京都観光といえば、清水寺や伏見稲荷大社のような寺社めぐりを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。もちろんそれも京都の魅力ですが、実は美術館とレトロ建築が徒歩圏に集まる、もうひとつの見どころたっぷりのエリアがあります。それが平安神宮の門前に広がる岡崎です。
帝冠様式の美術館から明治の煉瓦建築、戦後を代表するモダニズム建築まで、時代の異なる名建築を半日でぐるりと巡ることができるのは、京都広しといえどもこのエリアならではです。徒歩圏内に複数の館が集まっているので、電車での移動を挟まずに半日もあれば完結できるのも岡崎ならではの魅力です。
この記事では、岡崎エリアでアートと建築をたっぷり楽しめるさんぽコースをご紹介します。

京都・岡崎が「アート散歩」にぴったりな3つの理由
平安神宮の門前町として明治時代に整備された、京都でも珍しい文化施設の集積エリアであること。もともと平安神宮の火除け地だった土地に、図書館や美術館が次々と建てられていった歴史があります。
美術館・図書館・劇場が徒歩数分圏内に並び、寺社中心の観光とはひと味違う楽しみ方ができること。明治から昭和、令和と時代の異なる建築様式を見比べながら歩くだけでも十分に楽しめます。
琵琶湖疏水沿いの散策路があり、水辺の風景と煉瓦造りの産業遺産を同時に味わえること。春は桜、秋は紅葉と、季節ごとの表情も魅力で、混雑しがちな寺社エリアと違って比較的ゆったりと歩けるのも嬉しいポイントです。
京都・岡崎さんぽモデルコース|美術館とレトロ建築めぐり
午前:京都市京セラ美術館

Photo by PIXTA
地下鉄東西線東山駅から徒歩約10分、岡崎公園内にあり、コースの起点にふさわしい存在です。1933年に開館した、日本に現存する公立美術館としては最も古い建築で、和と洋が融合した帝冠様式を代表する外観が見どころです。2020年のリニューアルでは創建当時の意匠を最大限に保存しながら、建築家の青木淳氏と西澤徹夫氏による現代的なデザインが加えられました。
館内に一歩入ると、かつて大陳列室だった中央ホールが吹き抜けの真っ白な空間として広がり、大きならせん階段と高い天井が印象的です。階段を上った先の天井にはノスタルジックなステンドグラスが広がり、光の加減で表情を変える様子も見逃せません。館内から望める日本庭園は無料で入ることができ、開館前後の散策や休憩にもおすすめです。館内にはミュージアムショップもあり、展覧会グッズや京都の伝統文化にちなんだオリジナル商品も揃っているので、旅の記念に立ち寄ってみるのも良いでしょう。
https://kyotocity-kyocera.museum/
午前:京都国立近代美術館
京セラ美術館のすぐ向かいに位置し、歩いてすぐ移動できる距離にあります。1963年に国立近代美術館京都分館として発足し、1986年に完成した現在の建物は建築家・槇文彦の設計によるもので、直線的で洗練されたモダン建築として知られています。
京都画壇の日本画や関西洋画壇の作品を中心に、陶芸や染織などの工芸品まで幅広く所蔵しているのが特徴で、コレクションは年に数回入れ替えられるため、訪れるたびに新しい発見があります。館内には平安神宮の大鳥居と東山の山並みを一望できる休憩スペースもあり、展示鑑賞の合間にひと息つくのにぴったりです。企画展の内容によっては建築やデザイン分野を扱うこともあり、アート好きなら見逃せない一館です。
https://www.momak.go.jp/
昼過ぎ:京都府立図書館

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京セラ美術館から徒歩数分、京都市勧業館みやこめっせの東隣にあります。1909年に「関西建築界の父」と称される建築家・武田五一の設計で建てられた煉瓦造り3階建ての建物で、当時はシンプルな曲線と直線が生み出す上品なデザインが、ウィーン・セセッションの潮流を取り入れたものとして注目を集めました。
2001年に新館へと建て替えられた際にも、旧館の正面部分のファサードはそのまま保存され、明治の面影を今に伝えています。図書館としての機能はもちろん、館内には近隣美術館の図録を集めたコーナーもあり、アート散歩の途中に立ち寄って情報収集をするのにも便利です。外観を眺めるだけでも十分に見応えのあるスポットです。
https://www.library.pref.kyoto.jp/
昼過ぎ:ロームシアター京都
京都府立図書館から岡崎公園を挟んで徒歩数分の距離にあります。1960年に京都会館として誕生した建物で、設計を手がけたのは、東京文化会館でも知られる建築家・前川國男です。庇の下にアールを付けた屋根の形状や、水平線を強調した意匠が周囲の景観と調和するよう考えられており、竣工と同年に日本建築学会賞を受賞するなど、モダニズム建築の傑作として高く評価されています。
建物全体はL字型に配置され、中庭が平安神宮前の広場と一体感を生み出しているのも特徴です。老朽化に伴う改修を経て、2016年にロームシアター京都として生まれ変わり、1階には書店やカフェも入っています。開放的なピロティ空間は、気軽に建築を眺めながらひと休みできる居心地の良い場所です。
https://rohmtheatrekyoto.jp/
午後:細見美術館
地下鉄東西線東山駅から徒歩約10分、岡崎公園から疏水を挟んだ西側にあります。1998年に開館した私設美術館で、京の町屋の構造をイメージして設計された建物は、3階から地下2階まで続く吹き抜けが特徴です。階段を上り下りしながら展示室を巡る、少し迷宮的な造りも見どころのひとつで、入口から中の様子がうかがえない外観は、思わず入ってみたくなる不思議な魅力を放っています。
細見家三代にわたって集められた琳派や伊藤若冲などの日本美術コレクションは、重要文化財を含む約1,000点にのぼり、年に数回テーマを変えて展示されます。鑑賞のあとは、最上階にある茶室「古香庵」(※立礼席の営業日時要確認) で東山の山並みを眺めながら、季節の生菓子と薄茶を味わうひとときも贅沢です。他の施設と比べて規模がこじんまりとしているぶん、じっくりと作品と向き合える落ち着いた雰囲気も魅力のひとつです。
https://www.emuseum.or.jp/
夕方:琵琶湖疏水記念館・蹴上インクライン

