File no. 158
《KARHU/カルフ》
シンプルで飽きのこない洗練された見た目や、長く愛用できる耐久性と高い機能性。
それを備えた"北欧デザイン"の建築、家具、インテリア、ファッションなどが今、世界中を虜にしている。
今回は、そんな北欧デザインを牽引する国、フィンランド発の老舗シューズブランド《カルフ》を紹介したい。
今から100年以上も前の1916年、フィンランドの首都・ヘルシンキで《カルフ》は産声を上げた。
小さな木工加工の工房としてスタートし、創立当初は地元で採れた白樺を用いてスキーの板や陸上競技の槍などを手掛けていた。
その後、同じ陸上競技に関する製品としてランニングスパイクの開発を始める。
1920年には、社名をフィンランド語で"熊"を意味する《KARHU(カルフ)》に変更。
同ブランドの開発したランニングシューズは、1912年のストックホルムオリンピックで長距離三冠を達成した初代フライング・フィンとして名高いハンネス・コーレマイネンを筆頭に、1920年のアントワープオリンピックや1924年のパリオリンピックで複数の金メダルを獲得したパーヴォ・ヌルミ、ビレ・リトラなどのフライング・フィンズの躍進を足下から支えた。
ちなみに、"フライング・フィン(Flying Finn)"という言葉は、世界的に有名なフィンランドのスポーツ選手を称える意味で使われる愛称のこと。
1950年に開催されたヘルシンキオリンピックでは《カルフ》の製品を使用したフライング・フィンズが、なんと15個の金メダルを獲得。
この大活躍を機に飛躍的な成長を遂げた。
そして、1960年にはフィンランド語で"チャンピオン"を意味する"Mestari"から取ったランニングシューズで唯一の商標である「Mロゴ」を正式に登録。
現在も使用されているシューズサイドを彩るこのロゴは、60年以上も前から使われ続けている伝統的なものだ。
1970年には効率を重視したイノベーションの伝統を受け継ぎ、エアクッションミッドソールを開発、特許を取得。
その後もユヴァスキュラ大学との共同開発によって生み出された「Fulcrum(フルクラム)」という高度な推進システムや、200万人以上の足のスキャンの分析から開発された《カルフ》のフィット感の源「Ortix Fit(オルティックスフィット)」、 女性専用のラスト「Hera Fit(ヘラフィット)」など、世界的な知名度に甘んじることなく、技術革新を続けてきた。歴史に名を刻むフライング・フィンズを支えてきたシューズブランドの一足が、今日も普通に買えるのは嬉しい。
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