「日本は食料自給率が低い」。これはだいぶ前から言われ続けていることであり、周知の事実。だが実際にどの程度が国内でまかなえて、どのくらいが輸入に頼らざるを得ないのか。そして、その比率が一目瞭然でわかるものはないのだろうか。そんな疑問に応えるWEB動画を生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(以下、生活クラブ)が5月27日から公開した。
農林水産省発表の令和4年度における日本のカロリーベースの食料自給率は、わずか38%。つまり、6割を輸入に頼っているわけだが、その6割が手に入らなくなり、すべての食材を国産で賄わなければならなくなった場合のメニューがこれだ。
左からハンバーガー(国内自給率19%)、寿司(国内自給率76%)、餃子(国内自給率25%)、オムライス(国内自給率51%)、アイスクリーム(国内自給率18%)。メニューによっては、もはや原型をとどめていないものもある。ここで気付かされるのは、国内自給率の高い米はほぼそのままの形をしているのに対し、ほとんどを輸入に頼っている小麦がベースのバンズや餃子の皮は輸入が止まったら大変なことになるということ。そしてそれは豚肉や卵も同様だ。これら国内自給だけで作ったメニューを巧みに使ったWEB動画を観れば、日本が直面しているこの危機的状況をアナタも理解できるはず。
そしてこのWEB動画の公開に合わせ、より多くの人たちが日本の食料自給率について考え、「共感(自分ごと化)」できる機会を創出すべく「国内自給 まかない亭」プロジェクトを実施する生活クラブが5月27日、東京家政学院中学校・高等学校にて出前授業を開催した。
普段からSDGsをテーマにした探究活動を様々な形で実施している東京家政学院中学校・高等学校(東京・三番町)。
出前授業の講師を務めた生活クラブ生活協同組合の福住洋美理事(左)と、フードロス削減プロジェクトで規格外野菜のマルシェを開いたり、社会人向け農業の学校で学び、自ら田植えもするという髙橋メアリージュンが特別講師として登壇した。
WEB動画にも登場した国内自給餃子を手にする髙橋メアリージュン。小麦や豚肉のほとんどを輸入に頼っているため、国内自給率の高いニラばかりになった餃子を見て絶句。
クイズコーナーで問題を読み上げる髙橋メアリージュン。ちなみに出題された問題は次のとおり。
Q1. 日本の食料自給率は『68%』である(正解:38%)
Q2. 外国で生まれたヒナを日本で育てたら、その鶏肉は、国産である(正解:○)
Q3. 輸入した飼料(エサ)を与えて、日本で育てた豚肉は、国産である(正解:○)
出前授業に参加した高等部一年生たち。さすが普段からSDGsに取り組んでいるだけあって、正解率は高めだった。
質疑応答コーナーでは「何かしらを変えていくのにネックになる法律は?」といった鋭いものから「髙橋メアリージュンさんはどうして農業をやろうと思ったのか?」といった素朴なものまで質問が投げかけられた。
すべてのプログラムが終了し、生徒たちに歩み寄る髙橋メアリージュン。気さくな有名人の素顔に飛び跳ねて喜ぶ女子生徒もいた。
食料自給率に関する問題は、記者が小学生の頃(40年以上前)から叫ばれていたが、改善されるどころかますます悪化の一途を辿っている。質疑応答コーナーでの福住理事の回答でも触れられていたが、一番の問題は国による「消費者教育」が足りていないのが原因だろう。「我が国は食料自給率が低いですよ。みんなで増やしましょう!」的な声をあげてきたなら、国民の潜在意識の中で「農業従事者を応援しよう」とか「持っている土地にマンションを建てようとしたけど、やっぱり畑を作ろう」などなど、ちょっとしたことから自給率を上げる取り組みや姿勢を見せてきたはず。これからは国民が一丸となってこうした意識を持って、38%から少しずつでも食料自給率を上げていくことが日本の未来のためにも必要だと考えさせられる授業だった。