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あの夏を想い出すペールエール「シオカゼスローカーブ #002」を猛暑の中で飲んでみた



昔はこんなに暑くなかったよね

そんな話をすると必ず思い出す「あの夏」が、それぞれの人にある。

脳裏に浮かぶあの夏の映像は、だいぶ霞んでしまったのに。
あの甘酸っぱく少し苦い感覚は、まだ心をざわつかせる。
猛暑の中、変化球なビールを嗜む私は大人になった。
風に吹かれ、ゆっくり曲がりながら、進んできた。
あの夏の中で、あの人は笑って生きている。


ー今回は猛暑におすすめしたい、Derailleur Brew Works(ディレイラブリューワークス)が手がける『シオカゼスローカーブ #002』を飲んでみたので、ご紹介します。


常識や一本道に囚われない醸造所が造るビール


いつになったらジリジリと照り付ける太陽と纏わりつく湿度から解放されるのか…。息を吸うだけで苦しい夏には、酸味のあるサッパリとしたビールをゴクゴク飲みたくなります。

そんな今の時期にピッタリなビールが、大阪のブルワリー「Derailleur Brew Works」が醸造する「シオカゼスローカーブ #002」です。

フランス語で「道を外す者=生き方を自分で選ぶ者」を意味する言葉“ディレイラ”を冠し、常識や一本道に囚われない発想やマインドでビールを造り続けていくことを信念とし、それを体現するかのように一筋縄では行かなそうな地域・大阪 西成に醸造所を構えるDerailleur Brew Works。

どこか日本のアニメーションっぽさがあるアーティスティックなラベルと、物語の一節のような文章でビールの世界観を表現するのがこのブルワリーの特徴で、どのビールも飲む前からワクワクさせてくれます。


今回紹介する「シオカゼスローカーブ#002」のラベルは、80年代っぽさ漂う聖子ちゃんカットの女の子が主人公のよう。

サウスポーの彼女がスローカーブの握りで持つ柑橘が、このビールの秘密でしょうか。

あの時代を知っている世代にとっては懐かしく、知らない世代には逆に新しく感じるラストは、淡い青春の一コマのようで心の隅っこがキュッとなるよう。


またラベルには、甲子園をテーマにした小説の「スローカーブを、もう一球」(山際淳司・著)と漫画の「タッチ」(あだち充)を思わせる一節が。

球場に吹く風は、わたしの住む海沿いの街から吹く。
潮の匂いがする、気持ちのいい風だ。
敬遠は一度覚えると、クセになりそうで。
キャッチャーのゴリが、サインを送ったわけだった。
わたしは、その、指先を見た。
その指の、形は、こういっている。
「スローカーブを、もう一球」
東から西へと流れる、風速3.5メートル。
わたしの投げたボールは、乾いた金属音とともに、きまぐれのシオカゼに乗って、
スタンドに消えていった。
“きれいな顔してるだろ。
ウソみたいだろ。死んでるんだぜ。それで…。
たいしたキズもないのに、だた、ちょっと打ちどころが悪かっただけで…
もう動かないんだぜ。な。ウソみたいだろ。”
あの日の、カッちゃんとの約束、果たせなかったよ。
『タッちゃん、うちらの夏って、もう終わっちゃったのかな?』
わたしのことばに、タッちゃんが笑う。
『バカヤロー。まだ始まっちゃいねーよ。』

群馬県にある高崎高校野球部の実話を元にした小説「スローカーブを、もう一球」。
主人公は、ずんぐりむっくり体型で足も球も決して速いとは言えないエース川端。川端はスローカーブを多用し、様々な方法で相手を翻弄していきます。風変わりなエースと監督と共に、甲子園出場経験のない野球部が誰も予期しなかったセンバツ大会に出場を果たしてしまう軌跡を描いた小説です。


そして甲子園の漫画と言えば、どの世代も1番に想い出すであろう「タッチ」。双子の兄弟である上杉達也・和也、その隣に住む幼馴染の浅倉南の三角関係を繊細に描いた野球漫画です。このビールに記されたあの名シーンには、誰もが衝撃を受け涙したのではないでしょうか。

