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「中学生のころ、母に見られて…」40歳から嗜好が偏りだした男の闇【昏いものを抱えた人たち】


ノンフィクションライター亀山早苗は、多くの「昏(くら)いものを抱えた人」に出会ってきた。自分では如何ともしがたい力に抗うため、世の中に折り合いをつけていくため彼らが選んだ行動とは……。



ふとしたことがきっかけで自分の欲望に目覚めることがある。だが、それが叶えられるとは限らないから、人生はせつない。



 





 



「あなたのセクシャルな嗜好は何ですか」と聞かれて、即答できる人は少ないのかもしれない。リョウタさん(45歳)も、自分は「ごく普通」だと思っていた。ところが40歳を過ぎてから嗜好が偏りだし、それによって自身が疲弊してきたと話してくれた。



 



 



■レスになってから欲望が偏って



 



「欲求はあるんだけど、それが女性の欲するものと違う場合、どうしたらいいんでしょうね」



 



のっけからリョウタさんはつらそうにつぶやいた。



 



今、彼が望むのは「自分で“シゴいて”、フィニッシュするところを愛する人に見てほしい」ということ。16年前に結婚した妻とは、子どもふたりを授かったあとも仲良く暮らしているが、自分の欲望を開示はできないという。



 



「うちの妻はよくも悪くも、とても常識的な人なんです。以前、ちらっとSMの話をしただけで『そういうのやめて。気持ち悪いから』と言ったくらい」



 



ごく普通の恋愛をして結婚したが、下の子が生まれた10年前から妻とは「盆暮れSEX」となった。年に数回すればいいほうだったが、妻は性欲がないのか、「もうしなくてもいいじゃない」と言っている。そんなわけでここ数年、妻とはまったく接触していない。



 



「妻にそうやって拒絶されてからはバスルームでシゴくようになりました。ただ、刺激がないんですよね。誰かに見られたいという欲求が募っていき、誰かに罵倒されながらシゴいたらどんなに楽しいだろうと思うようになりました」



 



5年前、学生時代の同級生と再会、お互いに納得の上でセフレとしてつきあっていたことがある。その彼女に自分の欲望を話してみた。



 



「彼女はいいよ、やってみようと言ってくれたんです。実際、彼女が見ている前でやってみたら、恥ずかしいけど興奮して。『ひとりでそんなことしてバカじゃないの!』と彼女が蔑んだ目で見てくれたとき、興奮が絶頂に達してイキました」



 



ただ、回数が重なると彼女はだんだんイヤな顔をするようになった。それはそうだろう、彼女の欲望は置いてきぼりなのだから。彼女は「これじゃセフレとは言えない」という言葉を投げつけて去って行った。



 



 



■何を求めているのだろうか



 



女性が好きな普通の男だと思っていたのに、なぜ自分の嗜好は偏ってしまったのか。シゴいているところを見てもらうと、なぜあれほど安心してイケるのか。



 



「そういえば、と思い出したんです。僕が中学生のころ、母親にシゴいているところを見られたことがあるんですよ。あわてて隠そうとしたけど、どうにもならなくて、母の見ている前で発射してしまった。ちらっと母親の顔を見たら、そのとき彼女の顔が“女”になっていたんです。もしかしたら記憶を適当に上書きしているだけかもしれないけど」



 



その直後、母は脳卒中で倒れて還らぬ人となった。その一連の記憶が、母の亡くなった年齢近くになって蘇ってきたのかもしれないと彼は分析している。



 



今も彼の理想の女性は母なのか、あるいは母への大きな負い目を抱えているのか。いずれにしても、彼はこの先も自分の欲求を追求したいと思っているようだ。


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