まだまだ暑い日が続くなか、キャンプを快適に楽しむために欠かせないのが熱中症対策。
場所によっては、そろそろ昼夜の寒暖差も気になってくるし、害虫対策や生鮮食品の衛生管理も意識しておきたい。
そこで『夏キャンプを安全かつ快適に楽しむための秘訣や注意事項』を、キャンプの達人たちに聞いてみることに。
ということで、今回の“タープ下座談会”は、キャンプインストラクターの青木さん、アウトドア料理人のA-sukeさん、医療系キャンプユーチューバーのキャンゴさんが登場。
それぞれのプロフェッショナルな視点で、夏キャンプの安全対策を語ってもらう。これで残暑を乗り切ろう!
まずは熱中症対策! 水のガブ飲みは危険?
–暑いなか、集まってもらってありがとうございます。早速ですが、キャンプでの熱中症対策って、どんなことしていますか?
キャンゴ「1番大切なのは水分補給ですね。でも水分の取り方を間違えている人が結構多くて……」
A-suke「そういえば、ボクはよく水をガブ飲みして注意されますね」
キャンゴ「まさにそれです。水や麦茶を大量に飲むと、逆に脱水状態になりやすいんですよ」
青木「逆にダメなんですね!」
キャンゴ「例えば、炎天下で8時間ほど作業すると10Lくらい汗をかくんです。で、1Lに対して塩分が約3g入っているから、8時間で30gほどの塩分が、体内から抜けることになります」
青木「夏キャンプも近い状況かも……」
キャンゴ「それで塩分が足りない状態で、水や麦茶を飲むと、体内の塩分濃度がさらに薄まってしまうんですよ。そうすると身体は塩分濃度を少しでも高めるために、せっかく入れた水分を、尿として排出しちゃうんです」
キンキンに冷やしたスポーツ飲料がベスト。
A-suke「なるほど! 炎天下で水や麦茶をガブ飲みして、トイレが近くなると危険なんですね」
キャンゴ「熱中症になりかけている状態です。だから塩分が少し入っているスポーツ飲料が必要なんですよ。もしくは塩分のタブレットです。とにかく体内で水分をキープするためには、塩分が必要不可欠なんです」
青木「飲むドリンクの温度は重要ですか?」
キャンゴ「身体に負担がないのは常温だけど、熱中症の場合は冷たいほうがいいです。冷えたものを飲まないと体温を下げることができないので。氷でキンキンに冷やしたスポーツ飲料を、保冷ボトルに入れて持参するのがベストですね」
夏のテント設営は、涼しくなる夕方から!
青木「でも熱中症はホントに怖いですよ。やっぱり35度を超えてくるとテントの設営すら危険で。だからキャンプの講習でも、夏のテント設営は涼しくなる夕方からにしてくださいってレクチャーしています」
キャンゴ「熱中症のピークの時間帯が12時〜15時くらいだけど、ちょうどそのあたりに設営しますもんね」
青木「だからチェックインしたら、さっとタープだけ設営して、一旦そこに荷物をまとめて、夕方になるまで近所のアクティビティで遊ぶとか」
A-suke「確かに昼間にテントを設営しても、暑くて入れないですもんね。遮光性のあるテントもあるけど」
青木「最近はUV95%カットのテントやタープがありますからね。夏はそのあたりを使ったほうがいいと思います」
A-suke「そういうギア選びも重要ですよね。オススメのアイテムとかあります?」
オススメの熱中症対策アイテムは?
キャンゴ「今日はアルコール成分のミストと小型ファンのセットを持ってきました。これを服に吹き付けてファンの風を浴びると、アルコールが蒸発する気化熱で身体を冷やしてくれるんですよ。セットで使うのがオススメです」
A-suke「なるほど。今度使ってみます」
青木「ボクは頭に乗せる保冷剤、ヘッドクーラーです。キャンプの講習中は、保冷剤をポケットに入れたりするけど、その延長で使っています」
キャンゴ「それいいですね! 頭は重要ですから」
青木「そのまま乗せても落ちるから、キャップで挟んで使うけど、これだけで全然違いますよ」
A-suke「首から下げるファンやネッククーラーと違って、キャップに内蔵しちゃうと見えないのもいいですね」
急激な天候変化や寒暖差への対策は?
