日々更新されるWebマンガ。大手出版社も本腰を入れ始め、その量たるやハンパな数ではなくなってきた。いくら我らがマンガ大好きジャパニーズだとはいえ、すべてを追いかけるには時間がいくらあっても足りないことだろう。積んどくことができない媒体なのも悩ましいところ。そこでmitokでは絶対に外せない注目作品を定期的にご紹介。Webマンガ、これを追うべし!
赤瀬由里子『サザンと彗星の少女』 トーチWeb連載
SFのサブジャンルとして、主にエンタメ宇宙冒険活劇の呼称に使われるスペースオペラ。広義で言って有名作だと『スター・ウォーズ』、最近のアニメじゃ『モーレツ宇宙海賊』なんかがありましたが、今じゃ古典の趣あり、あえてその狭義的なモチーフや看板を背負った作品は少ないかも。と思ったら、20代の新人作家さんのデビュー作なのに異様に超コテコテなスペースオペラをやってる珍しい漫画が始まってました!
雇用の削減や星間交通の整備で、地球人が宇宙へ出稼ぎに出るようになった未来の世界。出稼ぎ者の青年サザンは、赤髪の少女ミーナと出会い恋に落ちるが、彼女の正体は莫大な生体エネルギーをその身に秘めた「彗星人」。エネルギー目当ての宇宙盗賊たちに狙われ、行く先々で疫病神と知れ渡った彼女にそれでも惹かれるサザンは、弱小盗賊団の宇宙船に同乗してミーナを追うことに。
宇宙海賊ほか古典的なSFアイテム、レトロフューチャーと古いSFアニメの合いの子みたいなデザインワーク、幻想的かつ暖かみのある色使いなどが目を引くフルカラーコミック。キャラクターデザインも80年代テイストだけど、単に擬古的なだけでない描き込みぶりと設定の作り込みが新人離れした読み味です。
お話の筋はベタベタなメロドラマなのに、力強い筆ぶりと映像的な見せ方で、80年代前後のSFアニメの美味しい部分だけ再生したような不思議な名作オーラを醸してがっつり読ませる一作。一定以上の世代にビンビン響くのはもちろん、この類の古風なエンタメの良さがベタに分かるようリバイバルされてて若い読者的にもありがたい作品ですよ!
『サザンと彗星の少女』掲載情報
・作者:赤瀬由里子
・掲載メディア:トーチWeb