「アレルギーを発症してから、大好きだった牛肉と乳製品が一切食べられなくなりました」
私の所属している医療ガバナンス研究所の男性は、元々甲殻類アレルギーの持ち主。大学生だったある日、牛肉や小麦、乳製品のアレルギーであることも判明しました。大好きな焼肉を食べに行っても、豚肉と鳥肉と野菜のみ。その日以降、アレルギーの原因となる食品は一切食べていないといいます。
そもそも、食物アレルギーとは一体どんなものなのでしょうか。わかりやすくいうと特定の食物に含まれているアレルギーの原因となるアレルゲンに、元々私たちの体に害となる物質を排除するための免疫機能が過剰に反応してしまい、身体に様々な症状を引き起こしてしまう現象です。
今、世界中でアレルギー疾患の罹患者数が急増中です。世界アレルギー機構(WAO)によると世界中で2億2500万人が食物アレルギーに苦しんでいます。これは乳幼児に多かったものが、大人になってから発症するケースが増えていることが要因です。なぜ大人に食物アレルギーが増えているのか、残念ながらまだはっきりとは解明されていません。一般的にアレルギーは社会が豊かになるにつれて増加していく傾向があるので、タバコの煙による屋内・屋外汚染やバイオマス燃料による大気汚染、気候変動、気温の変化、移住などが原因という説が有力です。
■大人が注意するべき3つの食物アレルギー
それでは大人こそ注意が必要なアレルギーと食べ物についてご紹介します。1つ目は、「即時型食物アレルギー」です。原因となる食物を摂取した直後から30分間、長くても2時間以内に、「蕁麻疹ができてきた、喉がイガイガしている、息が苦しい」といった症状が出てきます。また最悪の場合には、血圧の低下や意識障害などをきたすアナフィラキシーショックを引き起こし、命に危険が及ぶこともあります。食物アレルギー診療ガイドライン2016ダイジェスト版によると、20歳以上の新規発症の原因食物として最も多いのは小麦(34%)、甲殻類(22%)、そば(10%)、果物類・魚類(8%)と続きます。年齢によって原因となる食物が異なり、原因となる食物の種類は多岐に渡るので注意が必要です。
2つ目は、「口腔アレルギー症候群」です。生の果物や野菜、大豆製品を食べた後に、口腔内や唇、喉の奥にかゆみや腫れ、違和感を覚えるものです。花粉症やゴムに含まれるラテックスアレルギーとの関連が指摘されています。果物だとリンゴやモモ、メロン、スイカ、マンゴーが当てはまります。また野菜だとトマトやジャガイモ、キュウリ、大豆、ピーナッツなどに注意が必要です。
3つ目は、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」です。これは特定の食べ物を摂取するだけでは症状は生じません。摂取してから数時間以内に、激しい運動をすると、全身のじんましんやむくみ、せき込み、呼吸困難といった症状が現れるのです。中には、複数の食べ物を同時に食べて運動することが原因というケースも報告されています。主な原因食物は、小麦(62%)とエビやカニなどの甲殻類(28%)になっています。しかし、果物や野菜を摂取してから発症したという報告例が増えているので食後の運動には要注意です。
また最近の研究では、原因物質が口からだけではなく、皮膚を通して体内に入ることによっても、免疫機能が働いてしまうこともわかってきました。
食物アレルギーを防ぐために大切なことは原因となる食物が判明したら、摂取しない・接触しない、つまり除去することが最も大切です。食物アレルギーかも?と思ったら、早めに医師に相談してください。