファイバーへと再製品化。
カバーは古布として回収し、繊維リサイクルへと回すことで、新規製品として生まれ変わらせるとのこと。
同イベントに登壇した、日本航空執行役員 カスタマー・エクスペリエンス本部長、ブランドコミュニケーション担当の鈴木啓介氏は、
「JALではESG戦略を経営の軸に据えるという新しい取り組みを行っていく」
とコメントしたほか、その一環として今回の全面リサイクルについてJALが快諾し、この取り組みを実現するために全面協力していると説明しました。
リサイクルされた新たなマットレスパッドは、厚さをこれまでの2cmから2.5cmへアップ。さらに腰部分を硬めにすることで、長時間のフライトでの「腰への負担軽減」も図ります。
現状ではリサイクルだと原料コストが3割程度高くなってしまうそうですが、「いずれはコストを下げてリサイクル製品を提供していきたい」という展望も高岡氏は語られていました。
今回の取り組みをきっかけとして、今後は現状BtoBより難しいと高岡氏も語られていた「一般消費者向けへのリサイクル製品の提供」も行っていきたいとコメントされています。
リサイクル寝具は使用者の心理的バリアによって忌避傾向にある点や、リサイクルにかかる解体費用などにより、行政も推進を躊躇う現状が要因であるとも語った高岡氏。
使用者・製造者・行政の3者が意識を改革することが大切であると語られていました。
エアウィーヴとJALが実施するマットレスパッドの完全リサイクルは、年内からスタートし、1年を目処に完全交換を目指すと説明しています。