外国人材の採用が、今や当たり前のことのようになった日本企業。その主な要因はグローバル化の進展という陽の部分と、深刻な人手不足という陰の部分の双方が背景にあるのは言うまでもない。そして、多様な視点や専門的スキルで企業の課題解決への貢献が期待されている反面、受け入れ体制の構築や社内コミュニケーションの整備といった課題も多々あるだろう。では実際に、企業は外国人材とどのように協働し、どのような課題に直面しているのだろうか。そこで今回、日本本社・海外現地法人(シンガポール・タイ拠点)の双方から、世界で誇れる組織へ変革させる企業体質変革パートナーとして、様々な観点から企業を支援しているbeyond global Japan株式会社(https://www.beyond-g.com/)は、外国人材と共に働く日本人意識調査を実施した。
重要な労働力の補完として大きな役割を果たす外国人材
はじめに「外国人材と一緒に働くことでどのようなプラスの影響がありましたか?(複数選択可)※当てはまるものをすべて選択してください」と質問したところ、『人手不足が解消された(25.6%)』と回答した人が最も多く、次いで『社内における国際化・異文化理解の促進(23.2%)』『優秀な人材の確保(21.5%)』となった。とくに外国人材と働くことによるプラスの影響として「人手不足の解消」が最も多く挙げられ、企業にとって重要な労働力の補完として大きな役割を果たしていることが明らかになった。
他にも「社内における国際化・異文化理解の促進」や「優秀な人材の確保」が上位にあがり、職場に多様な視点が導入されることでチームワークが向上し、新しい商品開発やイノベーションの創出にもつながっていると考えられる。また、外国人材のポジティブさによって社内の雰囲気が明るくなるといった効果も見られることから、外国人材によって職場が活性化されているといえよう。では、具体的にどのような影響があったのだろうか。
■どのような影響があったか具体的なエピソードを教えてください
【良い影響があった】
・前向きでハイスペックな人たちなので偏見もなくなり良い影響になった(40代/女性/和歌山県)
・意外な考え方や意見に新しい発見があります。基本的に日本が好きな方が多く、向上心も高いので多少コミュニケーションに難しさがあっても、特に困ることはないです(50代/男性/千葉県)
・トリリンガルの外国人同僚のおかげで、職場内の語学習得のモチベーションがアップした(50代/女性/東京都)
・中国に対する偏見がなくなった(40代/女性/神奈川県)
【悪い影響があった】
・言葉がなかなか伝わらない(30代/女性/宮崎県)
・認識違いが多い(50代/男性/神奈川県)
・我が強く、周囲が引く(50代/男性/東京都)
・わがまま(40代/女性/愛知県)
外国人材の優秀と感じるところ第1位は「語学力」。逆に困る点の第1位は「言語の違いによるコミュニケーションの難しさ」
続いて「一緒に働いている外国人材はどのようなところが優秀だと感じますか?(複数回答可)※当てはまるものをすべて選択してください」と質問したところ、『語学力(51.0%)』と回答した人が最も多く、次いで『グローバルな視野(27.6%)』『学習意欲・向上心(24.9%)』『チャレンジ精神(24.3%)』『前向き・ポジティブ(22.1%)』という結果に。外国人材の語学力やグローバルな視野が評価されていることは、国際的なビジネスにおいて外国人材が大きな役割を果たしていることを示している。
さらに、学習意欲・向上心、チャレンジ精神や前向き・ポジティブな心構えが評価されている点からも、外国人材の自己成長を重視して積極的に新しいことに取り組む姿勢が高く評価されていることが明らかになった。では逆に、実際に外国人材と一緒に働いていて何か困った経験はあるのだろうか。
「外国人材と一緒に働くことで困ったことはありましたか?(複数選択可)※当てはまるものをすべて選択してください」と質問したところ、『言語の違いによるコミュニケーションの難しさ(36.3%)』と回答した人が最も多く、次いで『文化やビジネスマナーの違い(32.6%)』『チームワークや協調性に対する期待の違い(18.1%)』『就業規則や職場のルールに関する理解不足や認識の違い(17.4%)』という結果になり、外国人材と一緒に働く際の主な課題として、「言語の違いによるコミュニケーションの難しさ」や「文化やビジネスマナーの違い」が挙げられた。
また、文化やビジネスマナーが異なる国からやってきているため「文化やビジネスマナーの違い」や「就業規則や職場のルールに関する理解不足や認識の違い」なども挙げられた。これらは「残業や時間管理に対する考え方の違い」や「休暇取得やプライベートの優先度の違い」を生み出す要因だと考えられる。
さらにこれに加え、宗教や信仰に対する配慮の必要性や、自己主張の強さに対する認識の違いも問題となっていることから、異文化間での理解不足が職場での摩擦を引き起こす要因となっていることが明らかになった。
外国人材との関わりはマネージャー以上が密に、リーダー以下はたまに
では、外国人材はどのようなポジションで入社してきたのだろうか。「外国人はどのようなポジションで入社してきましたか?(複数選択可)※当てはまるものをすべて選択してください」と質問したところ、『若手(中途)(44.8%)』と回答した人が最も多く、企業が外国人材を早期に取り入れて、その成長を支援する姿勢を示していることがうかがえる。
