仕事帰りに楽しむ、夜の川崎とその周辺。
電車なんかと違って、クルマで行く旅は風の吹くまま気の向くまま、どこにだって行ける。相棒が愛してやまない自分のクルマだったら、より楽しい。それと思い立ったらパッと行けて、パッと帰ってこられるくらいの距離が、ドライブにはちょうどいい。
そんなわけ好評連載中の本企画。今回は「ピルグリム サーフ+サプライ」に勤める後藤凌太さんと、お友達でサウナビルダーの中川侑哉さんの2人でナイトドライブへ。仕事帰りに、寝坊してしまった休日に、たとえ遠方でなくてもいつもと違う遊び方はできる。
親から譲り受けた、車高ちょい下げステップワゴン。
まずはじめに。今回出演いただいたお二人は、中学時代からのお友達。現在もそれぞれの自宅はクルマで10分もかからず、多いときには週2で会うという大の仲良し。この日はちょっと早めに仕事が終わり、都内で合流して夜のドライブへ。旅のお供は、後藤さんが所有する2001年式のホンダ「ステップワゴン」。
「親父から6年前に譲り受けて、これが初めてのマイカーなんです」
そんな愛車は、とにかく広々している。サーフィンやキャンプなど、休日はアクティブに過ごす後藤さんだから、この荷室は必要不可欠。普段は後部座席すべてをフルフラットにし、趣味のモノでパンパンだそう。
いまの住まいは藤沢だから、潮風の影響もあり、錆もいい味になっている。
見た目は、角ばったわけでもなければ、現在のクルマに見られる流線型のデザインでもない。コロンとした見た目で、なんとも愛くるしい一台。そして車高は、ちょっとだけ低め。
「親父がアメ車乗りでして、少しでも近づけようと車高を低くしたみたいです。段差で底を擦っちゃうこともあるんですけど、ボクも親父の影響を受けているので、これはこれで気に入ってます」
ちなみにこのクルマ、運転席のドアは開かず、後部座席のスライドドアは運転席のボタンでしか開閉できない。その不便さを差し引いても愛着がある様子。ゆくゆくは、商業車の顔をしたシボレー・アストロに乗るのが夢!
では、陽も傾いてきたところで、そろそろ出発とまいりましょう!
老舗の古本屋でダダイズムの精神を感じる。
今回は仕事終わりということもあり、遠出はなかなか難しい。そんな制約があったとしても、見どころがたくさんあってドライブを楽しめるのが神奈川だ。掘れば掘るだけ、魅力的なスポットが湧いてくる。
強い西陽が車内に注がれるなか向かった先は、東急東横線の日吉駅そばにある老舗の古書店。
学生運動が盛んだった1969年に創業した「ダダ書房」。店名のダダは、既成の秩序や常識に対抗する思想を表す「ダダイズム」からきていて、創業当時はそれらに関連する書物がたくさんあった。現在は小説や雑誌、写真集など、ジャンルを問わずラインナップされている。
その昔、漫画の貸本も行っていたことから、漫画は特に充実している。80年代や90年代に発売されていたものも多い。後藤さんが手に取った『カリフォルニア物語』の初版は1978年だ。
2人はどちらもサーフィンやキャンプなどとにかくアクティブに過ごすから、読書はあまりしないタイプ。それでも、ついつい長居してしまった古本屋。いまは本からダダイズムの思想は感じないまでも、店内にはまだ、当時のほのかなにおいが漂っている。もし訪れたなら、現在の店主で創業者の妹さんとの話も楽しんでもらいたい。
仕事のストレスは、その日のうちに発散する!
途中、「ダダ書房」からほど近い場所に怪しげな店(かどうかもわからない外観)を発見し立ち寄ってみる。店名は「無人古着・古本 ステルナ」。その名の通り、お店のなかに店員さんはいない。「支払いは?」と疑問は浮かぶが、店内には代金を入れるための投入口があるだけ。性善説で成り立つお店だ。
もうひとつ驚きなのがその価格。タグのついてない衣類は一律300円。古本は日本語のものが100円、サッカー系300円、洋書が500円と超安だ。
掘り出しものが眠っている予感がプンプンしていたのだけど、この日は時間が限られているため、足早に店を出て、ドライブを続行する。次にたどりついたのは「中山バッティングセンター」だ。
後藤さんはバスケットボール、中川さんはサッカーと野球にはまったく触れてこなかったが「ストレス発散のクラシックといえばバッティングセンターです。バットの握り方もわからないですけど、ホームラン賞狙います!」と後藤さん。
ここは初心者はもちろん、上級者も楽しめるバッティングセンターだ。最速は、オオタニさんには及ばないけれど150キロまで用意されている。そんな速球、初心者の2人には手も足も出ないというわけで、最遅の80キロのマシンでトライ!
