突然ですが、日本で最もワインの生産量が多い都道府県はどこだと思いますか。ブドウの名産地で、ワイン造りの歴史が古い山梨県? 果樹王国・長野県??
実は両方不正解。答えは神奈川県です。「え、神奈川県? 」と意外に思った人も多いと思います。
日本ワインと国内製造ワインの違い
輸入果汁を使っても「国内製造ワイン」
実は、日本で生産されるワインは大きく2つに分けらます。一つは、日本国内で栽培されたブドウのみを使って国内で醸造する「日本ワイン」。もう一つは海外からブドウ果汁を輸入して国内で醸造する、または輸入ブドウ果汁と輸入ワインを国内でブレンドした「国内製造ワイン」です(一部日本のブドウを使っていても、少しでも輸入果汁や輸入ワインが入っていれば国内製造ワイン扱いになる)。この「国内製造ワイン」を日本一生産しているのが神奈川県なのです。
ほんの3km先には海岸が広がる湘南エリア、藤沢市。ここにメルシャン藤沢工場があります。なんと、日本で生産されるワインの約1/3はここで造られているというから驚き。具体的には、みなさんがスーパーなどで見かけることも多い「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」「ボン・ルージュ」「ビストロ」などのデイリーワインです。
ちなみに国内ワイン生産量2位は栃木県で、ここにはサントリーの梓の森工場があり、「デリカメゾン」や「酸化防止剤無添加のおいしいワイン。」などが造られています。
ワイン工場に潜入!
手頃な価格のデイリーワインはどうやって造る?
これらのデイリーワインは、スーパーなどでは500円程度で販売されているものが多く、手ごろな価格のワインとして人気を得ています。ワインといえば1万円を超えるようなものもある一方で、この低価格。一体どのようにして造られているのか気になりませんか。
そこで、前述のメルシャン藤沢工場に行ってみました。メルシャンの国内製造ワインの中でも売り上げ上位の「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」の製造過程を取材しました。
まず海外から濃縮ブドウ果汁を冷凍の状態で横浜港まで運び、解凍して工場まで送られます。これらをブレンドするのですが、常に味を均一に保つためにこのブレンドがとても重要な作業となります。
次の発酵段階で重要なのが「酵母」。ワインの個性と味わいは、酵母の働きによって決まってきます。メルシャンが長年培った技術により、約100種類以上ある酵母の中から華やかな香りやすっきりとした味わいなど、香味特長を引き出す酵母を選定して使用しています。「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」のおいしさは、フレッシュな果汁と個性的な酵母の相性、絶妙なコンビネーションから生まれているのです。
そしてこの発酵の間、真夜中でも嵐の日でも1日3回はタンクの上までいき、発酵の状況を確認しているそうです。強風だと体ごと飛ばされそうな恐怖です……(ちなみにこの上からは江ノ島が見え、晴れていると絶景)。
その後、澱下げやろ過などの工程を経てボトリングです。酸化防止剤を入れないので、酸素(空気)は大敵。ここでは徹底的に空気を遮断します。ワインの製造はもちろん、ワインをペットボトルやビンにボトリングするときなど、すべての製造工程において空気になるべく触れないようにする工夫がされています。さらに、ペットボトルの場合は空気を通しづらい特殊なコーティングがされていて、他のペットボトルに比べて外からの空気が入りにくくなっています。これを毎週需要に応じた量を生産するので、常にフレッシュな状態のワインが店頭に並んでいるというわけです。
デイリーワインに詰まった日本の技術
この他にも、魚貝類と合わさることで"生臭さ"を引き起こす物質を軽減し、食事の相性を高める「フードマッチ製法」を採用した「ビストロ」シリーズ、ポリフェノールが通常の商品の2倍(メルシャン比)含まれている「ボン・ルージュ」シリーズなどがこの工場から誕生し、醸造を続けています。
このように、高い技術を駆使して造られたデイリーワインはただおいしいだけでなく、機能性を持たすことができるのです。また、ほとんどの製品はペットボトル、スクリューキャップを採用していて、持ち運びやゴミ捨てなどが簡単なのも助かりますね。ホームパーティーや屋外でのBBQなど、用途に合わせて上手に使い分けてみましょう。