高校1年生の夏、羽賀龍之介選手は団体戦の日本一を争う全国大会で、周囲を驚かせました。柔道の名門・東海大相模高校の先鋒として出場。得意の内股で、次々と相手を倒していき、連続20人抜きを成し遂げたのです。羽賀龍之介選手がかける内股を徹底的に分析してみました。
羽賀龍之介に井上康生も注目していた
将来、日本の柔道を背負って立ちかもしれない…そのころの羽賀龍之介選手に、現役時代の井上康生監督も注目していました。井上監督は「羽賀選手が中学校ののときに練習をやったときに、このタマは違うな」と思ったといいます。
「羽賀選手が内股をかけるのであれば、普通にくるっと返るのではない」のだとか。「いわば相手が始め飛ぶような体のバネ、柔軟さ、キレというものを持った選手だった」と話します。
井上監督の目に留まった相手がはじけ飛ぶような体のバネというのはどんなものなのでしょう。羽賀選手の内股は、右足を軸にして相手を大きく跳ね上げて投げる形。この軸足を徹底的に分析してみました。
羽賀龍之介が相手を跳ね上げるパワー
畳に埋め込んだ特殊な測定器で、軸足が生み出すパワーを測定します。相手の体を宙に浮かせた直後、軸足の跳ね上げる力は291㎏に達しました。同じ階級のトップレベルの学生でも201㎏という数値です。
さらにこのとき、驚くべきことがおきていました。羽賀龍之介選手が相手を跳ね上げるパワーが最大値に達した0.1秒後、数値は一気に10分の1以下に下がったのです。いったい何がおきたのでしょう。
下から見上げた羽賀選手の内股は、相手を投げる途中に一瞬、軸足が宙に浮いています。宙に浮き上がっていたことで、軸足で支えていた負荷が消えたのです。相手もろとも飛び上がるほどのすさまじい力で、羽賀選手の軸足は地面を蹴っていました。