―近年の夏は集中豪雨も増えているし、そろそろ昼夜の寒暖差も気になるころかと。
青木「集中豪雨は一気に地面が緩んでペグが抜けやすくなるし、突風も吹いたりするから、タープが崩壊することがあるんですよ。それでパニックになる人も多いです」
A-suke「林間はまだしも、広いオートサイトは風もやっかいですよね」
雨具はタープ下に常備しておくのが鉄則。
青木「だからレインウエアは絶対に必要ですね。でもトイレに行くときに、さっと使える傘もあったほうがいいから、講習では必ず両方用意してくださいって伝えています」
キャンゴ「確かに、両方を使い分けたほうが絶対に快適」
青木「でも、よくあるのが、クルマの中に置いていましたってパターンです。それじゃ意味ないんですよ。取りに行くだけで濡れちゃうし。だから雨具はタープ下やテントの中に用意しておくのも鉄則ですね。結構ポイントかも」
急激な寒暖差も体調不良の原因に。
キャンゴ「寒暖差に関しては、外気温に7度以上の差が出ると、自律神経が崩れやすくなるみたいですよ。例えば、日中は30度あるけど、夜に23度まで落ちると、それだけで体調不良になったり」
青木「山間部のキャンプ場は、夏場でも夜中は寒く感じたりしますからね」
キャンゴ「それを防ぐために、日中が暑いときは、夜もなるべく身体を冷やさないようにしたほうがいいです」
A-suke「涼しい〜ってなっちゃいそうだけど、そこは我慢ですか?」
キャンゴ「そうですね。ちょっと暑苦しいかもしれないけど、しっかり寝袋に入って寝るとか」
青木「ウチも夏は寝袋といっしょにタオルケットを貸し出しています。温度調整できるものが、1枚あるだけで全然違いますから」
結局、最強の防虫グッズってナニ?
―続いて、防虫対策について教えていただきたいです。
A-suke「ボクは釣りもするけど、釣り好きの間で意外と人気なのが、ハッカ油ですね。防虫対策として、水で薄めてミストにして吹きかけて使う人が多いです」
青木「そういえば、友だちがフェスでいろんな防虫スプレーを試した結果、ハッカ油が1番効くって言ってましたよ。だけどスースーしなくなると効果がなくなるらしい」
A-suke「汗で流れちゃいますからね。だから効果を持続させるには、結構な頻度で使わないといけないっていう(笑)」
ポイズンリムーバーは即効性がキモ。
キャンゴ「ボクは刺された後の対策グッズだけど、ポイズンリムーバーを持ってきました。でも、実はこれって医療界では眉唾モノなんですよね……」
A-suke「え、じゃあ効かないってことですか?(笑)」
青木「いやいや、ブヨとかに刺されたときに使うと、次の日に楽だなって実感ありますよ!」
キャンゴ「ですよね。ボクも賛成派です。医療界が認めていないのは、単純に臨床実験をした研究論文がないからなんです。でも実際に使った人はわかると思うけど、やっぱり効果あるんですよね。ただし、刺されてから1、2分以内に使うに限るんです」
A-suke「なるほど。即効性が重要なんですね。手元にないと意味がないってことか」
キャンゴ「毒素が血液に混じって身体に回る前ですね。だからテーブルに常備したり、キーホルダーに付けておくのがいいかもしれないです」
食の安全対策と、夏向きキャンプ飯を教えて!