さらにマネージャー以上の人に「外国人材とはどのように関わっていますか?(複数選択可)」と質問したところ、『部下で仕事で密にコミュニケーションを取る(31.0%)』との回答が最も多く、次いで『部下で仕事でたまにコミュニケーションを取る(29.9%)』『部下で仕事は一緒にしていないがたまにコミュニケーションは取る(25.6%)』となった。
続いてリーダー以下の人に「外国人材とはどのように関わっていますか?(複数選択可)」と質問したところ、『同僚で仕事でたまにコミュニケーションを取る(24.0%)』という回答が最も多く、次いで『部下で仕事で密にコミュニケーションを取る(18.1%)』『部下で仕事でたまにコミュニケーションを取る(16.4%)』という結果となった。
これらから、役職がマネージャー以上の3割以上が密にコミュニケーションを取っており、リーダー以下はたまにコミュニケーションを取っていることが判明し、日常的にチーム内での外国人材との連携が進んでいるものの、密な関わりはマネージャー以上の層が主に担っていることが明らかになった。
外国人材の多くが日本語能力を身につけて入社
では、実際にどのような外国人材と一緒に働いているのだろうか。「どのような国籍の方が働いていますか?(複数回答可)※当てはまるものをすべて選択してください」と質問したところ、『中国人(40.4%)』と回答した人が最も多く、次いで『ベトナム人(24.6%)』『アメリカ人(23.4%)』となった。この結果から中国人・ベトナム人だけで6割以上と、アジアを中心にグローバルな人材を積極的に採用していることが示された。
続いて「職場内で日常的に使われている言語は何ですか?(複数回答可)※当てはまるものをすべて選択してください」と質問したところ、『日本語(88.1%)』と回答した人が最も多く、次いで『英語(32.9%)』『中国語(11.2%)』となり、9割近くが日本語と回答したことから、多くの外国人材が日本語能力を身につけて入社しているようだ。また3割以上が英語と回答したことから、社内の公用語に英語が採用されている可能性が示された。
さらに「何歳ぐらいの外国人材と一緒に働いていますか?(複数選択可)※外国人材が複数いる場合は当てはまるものをすべてを選択してください」と質問したところ、以下のような回答になった。
・『10代(4.3%)』
・『20代(52.3%)』
・『30代(57.5%)』
・『40代(31.2%)』
・『50代(11.7%)』
・『60代(2.8%)』
・『それ以上(0.6%)』
この結果から、20~40代の若い世代の外国人材が多く採用されていることが明らかになった。この理由としては、柔軟性や長期的な成長への期待が高く、企業が将来性を見込んで採用しているためと予想できるだろう。
「外国人材の日本語能力はどの程度ですか?※外国人材が複数いる場合は、最も当てはまる人が多いもの選択してください」との質問には、『日常的な場面に加え、幅広い場面で使われる日本語をある程度理解している(34.6%)』と回答した人が最も多く、次いで『幅広い場面で使われる日本語をほぼ理解している(27.4%)』『日常的な場面で使われる日本語は理解している(23.7%)』となり、多くの外国人材が日常会話以上の日本語を理解していることから、職場でのコミュニケーションに大きな問題はないことがうかがえる。
しかし、業務を遂行する上で高度なコミュニケーション能力が必要な場合が多く、単なる日常会話では不十分なケースもあることから、企業側も外国人材を採用する際、一定の日本語能力を基準にしている可能性が示唆された。
【調査概要】外国人材と共に働く日本人意識調査
調査期間/2024年9月6日(金)~2024年9月7日(土)
調査方法/PRIZMA(https://www.prizma-link.com/press)によるインターネット調査
調査人数/1,007人
調査対象/調査回答時に正社員の外国人材と働いている・業務上関わりがあると回答したモニター
調査元/beyond global Japan株式会社(https://www.beyond-g.com/)
モニター提供元/PRIZMAリサーチ
仕事柄、記者会見に行くことが多いが、会場となるホテルで出迎えてくれるホテルスタッフに外国人が増えてきたとよく感じている。外資系ホテルでは以前からそうだったが、日本資本のホテルでも最近は顕著で、その外国人スタッフの口から丁寧な日本語が出てくるのも当たり前のことのようになってきた。インバウンドの外国人観光客がコロナ以前より増えている昨今、ネイティブな言葉が喋れる外国人がスタッフにいればトラブル時に対応しやすいというのも理由なのだろう。
また、今回の調査結果に「認識違いが多い」というものがあったが、よくよく考えてみると、日本企業が求めているスキルはあくまでも日本式であって、それこそがグローバルな視点から見ると異質なものであるかもしれない。すべてがそうだとは言わないが、注意する前に「なぜ彼ら(彼女ら)はこれができないのか、考えられないのか」を調べるように心がけてみてはいかがだろう。ひょっとしたら、それをきっかけに企業自体の本当のグローバル化が実現するかもしれない。