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米津玄師は“平成の井上陽水”!?「鬱ミュージックの悲しき天才」が紅白に出場する理由


ドラマ『アンナチュラル』(TBS系)の主題歌となった『Lemon』が200万ダウンロード、YouTubeで2億4千万回再生され、人気を不動のものにした感のある米津玄師(よねづ・けんし)さん。



 



『第69回NHK紅白歌合戦』へのサプライズ初出場も決まり、テレビや雑誌で名前を見る機会が増えた。しかしアラフォー世代だと米津さんをあまりご存知ない方が多いのではないだろうか。本稿では、“昭和の鬱ミュージックレジェンド”井上陽水さんとの比較を通して、米津さんの魅力に迫りたい。



 



 



■「ゲス極」よりも聴きやすい



 



米津玄師 official site「REISSUE RECORDS」より


まず、米津さんのプロフィールを軽くおさらいする。



 



徳島市出身の27歳。ほとんどテレビに出ず、若者やサブカル、音楽好きを狙ったプロモーションをしてきたからか、ファンの多くは10代、20代の若者だ。ちなみに、けっして二枚目ではないが特徴のある塩顔なので、年長女性なら可愛く感じてしまうかもしれない。



 



とりあえずどこから聴こうかな…と迷っている方におススメなのは『アイネクライネ』(2014年)と『メトロノーム』(2015年)。紅白歌合戦に同じく初出場するDAOKOさんに提供した『打上花火』もいい。



 





 



『Lemon』もそうだが、米津音楽の真骨頂はミディアムテンポの楽曲だ。時代なりに新鮮なんだけど懐かしさもあるメロディーと、ほどよく内省的でキュンとくる歌詞が相まって、キャッチ―なポップスに仕上がっている。



 



好き嫌いは別にして、同じく2010年代の若者的な心情を表現した「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音さんの楽曲のような、とげとげしさや嫌味がない。中高年世代でも安心して聴ける、歌謡曲的な要素が備わっているのだ。



 



 



■他者の愛を求めているのに、他者と解けあえない…



 



過去のインタビューで、先天的な高機能性自閉症であると明かした米津さん。うつ病を患ったこともあるらしい。



 



自閉症の人は他者との距離感が取りづらく、世間との溝を感じやすい傾向にあるようだが、それらはアーティスト米津玄師としての世界観を育むうえでむしろ重要な要素だったのだろう。



 



そもそも芸術とはドロドロした負の感情の沼の中から咲く花のようなもの。一般の人が抱えきれないほどのコンプレックス、無常観、陶酔、孤独、羞恥心……さまざまな負の感情が米津さんの魅力を形作っているのだ。



 



そういう点で米津さんの魅力は井上陽水さんに通じるところがあるように感じる。たとえば、以下2つの歌詞。



 



「あなたにあたしの思いが全部伝わってほしいのに 誰にも言えない秘密があって嘘をついてしまうのだ」(米津玄師『アイネクライネ』)


 



「小さくひよわな独楽がある まわれよ止まるないつまでも 止まった時愛も終わるよ」(井上陽水『二色の独楽』)


 



すなわち、米津さんも陽水さんも愛を渇望しているのに自己という殻が強すぎて他者と解けあえない。それゆえに唄う……いや、唄わざるを得ない悲しき天才なのだ。ちょっと褒めすぎかもしれないけど。



 



陽水さんが「恥ずかしいから」と断った(編注:1993年の第44回)紅白に出てしまうあたりはびっくりしたが、故郷・徳島からの中継と聞いて納得。



 



司会者や共演者にいじられながらの、あの独特の世界観にすり寄っていくことはとてもできないタイプだろう。ともあれ彼のミュージシャン人生はまだまだ始まったばかり。今後の作品に期待したい。


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