各種国語辞典が「お疲れさま」は目上に(も)使うと記す中、『新明解』(旧版)は「目上の人には用いない」とあり、異例です。このことも記しておきます。昔の語感で説明しているのかもしれません。現在、「お疲れさま」を目上に用いてOKという辞書は多く、この用法を不可とするのはやはり酷でしょう。 pic.twitter.com/sZhEWU4iOB
—飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) 2019年5月6日
先日タレントの山田優が、平成天皇の退位に際し「天皇皇后両陛下お疲れ様でした」とツイートしたことで批判を浴びました。 天皇陛下に対して「お疲れ様」という言葉が失礼だという意見が多いようですが、 現在、「お疲れさま」を目上に用いてOKという辞書は多く、目上の人に対しては「お疲れ様です」、目下に対しては「ご苦労様」とするのが一般的な認識にもなっています。では「お疲れ様」の使い方の正解は? ビジネスマナー・話し方・敬語講師である井上明美さんにお話をうかがいました。
文化庁が定期的に行っている「国語に関する世論調査」(平成17年度)では、
(1)自分より職階が上の人に「お疲れ様(でした)」を使う人が69.2%、「ご苦労様(でした)」を使う人が15.1%。
(2)自分より職階が下の人に「お疲れ様(でした)」を使う人が53.4%、「ご苦労様(でした)」を使う人が36.1%
という結果が出ています。
まず「ご苦労様」を目上の人に用いるのは避けた方がよいのはなぜなのでしょうか?
「ご苦労様」が、目上の人に用いるのは避けたほうがよいと言われるのは、目上の人が目下の人を労う(ねぎらう)意味をもつためです。
もうひとつは「ご苦労様」のみで表現しようとするから、誤解を受けるようにも感じます。たとえば「そんなご苦労がおありになったとはちっとも存じませんでした」と言えば、「おありになる」と合わせて用いることで丁寧さや敬意も増します。ですから、前後の言葉や使い方、またとらえ方の個人差もあるでしょう。
では、「お疲れ様」のほうはどうでしょうか。井上さんによると、「お疲れ様」は、たしかに辞書の解説でも、同僚や目上の人に対しても使うと記されているのだとか。
「お疲れ様」を目上の人にあいさつ語としては用いることに問題はありません。
ひとつ注意するならば、目上の人へのあいさつ言葉として用いるなら、単に「お疲れ様」よりも「お疲れ様でございました」とするほうが丁寧度は増します。
さらに、御礼や感謝の気持ちを述べたいのであれば、きちんと御礼の言葉とともに用いる、言葉を加えるほうがより御礼や感謝の気持ちが強まるという井上さん。
「お疲れになりませんでしたか」「お疲れでいらっしゃる」と言えば尊敬語の表現になりますし、「どんなにかお疲れでいらっしゃることと(ご心労のほど)拝察いたします(申し上げます)。……お陰様で……感謝の気持ちで一杯でございます」などとすれば、御礼や感謝の気持ちもより強まりますし、丁寧度や敬意も増します。
目上の人に対して「お疲れ様でした」を使用してはいけないとなると、代わりになる適当なあいさつ言葉もなかなかなく、困ってしまうことも多いものですが、井上さんによると「相手と場面によっての言葉の工夫や調和、心くばりも大切な要素」とのこと。どんな言葉であっても、単にルールや形式だけにとらわれず、相手への気持ちを込めて使いたいものですね。