
日Pの活動資金の一部は、私たち保護者が学校のPTAに納める会費から賄われています。日Pの会費は子ども1人につき年10円。学校のPTAが所属する市区町村や都道府県のP連を通じて納められる仕組みです。つまり、わが子の学校に納めた会費の一部が、巡り巡って日Pの活動費になっている場合があります。
日Pはこれまで、年に1度の「全国研究大会」などを通じて、PTA活動に関する情報共有や研修の場を提供してきました。しかし近年は、元幹部が背任容疑で逮捕されるなど不祥事が相次ぎ、社会的信用が揺らいでいます。会員数も、2022年度の約810万人から、2026年度予算では約460万人を見込むなど、大幅な減少が続いています。
コロナ禍の見直しと不祥事が重なり進んだ「日P離れ」
なぜ、これほどまでに会員が減っているのでしょうか。2022年から2023年に日P会長を務めた金田淳さんは、コロナ禍を契機としたPTA活動自体の見直しに、組織への不信感が重なった結果だと指摘します。「コロナ禍で行事や予算を見直す中、『そもそもPTAは何のためにあるのか』『上部団体であるP連や日Pに会費を払う意味はあるのか』と疑問を抱く単位PTAやP連が増えました。私も会長就任時、必要とされる組織となるために、広報活動の充実や会員約800万人のアンケートシステム構築など『改革10か条』を掲げましたが、改革を望まない一部の役員やOBの影響力が強く、思うように進みませんでした。その後、私は会長を解任されましたが、解任を巡る民事訴訟で、日Pは解任理由に根拠がなかったことを認めています。こうした不透明な組織運営や元幹部の逮捕報道が重なり、保護者の不信感が広がり、日P離れが一気に加速したと見ています」(金田さん、以下同)
金田さんは、日Pと各地のPTAの間で、情報や意見が十分に行き来していないと指摘します。
「日Pの活動実態が一般の保護者に届かず、学校現場の切実な声も本部に上がってこない。各校のPTA本部が、入退会や個人情報の管理、会費の適正処理などで頭を悩ませたときに、相談できる組織であってほしいですね」
全国研究大会は、教育や子育てなどの第一線で活躍する著名人の講演や、学校教育・地域連携の実践事例を学ぶなど、内容は充実しています。一方で、参加者の交通費や宿泊費などがPTA会費から支出されることや、開催地の保護者に運営の負担がかかることなど、費用対効果や運営のあり方を問う声もあります。
筆者自身、日Pの取材や調査を重ねる中で、講演や事例紹介から学ぶだけでなく、現場の悩みを持ち寄り解決策をともに考えることに、もっと力を入れられないかと感じてきました。例えば、役員の負担をどう減らすか。参加者同士で話し合い、その内容を各地に持ち帰り、一般の保護者にも共有する。オンラインも活用しながら、そうした機会を充実させることが、全国でつながる意義を高めるのではないでしょうか。
学校とPTAの関係も、見直したいポイントです。保護者がそれぞれの得意分野を生かして参加することで、学校教育が豊かになる好循環は理想的です。子どもの経験が豊かになり、学校とのつながりも深まるでしょう。しかし現実には、PTAは学校の「第二の財布」と揶揄(やゆ)されるケースが今なお散見されます。学校や行政が担うべき費用や仕事まで、保護者が引き受けていないかを考える必要があります。
「学校現場の予算不足をPTA会費で穴埋めし続けるのではなく、教育に必要な予算措置を行政へ求めていく。現場の保護者の声を束ね、政策提言として届けることも、全国組織が果たすべき本来の役割ではないでしょうか」
加入も活動も「自分の意思」で選ぶ時代へ
日Pの会員減少は、単なる一組織の不祥事にとどまりません。これまで「全員加入が当たり前」「上からの前例に従うのが当たり前」とされてきたピラミッド型の構造そのものが、見直しの時期を迎えているサインでもあります。では、私たち保護者にとって、これからのPTAはどうあるべきでしょうか。
近年、「PTAは入退会が自由な任意団体である」という本来の原則が浸透し、加入の意思を個別に確認する学校が増えています。依然として、本人の意思を確認せず加入扱いにするPTAもありますが、新学期に活動内容や任意加入についての説明書類と「PTA入会申込書」を配付し、保護者が加入するかどうかを自分で選ぶ形が広がっています。
