2013年、イギリス東部・ノーフォーク。この街の美容室で働くリアン・ハウズは忙しくも充実した毎日を送っていた。
■お腹の不調に悩まされる
そんな彼女に最近ちょっとした異変が。下痢の日もあれば便秘になる日もあり、ひどくお腹の調子が悪い。リアンは症状の変わるお腹の不調に悩まされていた。
一緒に暮らす恋人のジェイコブもリアンの症状を心配していた。食生活が原因ではないかと、野菜中心の食事にしたり市販の胃腸薬を試してみたが一向に改善されない。リアンは近くの病院で診察を受けることに。医師からは「過敏性腸症候群」と診断された。
「過敏性腸症候群」とは腸の運動や分泌機能の異常によっておこる病気の総称。症状は下痢や便秘などの便通の異常で何度もぶり返すことがある。医師は強めの胃腸薬をリアンに処方。これによってこの症状が治まると思ったリアンは一安心し、家でこの胃腸薬を服用した。
■体から無数の発疹
胃腸薬を服用した翌日。仕事場でもお腹の調子がいい。ルンルン気分のリアンだったが、午後になって別の症状が現れた。鏡を見ると、リアンの唇に小さな水ぶくれが出来ている。近くの薬局で相談したリアンは口唇ヘルペス用のクリームを勧められた。
ストレスなのか?水ぶくれの原因がさっぱりわからないままリアンは購入したヘルペスクリームを塗って早めに寝ることにした。翌日、リアンはあまりの痒みで目が覚めた。鏡を見ると目は腫れ、体中に無数の発疹ができている。
ヘルペスクリームが体に合わなかったのか?そんなことを考えながらも症状はどんどん悪化していく。夜、仕事から帰ったジェイコブはリアンの症状を見て驚き、急いで病院へ連れて行った。
病院もヘルペスクリームによるアレルギー反応だと診断。次は発疹を抑えるステロイド錠剤とかゆみを抑えるクリームを処方された。
診察後、2人はリアンの母の家へ。ジェイコブは仕事がある為、何かあったときのために母の家に泊まることにした。処方されたステロイド錠剤とかゆみ止めクリームを塗ったリアンは次の日は良くなる事を信じて眠りについた。
■命を脅かすほどのアレルギー反応
しかし翌朝、リアンは治まらないかゆみと熱に苦しんでいた。歩こうとしても足の裏にできた水ぶくれの激痛で歩けない。鏡を見ると発疹は口の中にも出来ていた。ショックを受けるリアン。異変に気付いた母がリアンの元へ。高熱により意識が混濁していたリアンはすぐに救急病院へ運ばれた。
すぐに医師たちの処置がなされたがただれた皮膚や爪がすぐに剥がれ落ちるほどのひどい状態だった。一体何が彼女をこの状態に追い込んだのか?
病院へ駆けつけていたジェイコブと母の前に医師がやって来た。一通りの処置を終えたものの、まだ命の危険があるとの事。そして医師はこの症状を「スティーブンス・ジョンソン症候群」と診断した。
「スティーブンス・ジョンソン症候群」とは薬やウイルスに対して体の免疫機能が過剰に反応して起こるアレルギー疾患のこと。約100万人に3人の確率で発症し、正確な発症過程はいまだ不明。合併症により命に関わる事もあり、日本では難病指定されている非常に危険な病。
リアンがどの薬によってこのアレルギーを引き起こしたのかはわからない。この状態の原因を突き止めるためこれまで服用した薬を調べることになった。
■リアンを苦しめていた原因が判明
検査の結果、リアンの症状の原因は病院で処方された強めの胃腸薬だと判明。胃腸薬に含まれるラニチジンという胃酸の分泌を抑える成分がアレルギーを引き起こしたとの事だった。
もともとラニチジンという成分は危険なものではない。誰がどんな薬で発症するかわからない「スティーブンス・ジョンソン症候群」。たまたまリアンの体が、ラニチジンによってアレルギー反応を起こしてしまったのだ。
危険な状態だったリアンは翌朝、意識を取り戻し奇跡的に一命を取り留めた。病院の治療もあり3週間で歩けるまでになったリアン。家族や恋人の助けもあり、辛抱強く治療を続けた結果、6週間で退院することが出来た。
地獄のアレルギーから2年。現在のリアンさんは多少水ぶくれの痕が残っている部分もあるが元気に暮らしている(2015年当時)。しかし、薬を服用する時の恐怖は今も消えないとの事。「スティーブンス・ジョンソン症候群」はいつ、何の薬で発症するかわからない恐ろしいアレルギーだった。(2015年11月25日 ON AIR)
▶ 【閲覧注意】『幽遊白書』鬼才・冨樫義博だから生み出せた“ゲスすぎる敵キャラ”の所業
▶ LINEのアイコンの色がいつの間にか "微妙に"変わっていた!? 皆さまは気づいてましたか?
▶ 父の肩を揉む息子。年を追うごとに会話は悲痛なものになっていき…胸が熱くなる涙腺崩壊話3選