ー最後は食材の扱いです。これはプロの料理人のA-sukeさんがメインになるかと。
A-suke「まずは食中毒対策ですよね。食材を腐らせないことが重要だけど、そのためには、ちゃんとしたクーラーボックスを使うことです。あとは地熱を遮断するために地面から距離を取るのも重要かな」
キャンゴ「やっぱりクーラーボックスの性能差って、食材に影響出るんですか?」
A-suke「ハッキリ出ます。ボクはシマノの6面真空パネルのモデルを使っているけど、やっぱり高価なモデルは、食材が無駄になったりして残念に思うことが少なくなります」
青木「保冷剤も重要ですよね。氷だけじゃ持たない気が……」
A-suke「そうですね。最近、ボクが愛用しているのがモンベルの保冷剤です。なにがいいって、凍らせた状態でもちょっと曲げられるんですよ」
青木「確かに板状の保冷剤はギリギリ入らないとかあるけど……」
キャンゴ「これは食材の隙間にも入れやすそう」
A-suke「ちょっとしたことだけど、地味に便利なんですよね」
夏は生肉より冷凍した味付け肉がオススメ。
青木「肉の種類とかはどうなんですか?」
A-suke「安全な順番としては牛、豚、鶏です。鶏肉は個体が小さいのもあって、どうしても細菌に触れる部分が多く、菌の増殖が早いんですよ。でも、どれも冷凍した状態で持っていくのがいいですね」
青木「安全面を考えたら、肉は冷凍しろってことですね」
A-suke「せっかくのキャンプだから、ちょっといい生肉を買いたくなると思うけど、夏に限れば冷凍豚バラ肉とかのほうがいいと思います。あとは調味料に漬け込んだ肉。塩分濃度を上げることで腐敗菌を軽減できますから」
キャンゴ「なるほど! 味付け肉は生肉よりも腐りにくいっていうメリットもあるのか。他にオススメの料理ってあります?」
火を使わず食べられる、気軽な清涼メニュー。
A-suke「最初にオススメしたいのは冷水麺です。そうめん、うどん、そば、冷やし中華、結構いろんな種類があるんですよ」
青木「あ、それボクもよく食べています! 気軽でいいですよね」
A-suke「そうなんですよ。正直、味や食感は生麺に勝てないけど、夏に野外で麺類をボイルして冷水で締めるって、結構ハードルが高いと思うんですよ」
青木「でもそれは冷水でジャブジャブ洗うだけですもんね。朝食で使うことが多いです。前日に残った食材を一緒に消化したり」
A-suke「野菜とか乗せて食べたら、バーナーすらいらないですから。暑いときは、なるべく火を使わない料理がいいですよね」
キャンゴ「確かに夏の朝や昼間からバーナーは出したくない」
酸味がある冷製料理で、食欲不振を解消!
A-suke「例えば、今日持ってきたのはマリネとキュウリの1本漬け。こういう冷製料理は過熱しなくていいし、家で仕込めばタープを設営して、すぐに食べられますから」
青木「めちゃくちゃ美味しそうじゃないですか!」
キャンゴ「酸味がある料理は、暑くても食べたくなるし、キンキンに冷やしたビールに合いそうです」
ビールもいいけど、夏向きのお酒って?
A-suke「冷やしたビールもいいけど、温くなると残念ですよね。そこでホワイトラムです。常温で飲むのに適しているんですよ。水やワインが腐りやすい夏のカリブ海で、海賊が好んで飲んでいたというルーツもあるくらいですから」
青木「そのエピソードだけでも飲みたくなりますね(笑)」
A-suke「さっぱりした味わいで、ミントとソーダ水を入れたらモヒートが作れるし、ちょっと甘みもあるから、冷凍フルーツを入れてカクテルにするもありです。そのあたりも夏向きですね」
キャンゴ「モヒート大好きなんですよ! 確かに夏にいいですね。冷凍フルーツのカクテルも今度試してみます」
万全の準備で、夏キャンプ後半戦スタート!
―それぞれの視点でタメになる話、ありがとうございました。
A-suke「知らない分野の話が聞けて楽しかったし、めちゃくちゃ勉強になりましたよ」
青木「しかも即戦力になるネタばかりでしたね。まだまだ暑いし」
A-suke「むしろ今まで暑すぎてキャンプどころじゃなかったから、夏キャンプはこれからですよ」
キャンゴ「とはいえ、残暑といえども熱中症になりますからね。しかもこれからは寒暖差の問題も出てくるし」
夏キャンプは快適に楽しむスキルが重要。
青木「そろそろ大丈夫だろうって侮ると事故りますからね。まだまだ気は抜けない」
A-suke「食品はまだまだ危険です。真冬以外は食べる直前までクーラーボックスに入れることを徹底してください。熱中症もそうだけど、食中毒もホントに危険ですから」
キャンゴ「高温多湿の日本の夏は、いろいろとやっかいですよ」
青木「だからこそ快適に楽しむスキルは重要ですね」
A-suke「間違いない!」
インストラクター、アウトドア料理の達人、医療系キャンパーという、異なるスキルを持つキャンプの達人による座談会は、かなり実用的でタメになるノウハウばかり。
3人の提案やオススメを実践して、夏キャンプ後半戦を安全かつ快適に楽しもう!
Photo/Taizo Shukuri
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