保護者にとっては、活動内容や会費の使い道を知り、納得した上で加入を判断できる機会になります。PTA本部にとっても、「どのような活動をしているのか」「何のために会費が必要なのか」を改めて伝え、理解を得る健全なプロセスといえるでしょう。
もっとも、加入の意思を確認することで会員数が減れば、役員側には「活動費が足りるだろうか」「行事を担う人が集まるだろうか」という不安が生じます。一方、保護者にも仕事や家庭の事情、これまでの形式的な活動への疑問など、それぞれに判断の背景があります。だからこそ、単に加入への理解を求めるだけでなく、活動内容や参加の仕組みそのものを身の丈に合ったサイズへ再構築することが不可欠です。
その一つが、役員の数を減らしたり、委員会を廃止したりして、組織をシンプルにする動きです。運動会の運営サポートや地域のパトロールなど、活動ごとに参加者を募る「エントリー制」を取り入れるPTAもあります。会員制度と会費徴収を廃止し、数人のコアメンバーが本部機能を担いながら、取り組みごとに協力を呼びかけるスタイルもあります。
本部役員が全ての活動を抱え込まず、保護者も自分の都合や関心に合わせて関われる。そうした仕組みは、双方の負担を大きく減らします。ただし、参加希望者が集まらない行事を、少数の役員が無理をして引き受け続けては本末転倒です。「前年から続いているから」という前提を一度外し、活動の目的、実施頻度、代替案の有無まで根本から見直す勇気が求められます。
本部が現状の課題や悩みを率直に共有し、保護者からも「このイベントは子どもが喜ぶので手伝いたい」「平日昼の会議をオンラインにしてくれれば参加できる」といった意見を寄せ合う。そうした対話の積み重ねの中に、持続可能なPTAのヒントがあるのではないでしょうか。
会員数が多いことが、「よいPTA」であることを意味するわけではない、と筆者は思います。会員が減ったとしても、学校と保護者が子どもたちのために手を取り合う本質的な価値が損なわれるわけではありません。
学校の枠を越え、知恵を共有する「横のつながり」
こうした見直しを、一つの学校のPTAだけでゼロから進めるには限界もあります。上意下達のピラミッド型組織のあり方が問われる中で、今求められているのは、ほかの地域の経験や工夫を知り、相談できる「フラットな横のつながり」です。金田さんは現在、新たな枠組み「全国PTAネットワーク会議」でコーディネーターを務めています。日Pや県P連への加入・非加入の垣根を超えてフラットにつながり、情報を共有する場です。これからのPTA組織について、ともに話し合い、考える初期参加メンバーを募集しています。

この会では、都道府県や市区町村などのP連が、地域や既存の所属関係を越えてつながり、運営上の悩みや実践をオンライン上で共有しています。各地域の成り立ちや自主性を大切にしながら、ほかの地域の工夫や話し合いで得た知見を、それぞれのPTA運営に生かす場を目指しています。
「文部科学省にも協力を求めながら、任意加入や個人情報の扱いなどPTAが抱える課題に取り組んでいきたいんです。現場の皆さんが話し合い、『自分たちも取り組んでみよう』と思えるきっかけをつくりたいと考えています」

「どんなPTAなら関わりたい?」から始めよう
日Pの会員激減が示しているのは、「前例通りに続けるピラミッド型PTA」が、見直しを迫られているということです。全国組織の変化を機に目を向けたいのは、目の前にある「わが子の通う学校のPTA」が、子どもたちや保護者にとって本当に意味のある場になっているかどうかです。
活動の目的や会費の使い道がわかること。疑問や意見を伝えられること。それぞれの事情に合った関わり方を選べること。そんなPTAであれば、参加への気持ちも変わってくるかもしれません。
「どんなPTAなら関わりたいと思えるか」。まずは、保護者同士や学校と、そんな話をしてみる。これからのPTAを考える出発点は、私たちの身近なところにあるのではないでしょうか。
