食中毒と聞くと、夏に発生しやすいイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし、冬場に流行するノロウイルスなども食中毒をおこす微生物(病原)の一種。季節を問わず気をつけなくてはなりません。洗浄剤・消毒剤などの製造販売を行うサラヤ株式会社の食品衛生学術室室長・村松寿代さんに、食中毒予防について話を聞きました。
年間を通して気をつけたい「食中毒」
食中毒とは、有害な細菌やウイルスを含む食品を口にしたことで生じる健康障害のこと。腹痛、発熱、吐き気、下痢など様々な症状が発症する可能性があります。なお、食中毒には「細菌性食中毒」「ウイルス性食中毒」「寄生虫による食中毒」「化学物質による食中毒」、毒キノコなどの「自然毒による食中毒」などがあります。
中でも細菌性食中毒とウイルス性食中毒は、発生件数の多い食中毒です。特に、気温と湿度が高くなる夏のシーズンは細菌が繁殖しやすい時期。一方で気温が低い冬場は寒さに強いウイルスが活発に活動します。上の「細菌とウイルスの発生時期」の棒グラフにあるように、寒くなる10月から徐々にウイルス(青い棒)の発生件数が増えていきます。
細菌性食中毒とは
細菌性食中毒は栄養、温度、水分の3つの条件がそろった状態のまま時間が経つと、細菌が繁殖して発生します。細菌の大多数は温度が10〜60度で増殖します。また、もっとも増殖しやすい温度は36℃前後です。
ウイルス性食中毒とは
前述の「細菌とウイルスの発生時期」の棒グラフにあるウイルス性食中毒のほどんどが、ノロウイルスによるものといいます。「1月と2月は寒さに強いノロウイルスへの注意が特に必要です。症状は、吐き気や嘔吐、発熱など。近年では、食中毒における患者数が不動の第1位と言ってもいいウイルスです。しかし、その6〜8割は手洗いをきちんとすることで防ぐことができますよ」と村松さん。
食中毒の予防
食中毒予防の3原則
食中毒予防のためには、3原則と呼ばれる「つけない」「増やさない」「やっつける」の3つのポイントがあります。
「つけない」とは、食品や調理中に使うする器具に菌をつけないように、清潔にしておくこと。手洗いはつけないための対策の一つとして有効です。手洗いの正しい方法はこちらの記事もご覧ください。なおノロウイルスが食品についた場合は、加熱せずに口にすると食中毒が発生してしまうといいます。食事の前にしっかり手洗いをするとともに、まずはノロウイルスを食品につけないための対策も重要です。
続いて「増やさない」とは、食品についた菌を増やさないようにすること。食品を保存する際には菌が増えないよう、迅速な冷却を心がけましょう。
最後に「やっつける」とは、食品を加熱し原因菌を殺菌する対策のこと。食品の中心部が75度で1分以上加熱されることで、多くの菌は死滅します。ただし、ノロウイルス感染の恐れがある場合には85〜90度で90秒間以上の加熱が必要です。また、加熱に耐える菌も存在することも知っておきましょう。なので、加熱のみで食中毒対策を行わず、「つけない」「増やさない」「やっつける」を守って総合力で対策する必要があります。
これら3原則を念頭に入れて、年間を通して家族で食中毒対策に取り組みたいですね。