10年後、羽田空港から京葉線、常磐線、東北線、高崎線、埼京線などを結ぶ直通列車が走るんだとか。湾岸側の八潮や京浜島あたりの地下に新しい線路を建設して、羽田空港と既存の首都圏鉄道網を結ぶそうだ。
まさに夢のような壮大プランを、JR東日本はいたってマジで描いている。同社はことし7月、「変革2027」というグループ経営ビジョンのなかで、羽田空港アクセス線構想の推進を記している。
新たな線路をどう設置して、既存の路線をどうつなぐかは、下の計画図をみれば、なんとなくイメージできると思うから、省略しちゃうけど、これもまたすっごい金と労力と時間がかかりそう。
■JR東日本 羽田空港アクセス線構想はこんな感じ
もちろん、この図のような鉄道ネットワークが実現できれば、いままでの羽田空港アクセスの常識が覆るほど、一変する。まさに大変革。乗り換えを必要とする東京モノレールの旅客がガタッと減りそうなぐらい。
この壮大なプランが実現にむけて動き出せば、おそらく、リニア中央新幹線に次ぐ大規模鉄道プロジェクトじゃないか。首都圏の鉄道ネットワークを支えるJR東日本だからこそ、構想できるプランだし、実現にむけて着実に精査しているに違いない。
そこへきて、いちバカライターはこんな妄想を抱いている。大規模な工事なし、都心部から放射状に各地へのびるJR線・私鉄線と連携し、あの東京環状線を大改造する浅はかプランだ。
■JR線・私鉄線との接続駅にとまる環状運転列車
それは、武蔵野線を中心とした東京大環状路線。JR東日本的にいうと「東京メガループ」。この武蔵野線や南武線、京葉線を大改造して空港アクセスの新しいループをつくるという妄想。
羽田空港付近から、南武線、武蔵野線、京葉線と時計回りにぐるっと見ると……。南武線は京急線、東急東横線・目黒線、田園都市線・大井町線、小田急線、京王相模原線などと、武蔵野線は中央線、西武池袋線、東武東上線、埼京線、京浜東北線、埼玉高速鉄道線、東武伊勢崎線、つくばエクスプレス、常磐線、新京成線、北総線、メトロ東西線、東葉高速線、総武線などと、京葉線はメトロ有楽町線、りんかい線と接続している。
こうしたJR線・私鉄線と接続する駅を停車駅とする快速列車を、時計回り・反時計回りともに10分おきに走らせる。
■天空橋駅直下に地下駅新設。最後のアプローチは京急とモノレールに任せる
ただ、南武線、武蔵野線、京葉線の線路をつないで首都圏をぐるっと1周する電車を走らせるには、あと2つの路線が要る。
南武線浜川崎から先は、東海道線支線(貨物線)の線路がつながっている。この東海道支線は、川崎コンビナートをかすめ、地下で多摩川の下を抜け、京急空港線・東京モノレールの天空橋駅の直下、昭和島や大田市場の地下を走って東京港野鳥公園付近で地上へ出る。
地上には東京貨物ターミナル駅があり、その先で東京臨海高速鉄道りんかい線の線路とつながっている。だから、この東海道線支線とりんかい線の2路線を伝って、新木場で京葉線に乗り入れれば、東京メガルームを経由する首都圏ぐるっと1周ループ線ができあがる。
東海道線支線区間で気になるのは、羽田空港直下に線路が走ってないこと。京急空港線・東京モノレール天空橋駅の直下に線路があるから、ここに新駅をつくって、羽田空港へは京急線か東京モノレールへの乗り換えが必要となる。
■首都高と外環道の関係に近い
乗り換えが要るけど、数千億円かけて新線をつくらずに済む。たとえば、川越や坂戸などからの東武東上線ユーザーは、北朝霞(朝霞台)で武蔵野線に乗り換え、羽田空港へとむかうイメージ。
時計回りがトラブルなどで遅延・運転見合わせが発生した場合、逆の反時計回りに乗るか、再び都心方向のJR線・私鉄線に乗って、アクセスを確保する。アクセスルートの多重性(リダンダンシー)という意味でも、東京メガループは存在感を増す。
さらに、南武線や武蔵野線と接続していない私鉄線も、積極的につなげていきたい。たとえば、南武線の稲田堤と京王稲田堤の駅を接近させたり、武蔵野線と京王線、西武新宿線、京成線の交差部分に新駅を設置したり。ここまでくると、首都高と外環道の関係と同じく、都心部の混雑緩和も期待できそう。
この妄想はもはや、JR東日本だけのプロジェクトではなくなってくるか。都心から放射状にのびる私鉄線も巻き込みながら、東京メガループ羽田空港アクセス大作戦を遂行していくことになりそう。
はあ、ひとりで妄想するだけでも、こんなにエネルギーがいるのか。こんな浅はかな想像力にもかかわらず、頭が疲れるんだから、実際にビジョンを立てて具現化へと動き出す鉄道会社はすごい。今回はあらためて、JR東日本の構想に、脱帽・拍手・敬礼・期待する。