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「歯の再生」は夢じゃない?日本初の新薬開発が進む/歯学博士・照山裕子


歯学博士・照山裕子の「口から老ける人、若返る人」

失った歯を、自分の体の力でもう1度取り戻せたら。そんな夢のような歯科医療の実現に向け、日本で新たな研究が進んでいます。注目されているのは、歯の形成を促す「再生治療薬」です。

きっかけの1つは、2021年に京都大学などの研究チームが発表した成果です。歯の形成を抑える働きに関係する「USAG-1」というたんぱく質に注目し、その作用を妨げる抗体を投与すると、先天的に歯が欠けるモデルマウスで歯の形成が回復しました。正常なマウスでも、新しい歯の形成が確認されています。

この研究を基に開発が進むのが、抗体医薬品「TRG035」です。26年8月、開発企業は第1相試験を完了し、先天性無歯症を対象とした次の探索的試験について、医薬品医療機器総合機構による治験届の調査が終了したと公表しました。ただしこれは、有効性や安全性が最終的に認められたことを意味しているわけではありません。

また特に注意してほしいのは、研究対象とするのが「先天的に歯が足りない状態」の患者さんであって、むし歯や歯周病で歯を失った方ではないという点です。現段階で、抜歯した成人の歯を誰でも薬で再生できるわけではありません。歯の形や位置、かみ合わせまで含めて、機能する歯が育つかという課題も残っています。

さらに、動物で歯ができたという成果と、人で安全かつ確実に治療できるという結論の間には多くの検証が必要です。報道の見出しだけで、すぐに実用化されると期待するのは早計でしょう。

それでもこの研究の発想は魅力的です。生えてこなかったものを人工物で補うのではなく、体に備わる歯の発生の仕組みを利用する。歯科医療の未来は「削る」「埋める」に加えて「生やす」の選択肢を持てるのでしょうか。実現までには時間が必要ですが、次世代の歯科医療を変える大きな可能性を秘めています。

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