「ダーーーッ!!」
ストレスを溜め込んだ掛け声とともにフルスイング。気合いは入っているけど、全然当たらない。ただ、徐々にボールにも目が慣れて、芯で捉えられるようになる。
再び「ダーーーーーーッ!!」という声とともに、後藤さんが会心の一撃。中川さんも負けじと続く。その後はストラックアウトにも挑戦し、こちらは1枚しか抜けない結果に。
ホームラン賞は獲得できなかったものの、ひと汗流し、日頃の鬱憤も晴らせたことで、よしとしましょう。時刻は21時。いい加減、お腹が減ってきた!
遅めのディナーは、旅した気分になれるディープな中華で。
2人はよく町中華を訪れる。中川さんにいたっては、藤沢にある有名な中華料理屋で働いていた経験もあり、中華には一家言あり。そうしてやってきたのは川崎駅前。
この町は夜こそにぎわう。お酒で頬をあからめた人たちが道に溢れ、ネオンもギラギラに輝いている。そんな町の中華の穴場が、知る人ぞ知る「海月」だ。
メインストリート沿いにありながら、怪しい雰囲気に包まれる。しかも700円もあれば腹をいっぱいに満たしてくれるという、コスパも最強のお店だ。
この日の店内は、自分たちを除けば100%中国人。スタッフと客のやりとりも中国語でされている。「川崎のど真ん中なのに、異世界に迷い込んだような錯覚に陥りますね」と中川さん。大袈裟ではなく、ホントにそんな感じ。
頼んだメニューは、後藤さんがエビと玉子の醤油飯+唐揚げ(680円)に、中川さんが五目チャーハン(580円)。中国人のシェフが手際よく調理し、ほどなくして料理が到着。空きっ腹にメシをかきこむ。
「おいしいですけど、普通の町中華っぽくはないですね」。その言葉通り、香辛料などが効いていて味が本格的。お客の大半が中国人であることも納得できる。
仕事終わりの異世界体験。雰囲気も味もコスパも◎!
最後に向かったのは、川崎の夜の観光名所。
妖艶な絶景のなかに迷い込む。
川崎は工場の街でもある。浮島町にある工場地帯は、夜になると一層輝きを放つ夜景スポットとして知られ、夜のドライブにはうってつけだ。「神奈川生まれ育ちですけど、実は行ったことがない」という後藤さんの運転で、川崎市内からクルマを走らせる。
30分ほど運転したところで、美しいディストピアのような世界に到着した。日中は目立たないものの、夜には煙突からあがる煙がオレンジ色に染められ、工場内は煌々と光っている。
道を曲がる度に新しい景色が現れ、ドライブしているだけで楽しい場所。この絶景は、夜しか見ることができない。
22時。約5時間のナイトドライブはこれにて終了。おふたり、今日はいかがしたか?
「よくドライブはしますけど、夜のほうが圧倒的にクルマが少なくて運転も楽しかったです。高速道路なんかは特に。そして日中に観光したくらい満足度が高かったです。夜でもこんなに楽しめるんだっていうのは新しい発見でしたね」(後藤)
「かなり楽しめましたし、ごっちゃん(後藤さん)と同じく、見方を変えれば夜でも楽しいスポットはこんなにあるんですね。一番印象深かったのは『海月』の雰囲気。また行っちゃうかもしれないです!」(中川)
ドライブを楽しめるのは、なにも日中だけじゃない。夜にしか出会えない景色は全国いたるところにある。
そしてやっぱり、若者は夜が似合うのだ。
Photo/Takuma Utoo
The post アフター5に行く、ちょっとディープな川崎ナイトドライブ。【ワンデイドライブ #6】 first appeared on GO OUT.