生食用としてもよく流通してる牡蠣は、きちんとした知識がないと食中毒を起こす可能性があります。
牡蠣にはどのような危険があるのでしょうか。安全な牡蠣の見分け方や、安全に食べるための対策にはどのようなことができるのでしょうか。
今回の記事では、「安全に牡蠣を食べるために知っておくべきこと」について、現役薬剤師が解説します。
牡蠣にあたるとは【食中毒】
「牡蠣にあたる」とは、牡蠣を食べて食中毒になることを指します。
牡蠣が生や加熱不十分のためウイルスや細菌が失活しておらず、そのウイルスや細菌を口にしたことで感染して症状が出てしまうことです。
また、牡蠣に対してアレルギーのある方は、症状から牡蠣にあたったと感じてしまうことがあります。
ノロウイルスによる食中毒は、日本で毎年約100~400件以上起こっています。その中でも牡蠣による感染、そこからの二次感染によって発症することが多いのです。
また、一年を通して11月くらいから発症件数が増え、12~翌年1月が発症のピークとなります。
細菌の一種である腸炎ビブリオに感染することもあります。
腸炎ビブリオは熱や真水に弱いので、しっかり火を通したり、真水でよく洗ってから食べることが大切です。発症時期は7~9月がピークとなります。
※参考
農林水産省HP
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/f_encyclopedia/norovirus.html
厚生労働省HP ノロウイルスに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000856719.pdf
東京都福祉保健局
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/tyouen.html
なぜ牡蠣にあたるのか?原因は?
生だったり加熱不十分だったりで、牡蠣内にあるウイルスが失活していなかったり、体の免疫力や抵抗力が下がっており、ウイルスに負けてしまうことが原因です。
ウイルスの中でも、ノロウイルスが原因となることが多いです。
ノロウイルスと他の食中毒との違いは、ノロウイルスは感染力が強く二次感染が起こりやすいことです。また、ほとんどが経口感染です。
牡蠣にあたると起こる症状
牡蠣にあたると、激しい吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などが起こります。
牡蠣を食べてから症状が出るまでの潜伏期間
一般的には食後1〜2日程度ですが、それよりも早く症状が出ることもあります。
最初は胃がムカムカしたり、気持ちが悪い、お腹がギュルギュルするといった症状が出ることが多いです。
症状は伝染するのか
ノロウイルスは感染力が強く、伝染する可能性があります。
ウイルスが付着した手や器具等に触れ、それが口の中に入ることで伝染していきます。
ウイルスが付着している可能性のある物は必ず消毒しましょう。
ノロウイルスは、一般的な洗剤やアルコールには抵抗力が強いのですが、次亜塩素酸ナトリウムの消毒剤(塩素系漂白剤など)であれば十分な消毒ができます。
次亜塩素酸ナトリウムで消毒ができない場合は、85℃以上の熱湯に90秒以上浸けておくと消毒することができます。
症状の出た方の便や嘔吐物を処理する際も、しっかり消毒を心がけてください。
牡蠣にあたる食中毒を防ぐためには
ノロウイルスは85〜90℃で90秒以上の加熱で失活するので、できる限り火がしっかりと通った牡蠣を食べましょう。
生食する場合は、「生牡蠣」として販売されている物、また鮮度の良い牡蠣を選びましょう。
次で解説する”あたる牡蠣の見分け方”も参考にしてください。
また、体調がすぐれない時や疲れている時、風邪の治りかけなど免疫力や抵抗力が弱っている時は食べないようにしましょう。
子供や高齢者は成人に比べて抵抗力が弱いので、食べる際は十分気をつけてください。
牡蠣にアレルギーのある方は、抗アレルギー薬を内服することで症状を防ぐことができます。
あたる牡蠣の見分け方とあたった時の対処法【食中毒を避けるために】
牡蠣にあたるかもしれないと分かっていても、食べたくなってしまいますよね。
鮮度の低い牡蠣の見分け方や、あたった時の対処法について解説します。
こんな牡蠣は危険!あたる牡蠣の見分け方
牡蠣の身に弾力性がなかったり、形が崩れて身が溶けているようなものや、光沢がなく黄色くなっているもの、また少し臭う場合は、生食用でも生で食べるのはやめましょう。
牡蠣にあたってしまった場合の対処法
脱水症状にならないよう水分をしっかり摂るようにしましょう。
下痢が出てしまう場合は、下痢止めを使わないよう注意してください。
また、嘔吐がある場合は、喉に詰まらないよう注意してください。
周りに乳幼児や高齢者、基礎疾患などをお持ちの方がいる場合は、その方が感染すると重症になる可能性があるので早めに医療機関を受診しましょう。
症状が治まった後も便にウイルスが含まれている可能性があるので、手洗いや洗浄などしっかり行いましょう。
※参考
厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/03.html
あたった場合の症状を抑えるために有効な市販薬
牡蠣にあたってしまい、医療機関を受診するまでに症状を押さえたい場合などには次の市販薬が有効です。
・新ビオフェルミンSプラス
牡蠣にあたったことで乱れた腸内環境を整えてくれます。
様々な善玉菌が含まれている薬なので、牡蠣により増えた悪玉菌に良い影響が期待できます。
・強ミヤリサン(錠)
酪酸菌(宮入菌)を主成分とした整腸薬です。
酪酸菌は耐久性が強く、生きたまま腸まで届き整腸作用を示します。
基本的には医療機関の受診をおすすめしますが、効果的な市販薬も覚えておくとよいでしょう。
症状が治まった後の対策
牡蠣にあたった後は身体が弱っており、免疫力・抵抗力が下がっています。
睡眠を十分にとり、うがい手洗いを徹底しましょう。
また、消化に良いものを食べて胃腸に負担をかけないようにしましょう。
牡蠣に一度あたるとあたりやすくなる?食中毒症状を繰り返す場合は?
「一度牡蠣にあたるとクセになる」という噂を耳にすることがありますが、そのようなことはないので安心して食べてください。
牡蠣にあたる症状を繰り返す方は、牡蠣にアレルギーがある可能性があります。
その場合は抗アレルギー薬の内服や、牡蠣を避けるなど心がけましょう。
牡蠣にあたる多くの原因は「ノロウイルス」食中毒の対策をしよう
今回の記事では「牡蠣にあたるとどうなるのか、あたらないようにするにはどうすればいいのか」薬剤師が解説しました。
生牡蠣にはノロウイルスなどによる食中毒が起こる可能性があることが分かりますね。
食べる際は十分注意し、おいしい牡蠣を楽しんでくださいね。