Photo by PIXTA
細見美術館から南へ歩いて15分ほど、地下鉄東西線蹴上駅からも徒歩約3分の場所にあります。琵琶湖疏水記念館は、疏水竣工100周年を記念して1989年に開館した施設で、明治維新後に衰退の危機にあった京都の復興を支えた琵琶湖疏水の歴史を、ミニチュア模型やジオラマ、アーカイブ映像を通して学ぶことができます。屋外テラスからは噴水越しに岡崎疏水を望む景色も楽しめます。
すぐ隣に広がる蹴上インクラインは、蹴上船溜と南禅寺船溜を結ぶ全長約582mの傾斜鉄道跡で、当時は舟を台車に乗せてケーブルカーと同じ原理で高低差を越えていました。現在はレールが形態保存され、自由に歩くことができます。近くには煉瓦をらせん状に積んだトンネル「ねじりまんぽ」もあり、明治の産業遺産をじっくり味わいながら、さんぽの締めくくりにぴったりのスポットです。春にはインクラインの両側に桜が咲き誇り、古い鉄橋との組み合わせが人気の撮影スポットにもなっています。
https://biwakososui-museum.city.kyoto.lg.jp/
https://biwakososui.city.kyoto.lg.jp/place/detail/23
さんぽの合間にひと休み|岡崎エリアのカフェ
京都市京セラ美術館の地下にあるカフェでは、天井から差し込む自然光のもと、ガラス越しに岡崎公園の緑を眺めながら、京都の生産者やこだわりの食材を使ったおかずプレートやサンドイッチが楽しめます。ピクニックプランもあるため、天気の良い日は公園の芝生でピクニック気分を味わうのもおすすめです。
https://enfuse.jp/
京都国立近代美術館に併設されたカフェでは、自家製の生パスタを使ったカルボナーラや、京都らしい湯葉を使ったカレーなど、企画展にちなんだ限定メニューが登場することもあります。細見美術館の吹き抜けのあるカフェスペースも、モダンな空間の中で展示の余韻に浸りながらひと息つくのにちょうどよい雰囲気です。
https://www.momak.go.jp/Japanese/guide/museumShop.html
歩き疲れたタイミングで、それぞれの館の個性が出たカフェを巡ってみるのも岡崎さんぽの楽しみ方のひとつです。館内のカフェは展示を見ていない人でも利用できることが多いので、休憩スポットとして気軽に立ち寄ってみてください。
岡崎さんぽを快適に楽しむコツ
コース全体で徒歩移動が中心になるため、歩きやすい靴を選びましょう。特に蹴上インクラインの砂利道は歩きやすいスニーカーがおすすめです。
美術館は月曜休館のところが多いため、訪れる前にそれぞれの公式サイトで最新の開館状況を確認しておくと安心です。
琵琶湖疏水沿いは午前中の柔らかい光の時間帯が特に写真映えします。逆に夕方は西日が建築の陰影を際立たせるので、時間帯によって違った表情を楽しめます。
すべての施設を一日で回るのが難しい場合は、興味のある2〜3館に絞ってゆったり巡るのもおすすめです。企画展の内容によって滞在時間は大きく変わります。
各館の間はいずれも徒歩10分圏内に収まっているため、地図アプリを頼りに歩けば道に迷う心配はほとんどありません。休憩を挟みながら自分のペースで進めるのが、このコースを楽しむコツです。
おわりに:アートと建築で味わう、もうひとつの京都散歩へ
京セラ美術館の帝冠様式から、槇文彦や前川國男によるモダニズム建築、武田五一による明治の煉瓦建築まで、岡崎エリアには時代の異なる名建築がぎゅっと凝縮されています。ひとつのエリアでこれほど多様な建築様式に出会える場所は、京都の中でも決して多くありません。
寺社めぐりとはひと味違う視点で京都を歩いてみたい方は、ぜひこのアート散歩コースを参考に、自分だけのお気に入りの建築やスポットを見つけてみてください。何度訪れても新しい発見がある岡崎エリアは、京都を歩き尽くしたと感じている人にこそおすすめしたい散歩道です。
https://www.veltra.com/jp/japan/kyoto/?sid=
YOKKA編集部
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