家事に育児に仕事にと女性たちはフル稼働している現在、そんな妻を見ていると「疲れちゃう」という男性がいる。デキる妻をもつ夫を羨ましいと思う向きもあるかもしれないが、夫婦になると意外とキツいのかもしれない。
■無言の圧力
「うちの妻、本当にデキる人なんですよ。仕事でも大抜擢されて最年少役員になってるし、子どものめんどうも完璧。担任の先生ともよく連絡をとりあってる。家事もそう。いつ帰っても家はきれいだし、おいしい料理も作ってくれる」
浮かない顔でそう言うのはミノルさん(45歳)。結婚して15年、ひとり娘は中学生だ。妻の写真を見せてもらったが、目鼻立ちの整った美人である。自慢の妻なのだろう。と思いきや、彼は急に愚痴り始めた。
「僕はどちらかというとだらしないほうで、週末は家でだらだら新聞や本を読んでいるのが大好き。でも妻は平日も週末もフル稼働。週末はせっせと作り置きのおかずを作ったり、仕事に役立つセミナーに出かけたりしている。もちろん娘と一緒に映画だミュージカルだと文化活動も(笑)。なにもしない僕に文句は言わないんですが、ときどきだらだらしている僕に『それがあなたのしたいことなんだよね』と妙な念押しをしてくるんです。それが圧力なんですよね」
デキる妻に負い目を感じてはいるが、ミノルさんはアクティブにはなれない。むしろ、妻が一緒にだらだらしてくれたら楽しいのになと感じているという。
「逆ギレだと思われるかもしれないけど、妻によって僕は自己評価が下がってしまう。そういう面はありますね」
逆ギレである。
■気持ちが休まらない
もう少し妻に寄り添っている男性もいる。マサユキさん(46歳)だ。大学時代の同級生と27歳のときに結婚。妻は33歳で起業した。なかなか子どもができなかったので妻は仕事に全力を傾けていたのだが、その後、35歳で妊娠、36歳で出産した。
「子どもがいながらよくやったなあと思います。そういう意味では妻のことはとても尊敬しているし、僕にできることがあれば何でも協力はしてきました」
会社を少しずつ大きくしながら、妻は育児と家事も手抜きせずにがんばってきた。日頃はどちらかが6時には帰って夕飯を準備するのだが、たまたまふたりとも遅くなる日がある。マサユキさんは、「ピザでもとろうよ」と言うのだが、妻は絶対にそれをよしとしない。
「手作りにこだわるのはいいけど、たまには手抜きしてもいいじゃないですか。それを嫌がるのは頑固すぎると僕は思いますね。そう言うと怒るから言わないけど」
深夜、マサユキさんが目覚めると、妻がアイロンをかけたり部屋の片づけをしていたりすることもある。
「それより睡眠をとるほうが大事だろうと思うんだけど。いつでもきれいになっている部屋って僕はあまり好きじゃないんですよね。少しくらいきたなくても、家族でくつろげる時間があればそれがいちばんいいと思ってる。そのためにはみんなが健康でいるほうが重要。妻は睡眠不足と過労が積み重なって、ときどき会社近くのクリニックで点滴を受けたりしているらしいんですよ。まずは自分の体を考えてほしいですね」
優先順位がマサユキさんのそれと微妙に違うのだという。だからときどき、「この人とは価値観が違う」と少し冷めた気持ちになることもある。
「もちろん、どこから見ても完璧な妻に文句を言う気はさらさらないんですが、一緒にいると僕も気持ちが休まらない。だから僕はときどき息抜きしていますけどね」
妻にもそんな息抜きタイムがあればいいのだけど、とマサユキさんは心配そうに言った。