このごろ、めっきり東スポを140円出してキヨスクやコンビニで購入しなくなった。
最近の東スポはややパワー不足で面白くない、ここcitrusのネタになるクラスの記事が減ってしまった(気がする)のもあるが、別に買わなくても紙に印刷されたニュースの大半が東スポWeb発信のかたちで、ネット上でもタダで読めるから……ってほうが大きいと思う。
しかし! そんな私の判断はどうやら間違っていたようだ。ネット上にまで流れない(漏れない)、もしくはネット上に流出してもYahoo!ニュースのトップにはあがらない発掘困難な“秀作”は、やはり新聞上のみにしかなかったのである。
終面に近い中開きページで『東スポ選出(20)18年B級ニュース〜おバカ事件編〜』なるタイトルの囲みコラムを見つけた。
米国と北朝鮮の首脳会談が実現したり、日産のトップが逮捕されたり、今年も衝撃的な出来事があった。一方で、社会にほとんど影響を与えないトホホなニュースも多かった。
……という激しい落差のリード文を皮切りに、おそらくどこも扱わない、おそらく東スポだけがそれなりの労力と紙面を割いてスクープした超B級なニュースを「バカ編」と「エロ編」に分けて各5つずつ、厳選した内容となっている。
身長180センチの男が女装をして札幌市にある銭湯の女湯に侵入し、そこの従業員が「のぞきじゃなく、ただ女性として女湯に入りたかったんだと思う」と多少の共感を含むコメントを残した事件から、タクシーの無賃乗車を常習とする偽ブルゾン(ちえみ)まで(ちなみに、犯人はまだ逮捕されていない。つまり、タクシードライバーの間に広がった、ただの噂を記事にしたということだ)……いかにもソソる“事件”のオン・パレードだが、圧倒的に「珍」なのは、今回1位に輝いたこんな“事件”──『盗撮魔と女装男の奇跡の出会い』であった。
札幌市のスーパーの女子トイレにデジカメを持ち込んだ盗撮男(51)が捕まった。警察が実況見分を始めようとすると、別の個室からカツラとスカートの女装男(57)が現れたから、さぁ大変。
(中略)2人が知人同士なら「女装男の排せつ行為を盗撮したい変態男」と認められ、2人が赤の他人なら「不覚にも女装男を盗撮してしまった情けない男」となる。
警察は店側に「2人が居合わせたのは偶然と話している」と説明。神のイタズラが2人を引き寄せたのか。映画化を強く願う。
素晴らしい! 私はこの手の読めば読むほどスルメのように味が染み出てくる、一読ではなにがなんだかその関係性が混乱してよくわからないパラドキシカルな記事が大好物だったりする。たしかに「奇跡の出会い」としか表現のしようがない神がかった“事件”ではある。あるけど、さすがに映画化までは強く望まない……というよりは、どんな映画になるのかが想像だにできない。この盗撮魔と女装男の顛末を、もし2時間弱もの長い尺で描ききることができらなら、その映画監督はまさに天才なのではなかろうか。あと「さぁ大変」って、新聞で使う言葉じゃないだろ(笑)。
……とはいえ、米国と北朝鮮の首脳会談が実現したり、日産のトップが逮捕されたり、安室奈美恵が引退したり、ソフトバンクが下克上を制して日本一になったり……といった出来事に匹敵する、じつに印象深いニュースであることに間違いはない。「みんなが忘れても、東スポはいつまでも覚えています!」と記者はリード文を〆ているが、大丈夫! 私だっていつまでも覚えていますから……たぶん?