「うなぎ×梅干し」や「スイカ×天ぷら」など、食べ合わせが悪いと聞いたことはありませんか?
昔から言われているため、何となく避けている方もいるはず。
でもこれって本当なのでしょうか?
諸説ある迷信的な話ではありますが、栄養学も交えながら、管理栄養士が「食べ合わせが悪い食品たち」の謎を解き明かしていきます。
食べ合わせが悪いって本当?
食べ合わせが悪いといわれるものの多くは、昔からの言い伝えであったり、昔の食糧事情が絡んでいたり、また栄養面で問題があったりするなどのさまざまな理由があるようです。
現代においては、通常の食生活を送っていれば、食べ合わせが悪いといわれるものは気にする必要のないものがほとんどです。
栄養面に関しても、誤った情報や古い情報もあり、気にしなくて良いものも多くあります。
結論は、どの食べ合わせも気にしすぎる必要はなく、おいしく食べる方を優先して良いといえるでしょう。
食べ合わせの謎を解き明かそう!【本当に悪い?】
では具体的な食べ合わせの例をみながら、食べ合わせが悪いといわれる理由や、問題ないと考えられる理由について、栄養学や身体の仕組みを参考にしながら解説していきます。
うなぎ×梅干し
うなぎと梅干しの食べ合わせが悪いといわれるのは、梅干しの酸味が食欲を増進させ、高級品であるうなぎを食べ過ぎてぜいたくしないように……という説があります。
これはぜいたくを戒めるためであり、この組み合わせを食べたからといって身体に影響は考えられません。
むしろ梅干しの酸味が胃酸の分泌を促し、脂ののったうなぎの消化を助けてくれるでしょう。
スイカ×天ぷら
スイカと天ぷらは、水分の多いスイカが胃酸を薄め、天ぷらの消化を妨げて胃もたれさせてしまう……という理由から食べ合わせが悪いといわれているようです。
実際、消化に影響するほど天ぷらと一緒にスイカを食べられるわけではないため、通常考えられる量であれば気にする必要はありません。
かえって、天ぷらの油はスイカに含まれるビタミンAの吸収率を高めてくれるため、栄養学的には良い組み合わせといえます。
かに×柿
海の幸であるかにと山で採れる柿は、昔の流通事情を考えると、両方準備すると傷んでしまうことから食べ合わせが悪いといわれているようです。
現在は、気をつけていれば食べ物を手に入れるまでに傷んでしまうことはありませんので、気にしなくて良いでしょう。
納豆×生卵
納豆にはビタミンB群であるビオチンが含まれますが、卵白に含まれるアビジンというたんぱく質が吸収を妨げてしまうため、食べ合わせが悪いとされています。
たしかに栄養学では、このように吸収を妨げてしまう組み合わせは存在します。
ただビオチンは納豆以外にも卵黄、蕎麦、大豆製品、海藻類、きのこ類、魚介類など、さまざまな食べ物に含まれています。
納豆からビオチンだけを摂るわけではないため、気にする必要性は低いでしょう。
納豆×ヨーグルト
納豆に含まれる納豆菌とヨーグルトに含まれる乳酸菌が、お互いに影響してしまったり、お腹をゆるくしてしまったりするため食べ合わせが悪いと言われているようです。
むしろ納豆とヨーグルトは良い組み合わせで、納豆に含まれる乳酸菌は、ヨーグルトに含まれる乳酸菌を増やす働きをするといわれています。
朝食などに取り入れ、腸活に活かしたいですね。
にんじん×だいこん
にんじんの「アスコルビナーゼ」という酵素が大根のビタミンCを破壊してしまうため、食べ合わせが悪いといわれています。
アスコルビナーゼは空気に触れると活性化されるため、にんじんを生のまますりおろしたり、にんじんジュースにしたりすると、ほかの食べ物のビタミンCを破壊してしまうと考えられていました。
