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昨今のAI的カウンセリングと比べると際立つ、北方謙三「ソープへ行け!」の奥深さ




ナリナリドットコムによると、8月12日に放送された、日本が浮かれまくっていたバブル時代を特集したバラエティ番組『教師役の陣内孝則が推定70万の一軒家でひとり暮らしをしていた時代……とマツコ』(日本テレビ系)で、「人生相談界のエポックメイキング」として知る人ぞ知る、あの『試みの地平線』が取り上げられた……らしい。



 



念のため解説しよう。『試みの地平線』とは、やはりバブル期に一世を風靡した若年男子向けマニュアル総合誌『Hot-Dog PRESS』で、作家の北方謙三氏が、恋愛・仕事・人間関係・進路・自分探し……ほか、さまざまな若者たちの悩みをハードボイルドに一刀両断する体裁で、1986年から2002年の長きにわたって連載された、人気コーナーであった。



 



私もそのころ、Hot-Dog PRESSの、おもに恋愛&SEXマニュアルを担当していたんだが、どこかの素性もわからないおっさんを無理やり引っ張ってきて、いつも巻頭にあった『試みの地平線』とまったく同じライティングで(引っ張ってきたおっさんを)撮影したモノクロ写真までわざわざ用意し、巻末でそのパロディページを作成したこともある。パロディの基となる北方先生のキャラがやおら勃ち……いや、立ちまくっていたおかげで、それなりの好評を博した渾身の出来だった……と記憶する。



 



で、この『試みの地平線』の、もはや代名詞的金言として今でも語り継がれている北方先生の決め台詞が「ソープへ行け!」だ。



元々は、童貞の男の子からの「女の子を好きになった。初体験をスムーズに済ませるにはどうすればいいか」といった悩みを受けての(比較的)真っ当な回答だった……とも聞くが、そして、北方先生自身は、とあるインタビューで「じつは連載内では4回しか『ソープへ行け!』とは言っていない」と弁明しているが(※一方で、2001年の3月26日時点で計59回言っていた、とのデータもある)、いずれにせよ「ソープ」なるワードの破壊力があまりに凄まじすぎるゆえか、「カノジョが浮気しているかどうかが心配で、夜も眠れません」→「ソープへ行け!」、「これまでの人生をやり直したい…」→「ソープへ行け!」、「社内の上司からイジメに合っています」→「ソープへ行け!」……と、なんでもかんでもソープランドで解決してしまっていた印象は拭えない。



 



ただ、回答が多岐多様化しつつある昨今の人生相談界において、すべての結論を(強引に)「ソープへ行け!」へと落とし込む帰納法的な発想は、むしろ貴重だったりするのかもしれない。



 



たとえば、「カノジョができない」と悩んでいる男がいたとする。その原因を「お金がない」「運動神経が鈍い」「極度の対人恐怖症」「外見が冴えない」「ファッションセンスに問題あり」「性格に難あり」「職場が男オンリー」……などに分割し、該当する要素ごとに細かく“正解”を見いだす、いわばフローチャート式な手法が最新の21世紀型人生相談スタイルである。だが、それは根本を辿れば、すなわちAIのアルゴリズムと同じ思考回路であり、だったらいっそ人工知能に悩みを打ち明けたほうがデータも豊富で、より高い精度の解決の糸口を得られるのではなかろうか。

 



対する、「カノジョができない」→「ソープへ行け!」とのややこしいプロセスを一切すっ飛ばした清々しいまでの叱咤激励──一見、「なに言ってるんだ、このオヤジは?」みたいなピント外れ感は否めないが、よくよく熟考すれば「ソープに行って、セックスを背景にするコンプレックスを払拭する」「ソープに行って、女性との接し方を学ぶ」「ソープに行って、ソープ嬢をナンパする」……と、案外的を射た“神のお告げ”であるような雰囲気もしなくはない。



 



もし、親愛なるcitrus読者諸兄が、恋愛にかぎらず、なにか深刻な悩みを抱えているなら、ネット上に氾濫する毒にも薬にもならない“なんちゃってカウンセラー”の戯れ言に目を通したり、高いお金を払って占い師を頼ったりする前に、とりあえずは「ソープに行け!」を起点とし、そこから溯って現在の自分を見つめ直してみてはいかがだろう?

 


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