お笑いコンビ『オリエンタルラジオ』のボケ担当であり、人気YouTuberとしても活躍中の中田敦彦さん(40)が、1月8日の『サンデージャポン』(TBS系)に出演。共演者である弁護士で元東京高裁判事の細野敦氏から「(自身の)YouTubeチャンネルの登録者数を伸ばす方法」について質問され、以下のようなアドバイスを送っていた。
「(ここ数年)専門的なチャンネルがめちゃくちゃ伸びてて。弁護士チャンネルはニーズがあるので、ヒットしてるチャンネルを完コピしてやっちゃう(のはどうですか?)」
「僕も最初はメンタリスト・DaiGoさんのYouTubeを丸パクリして教育系(のチャンネル)をはじめた」
「(完コピし続けていると)だんだん個性が出てくるので、最初は丸パクリから(はじめましょう)」
一見、身も蓋もない、相談者を突き放すかのごとくに冷淡な物言いだが、じつのところはなかなかに本質を突いたナイスなアドバイスだと、猛烈に共感した。
たとえば、楽器──私だったらドラムをはじめたとき、一番最初にやったのは、そのころ大好きだった “ファーストコール”のセッションドラマー・スティーブガッドの完コピであった。もちろん、まだ初心者だった私がガッドの超絶技巧を100%完コピできるはずもなく……でも、完コピを目指して遮二無二練習を重ねていけば、次第に20%くらいは “それっぽく”なってきて、その「なんとなくスティーブガッドな感じ」が、イコール「ゴメスのドラミング」の “個性”として、低いレベルでこそあれ成立していったのである。
とあるライターの養成講座で講師をしていたときも、「文章が上手になるコツを教えてください」と質問された際、私はいつも
「誰でもいいから、あなたの好きな、もしくは文章が上手いと思う作家やライターの小説やコラムや記事を “読む”だけではなく、そのまま書き写してみましょう」
……と、アドバイスしていた。今でも私は「最近、文章が乱れてきたな……」と自覚した場合は、村上春樹氏の小説やエッセイを本棚から引っ張り出してきて、その美文を数ページ一言一句違(たが)わず(ノートパソコンで)書き写す作業をたまにする。仮に「文体」という “上っ面”のみを丸パクしたところで、私が春樹センセイ本人になれるはずもないからだ。
どこかの高校野球の監督が、
「 “個性”なんて、みっちり基礎を習得したうえで、それでも滲み出てくるもんだろ?」
……みたいなことを言っていたが、まったくもってそのとおりだと思う。
たとえば、モノクロで描かれたドラえもんの上にトレーシングペーパーを敷いて、それをまんまペンでなぞろうとしたとしても、コンマ数ミリの “ズレ”はいくら頑張っても生じてしまうわけであって、その「コンマ数ミリの “ズレ”」こそが “個性”なのである。
みずから能動的に “個性”をアピールしようとしてもロクなことはない。逆に、
「どんなに他人のモノを完コピ=丸パクしようと試みても “個性”は絶対に隠せない」
……と開き直って、前出の “中田語録”を今一度咀嚼し直してみてはいかがだろう?
▶ 「あえて場の空気を読まない」という「空気の読み方」の必要性を考える▶ 最近、にわか流行しつつある新しい婚活スタイル「スパ婚」のメリットとデメリット
▶ 経済学者・成田悠輔氏の「◯+□メガネ」について、あらためて考察する