ですが、正確には破壊ではなくビタミンCの「酸化」であり、酸化したビタミンCでも体内でビタミンCとしての効力に問題ないということがわかっています。
とくに気にする必要はないでしょう。
きゅうり×トマト
きゅうりとトマトの食べ合わせは、先ほどのにんじんと同じ理由です。きゅうりに含まれるアスコルビナーゼが、トマトのビタミンCを壊してしまうと考えられていました。
こちらも誤りであるため、気にせずいただきましょう。
たけのこ×黒砂糖
たけのこと黒砂糖の食べ合わせが悪いと言われているのは、ぜいたく品の組み合わせだからという説があります。
とくに根拠や身体への影響があるわけではなく、気にせず食べて良いでしょう。
山芋×緑茶
山芋(とろろ)を食べたあとに緑茶を飲むと「脳出血の原因になる」などと言われているようですが、これも迷信でとくに医学的な根拠があるわけではありません。
食物繊維が豊富な山芋と、抗酸化作用のあるカテキンを含む緑茶は、どちらも健康づくりに役立つものです。気にせず取り入れて良いでしょう。
豚肉×蕎麦
豚肉と冷たい蕎麦の組み合わせは、身体を冷やすなどの理由で食べ合わせが悪いと言われているようです。
豚肉に含まれるビタミンB1が身体を冷やす……などと書かれている情報を見つけましたが、ビタミンB1にそのような作用はありません。
ビタミンB1は糖質の代謝を助け、エネルギーを作り出し、むしろ体温を上げる働きの方が期待できます。食べ合わせを避ける必要はないでしょう。
かぼちゃや小松菜などの野菜は大丈夫?
かぼちゃや小松菜、セロリ、にんにく、舞茸など、さまざまな野菜の食べ合わせが悪いと言われていますが、これも科学的な根拠は乏しいものが多く、迷信などの説も多いようです。
どの食べ合わせも通常の食生活では気にする必要は少なく、おいしく食べられる組み合わせばかりです。心配しすぎず、おいしく楽しくいただきましょう。
食べ合わせが良い組み合わせの例【悪いものばかりじゃない】
反対に「食べ合わせが良い」とされている食べ物はどのようなものがあるのでしょうか。
あくまで一例ではありますが、知っておくと得する情報をお伝えします。
うなぎ×ねぎ
ねぎに含まれる硫化アリルは、うなぎのビタミンB1の吸収を助ける働きがあります。
ビタミンB1は糖質の代謝を助けるため、不足することなく補いたい栄養素です。
硫化アリルはねぎだけでなく、玉ねぎやにんにくにも含まれます。
硫化アリルは加熱に弱い成分のため、うなぎと組み合わせるときは生の状態で取り入れると良いでしょう。
ほうれん草×卵
ほうれん草と卵を組み合わせることで、ほうれん草に含まれる鉄やビタミンAの吸収を卵が助けてくれます。
ほうれん草に含まれる鉄は、ビタミンCや動物性たんぱく質とあわせて摂ることで吸収率が高まります。
また、ビタミンAは油と一緒に摂ることで吸収が良くなるため、動物性たんぱく質と脂質を含む卵の組み合わせは良い、というわけです。
卵以外にも、動物性たんぱく質や脂質を含む肉類でも同じ効果が期待できます。
納豆×オクラ
食物繊維が豊富な食べ物同士である納豆とオクラの組み合わせは、腸内環境を整えて腸をきれいにしてくれる食べ合わせです。
ねばねば食材で相性が良いこともあり、おいしく食べられるのも良いところ。
ほかにも食物繊維が豊富なめかぶ、発酵食品であるキムチなども納豆と良い食べ合わせです。
「食べ合わせが悪い」の多くは迷信。おいしい組み合わせを楽しんでOK!
今回の記事では、「食べ合わせが悪いといわれている組み合わせ」について、栄養学も参考にしながら管理栄養士が解説しました。
食べ合わせが悪いといわれているのは、昔からの迷信であったり、栄養が減ってしまったりなどの通説がほとんどです。
気にしすぎる必要はないため、安心しておいしく食べられる組み合わせを楽しみましょう。