■OUTDOOR STYLE GO OUT vol.110 定価¥680
アウトドアウエアの機能を取り入れたアメリカ軍の戦闘服。
ECWCS(エクワックス)とは、Extended Cold Weather Clothing Systemの略称であり、日本語では拡張式寒冷地被服システムと訳される。アウトドアウエアに着想を得たこのシステムの全容を探ってみよう。
“ECWCS”6つの注目ポイント。
エクワックスとは一体なんなのか。まずは、以下の6つのポイントからその特徴を見ていこう。
01. 透湿防水はゴアテックス一択。
第一世代の誕生以来、ハードシェルには一貫してゴアテックスが採用されている。今では様々なメーカーが透湿防水素材を製造しているが、先駆者ゆえの信頼性の高さが重要なのだろう。
02. アウトドアブランドも参入。
パタゴニアやワイルドシングスなど、GO OUTでもお馴染みのブランドがECWCSやPCUの開発・製造に携わっている。タグを見なければわからないが、そんなマニアックさもポイント。
03. 中間着はポーラーテックが活躍。
レベル3以下の保温層については、ポーラーテック社の素材が多く使われている。これも同社がフリースの先駆者であるがゆえ。特殊部隊用のPCUでは新素材の採用も積極的に行われている。
04. ヘビーデュティなつくり。
アウトドア用の民生品と異なり、レベル4以上のアウターは厚手の生地を使うなど、堅牢なつくりになっている。一方、ベースレイヤーなどは民生品と単なる色違いに過ぎない場合も。
05. レベル7はプリマロフトを採用。
アウトドアウエアの世界ではダウンが幅をきかせているが、ECWCSでは化繊のプリマロフトが活躍。水に濡れても保温性を失わない点や、薄くても高い断熱性を持つ点が評価されている。
06. Made In USAが基本。
他国と戦闘状態に陥った際にも供給に困らないよう、米軍の戦闘服はほとんどがアメリカ製となっている。この点は今や中国製が主流となった民生品のアウトドアウェアとの大きな違い。
機能性に優れたレイヤリングシステムを採用。
米陸軍で研究開発された、エクワックスの第一世代が登場したのは、1985年のこと。
1970年代からアウトドア市場で絶大な支持を得ていたゴアテックスをアウターに採用し、フリースのミッドレイヤーや、吸汗速乾性に優れたベースレイヤーを設定するなど、アウトドアウエアのレイヤリングに着想を得て開発されたこのシステムは、陸軍の戦闘服におけるスタンダードとなった。
第三世代となる現在では、極端に寒冷な状況でも耐えられるよう、レベル1〜レベル7までのアイテムが用意され、それらの組み合せによりあらゆる環境に対応できるようになっている。
記事頭の写真のレイヤリングは、時代などの設定も無視した極端な例で、実際には気温や天候、任務に応じて、最適なレベルのアイテムを選択的に組み合せて着用することになる。
エクワックスのひとつの特徴は、戦闘服でありながらアウトドアウエアのメーカーが開発・製造に関わっていること。だから民生品とほとんど変わらないアイテムも見ることができ、つまりはアウトドアウエアとして着ることもできるというわけ。
当初陸軍のみで採用されていたエクワックスだが、後に海兵隊でも同システムが採用されるようになり、また空軍・海軍でも類似のアイテムが正式に採用されるようになった。そして特殊部隊用としては、さらに先鋭的なシステムとして、PCUというものが開発されており、こちらについては続編の記事でご紹介しよう。
軍用品として製造されるエクワックスの製品は、決して広く流通しているものではないが、そのマニアックさもまた魅力と言えるのではないだろうか。
次回の記事では、ECWCSのレベル1〜レベル7まで、各レベルごとに紐解いてご紹介していくので、乞うご期待!
- Edit/Takatoshi Akutagawa(Thunderbird Design)
- Photo/Hiroyuki Yamada Styling/Takahiro Nakajima
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