生活クラブ事業連合生活協同組合連合会は、5月27日(月)から「国内自給 まかない亭」プロジェクトをスタートさせました。特別講師として高橋メアリージュンさんを迎え、日本の食料自給率をテーマにした出前授業が行われました。今回は、その現場を取材し、プロジェクトの狙いや出前授業の内容をお伝えします。
「国内自給まかない亭」プロジェクトの概要
生活クラブ事業連合生活協同組合連合会は、日本の食料自給率の低下に対する意識を高めるため、「国内自給 まかない亭」プロジェクトを開始しました。農林水産省の発表によると、令和4年度の日本のカロリーベースの食料自給率はわずか38%で、多くの食品を輸入に頼っています。この状況を改善し、より多くの人々に問題を「自分ごと」として捉えてもらうことを目的とした活動です。
東京家政学院でのSDGsプログラムについて
最初に、東京家政学院中学校・高等学校の生活指導係主任である鷹谷恵子教諭が、学院での探究活動の内容について説明しました。鷹谷教諭は、生徒たちが身近な衣食住に関する社会課題を調査し、持続可能で豊かな生活を送るための施策を考察するエキスパートを目指していると述べました。さらに、その知見を活かして、経済、環境、社会の視点から多様な社会課題の調査と解決に努めていると説明しました。
「国内自給まかない亭」出前授業
授業では、生活クラブ生活協同組合の福住洋美理事が、日本の食料自給率の現状と生活クラブの取り組みについてお話しされました。
2023年度の日本の食料自給率はカロリーベースで38%となっており、裏を返せば62%は海外からの輸入に依存しています。これは海外の先進国と比較して最低水準であり、日本の食料自給率は低下の一途をたどっています。食料自給率が低下し続けると、以下のような影響が懸念されます。まず、国内の生産者や農地がさらに減少します。次に、食料の長距離輸送による環境負荷が増大します。そして、輸入依存が強まることで、紛争や気候危機の影響を受けやすくなります。
こうした日本の現状に対し、生活クラブでは国内自給力の向上に向けた取り組みを進めています。具体的には、加工品の原料を可能な限り国産に切り替えること、畜産飼料の国産化、そして国産品種の利用促進を行っています。
これらの取り組みを紹介した後、福住理事は「こうした一つ一つの取り組みを積み重ねることで、日本の自給率を維持し、さらに向上させていきたいと考えています」と意気込みを語りました。
高橋メアリージュンさんによる特別授業
モデル・俳優の高橋メアリージュンさんが特別講師として、オーガニック・サステイナブル・SDGsに関する日々の実践と、自身の体験を交えたお話をされました。
高橋さんは、約2年前にフードロス削減プロジェクトに参加し、規格外野菜の販売やマルシェの運営を手掛けました。また、生産者と話す際に必要な知識を身につけるため、社会人向けの農業学校で学んでいます。さらに、実際に田植えをしたり、農家の手伝いを行うなど、積極的に農業に関わっています。
高橋さんは、「撮影で忙しい時でも畑に行くと自然のエネルギーをもらって回復できる」と、自然との触れ合いが心身のリフレッシュに繋がると話しました。
福住理事・高橋メアリージュンさんのトークセッション
「国内自給 まかない亭」プロジェクトの一環として公開されたWEB動画を視聴した後、生活クラブの福住理事と高橋メアリージュンさんによるトークセッションが行われました。
WEB動画では、日本の食料自給率を反映した不完全な料理に驚く一般の方々の姿が描かれています。
この動画を作成した経緯を問われた福住理事は、「自給率38%という数字は具体的なイメージがわきにくいと思い、お料理にして見える化を試みました。国産を大切にしている生活クラブにも興味を持ってもらいたいという思いから作成しました」と説明しました。
生徒たちに実感してもらうため、WEB動画に登場した自給率を視覚化したメニューサンプルが披露されました。そのメニューサンプルを見た高橋さんは、「すごい。このオムライス、びっくりです。卵は国産のものが多いイメージでしたが、ほぼチキンライスですね」と感想を述べました。
また、セッションでは東京家政学院のSDGsへの取り組みに対する感想や、生活クラブの今後の活動についても話題となりました。
生徒に向けたクイズ大会
トークセッションの終わりには、生徒へ向けたクイズ大会が実施されました。
食料自給率に関する︎×形式のクイズとなっており、出題される問題は、特別講師の高橋さんが読み上げて進められました。生徒たちは、友人同士で相談しながら楽しそうに参加している姿が見られました。
【クイズ出題内容】
Q1.日本の食料自給率は『68%』である。(答え: × 正解38%)
Q2.外国で生まれたヒナを日本で育てたら、その鶏肉は、国産である。(答え:)
Q3.輸入した飼料(エサ)を与えて、日本で育てた豚肉は、国産である。(答え:)
生徒からの質疑応答
次に、生徒からの質疑応答が行われました。「今の時点で私たちが何かを変えたいと思った時に障害となる法律は何ですか?」という真剣な質問や、「なぜ農業を始めようと思ったのですか?」という高橋さんへの質問などがありました。
最後に、生徒へ向けたメッセージとして「周りに配慮をしながら、日本の食を守っていけるように、そして日本の原風景を守って、日本って素晴らしい国だな、美味しいご飯食べられるな、と思って生活していってほしいなと思います。」と福住理事は生徒たちに伝えていました。
また、高橋さんは「今の段階からこういう(SDGs)お勉強ができている皆さんが本当に羨ましいです。皆さんがこれからの日本、世界を変え、支えてくれるメンバーだなと思っておりますので、応援しております。よろしくお願いします。これからの日本を。」と生徒たちに期待を込めた応援メッセージを送っていました。
「国内自給 まかない亭」プロジェクトは、単なる食育にとどまらず、日本の食料自給率の現状を身近に感じ、自分ごととして捉えるための重要な試みです。高橋メアリージュンさんとのコラボレーションや、視覚的なコンテンツを通じて、多くの人々が食の未来について考えるきっかけとなることを期待します。