■彼の適当さにうんざり
2LDKの部屋で、同い年の彼と一緒に住んで半年たらずのユウミさん(32歳)。つきあって2年たったところでお互いに賃貸住宅の更新があり、話し合って同棲を始めたのだという。
「古い建物で駅からも少し遠いけど、広くて家賃が安かったんです。お互いに自分の部屋がないと逃げ場がないから2LDKは必須でした」
偶然、ふたりとも在宅で仕事をするようになったので、2LDKでよかったと話したという。それぞれ自室にこもってテレワークの日々が続いた。
「私は朝7時には起きて、きちんと顔を洗って身支度をすませ、朝食をとって8時半から仕事に入ります。でも彼は9時始業なのに9時まで寝てる。あるとき仕事をしているところがちょっと見えたんですが、上だけポロシャツに着替えて下はパジャマのまま。髪もなでつけただけ。びっくりしました。彼は社外の人とは顔が見えないよう、電話で仕事をしているようなのですが、あんないいかげんな格好をしていたら、気持ちが引き締まりませんよね」
せめて着替えたほうがいいし、顔を洗ってすっきりしてから仕事に取り組むべきなのではないかと彼女は忠告した。ところが彼は「いいんだよ」と聞く耳をもたない。
3月末から始まったこの生活だが、4月の末には彼の生活は昼夜逆転に近くなった。
「どうもゲームにはまったみたいで、朝までやってるんですよ。それで朝、1回リモートで挨拶して、昼寝していることもよくあるんですよね。けっこう昼間、彼の電話が鳴っています」
社会人としてどうよ、と何度も彼に言ったとユウミさんは暗い声になった。
■向上心がなさすぎる
リモートだろうがなんだろうが仕事は仕事。昨日より今日、今日より明日とスキルも気持ちも向上していかなければいけないと、彼女は思っている。彼女は同期の中でも出世頭らしいが、そうやって自分に厳しくしてきたから今があるのだ。
「ところが彼にはそういう面がほとんどないんですよね。こういう状態で彼の仕事ぶりを見る機会があったから初めてわかったことです。それまでは彼、けっこう自分は仕事ができるというようなことを言っていたんです。でもちょっと様子を見れば、仕事ができる人かどうかわかります」
彼への敬意が一気に醒めていった。家事は以前と同様、それなりにやってくれているが、ユウミさんが男性に求めるのは「家事能力より、仕事の能力。仕事で輝けない男には魅力を感じない」のだという。
「以前、あなた自身が仕事について言っていたことと、実際に仕事をしているあなたとは別人みたいだねと言ってやったことがあるんです。そうしたら彼、へらへらしながら『こんな感じでデキる男なんだから、かっこいいだろ』って。だから前に会ったことのある彼の仲良しの同僚にメッセージしてみたんですよ。彼、昼寝することもあるし、仕事で迷惑かけてませんかって。心配だからと。そうしたら同僚が『彼は宴会部長なんで(笑)』という返事が。ショックでした」
それでも同じ会社にいるわけではないから、本当のところはわからないのではないかと思うが、少なくともユウミさんが理想とする「仕事がデキる男」とはかけ離れているようだ。
「今後どうするかは、これからゆっくり答えが出てくると思いますが、まあ、同棲してよかったのか悪かったのか……。朝までゲームに必死な彼の姿は見たくなかったですね」
彼女の声にかすかに嫌悪感がにじむ。こうなると女性の情熱はどんどん冷えていくものだ。彼はユウミさんの自分に対する気持ちを、また盛り上げることができるのだろうか。