よりこのビールの世界観を味わいたい!という方は、この2作品をビールのお供にしてみるのもおすすめです。


そんなビールの世界観にちょっとだけ郷愁的な気持ちになりながら、水分と塩分が汗となって放出仕切った体を早速潤してみました。


フレッシュなすだちが染み渡る、爽快ペールエール


ビアスタイルは、国産すだち果汁と塩を使用した爽やかなペールエール

パッケージの女の子が握るものの正体は、野球のボールではなく「すだち」だったのです。グラスに注いだ瞬間、すだちの上品な香りがふんわりと立ってきます。


少し霞んだ濃い目のオレンジ色にそそられながら、ゴクッと一口。口に入った瞬間、搾りたてのようなすだちの香りが広がります。すると麦の甘みがほんのりやってきて、キリッとしたすだちの苦みが続きます。

すだちを引き立てるようにほのかな塩味を感じると、最後はキュッと引き締まるような酸味と優しい苦味の余韻が舌の上に残りました。

すだちは発酵の最終段階で投入しているそうなので、とってもフレッシュに感じられます。麦芽には一部クリスタルモルトを使用しており、しっかりしたモルトの甘みと深みもあるため、すだちの主張が前に出過ぎず、見事に融合しています。味の薄いスッキリさではなく、しっかりとそれぞれの味を感じられるのに飲み心地が爽やかなスッキリ感なので、個性のあるビールながらゴクゴク飲めてしまいます。


ちなみにスローカーブとは、緩急をつけたい時や見せ球として投げられる異彩を放つボールのこと。いつもの飲み慣れた真っ直ぐ豪速球なビールもいいけれど、真夏の太陽に似合う変化球なビールを飲みたい!という時は、キンキンに冷えた「スローカーブ」に決まりですね。


一緒に食べたいおつまみは?

らっきょう トンカツ おつまみレシピ ビール
らっきょうの豚巻きカツ

塩味が味わいを引き締めるこのビールは、フライや肉料理との相性は抜群。そこでガッツリと「らっきょうの豚巻きカツ」を合わせてみるのがおすすめ。カツをパクッと食べた後に、ビールをゴクリ。すだちの香りがカツに添えられるとさっぱりと品を増し、豚の旨みを際立たせてくれます。

らっきょうに含まれる硫化アリルは、豚肉に含まれるビタミンB1の吸収を助けるので、夏バテの疲労回復にもピッタリ。ガッツリフライとさっぱりビールで、この夏を乗り切りましょう。

このレシピを見る

一緒に聴きたい音楽は?



桑田佳祐「風の詩を聴かせて」

切ない夏を歌ったこのバラードは、38歳という若さでガンのため他界したプロウインドサーファー飯島夏樹さんが主人公の、実話を元にした映画「Life 天国で君に逢えたら 」の主題歌。大きくゆったりとした海を思わせるメロディーに、あの人がいない現実の中で、あの人を追惜しゆっくり前を向こうとする姿の歌詞が乗せられています。

心にじんわりと曲が沁みたところに、ビールをゴクリ。ビールに感じるほのかな塩っけは涙のよう。最後に残る酸味と苦味の余韻が切ないバラードに溶け込んでいきました。

夏は欲望でギラついた激しい季節のようで、なぜか喪失感に苛まれるような別れの多い季節でもあります。
この曲で脳裏に浮かんだあの人を想いながら、もう一杯。


爽やかなビールをこの夏の熱戦と共に


暦の上では「晩夏」と言われる季節になりました。でも、まだまだ夏が終わる気配すら感じません。

そして甲子園球場100周年を迎えた今年も、猛暑の中、各都道府県大会を勝ち抜いた高校球児達の熱い戦いが繰り広げられています。魔物が住んでいると言われる甲子園で、今年はどんなドラマやスターが誕生するのでしょうか。

浜風に流される白球を全力で追いかける球児に思いを馳せて「シオカゼスローカーブ #002」を飲めば、あなたのあの夏も蘇ってくるかもしれません。

 『シオカゼスローカーブ #002』

  • 〇ビアスタイル:Salty Sudachi Pale Ale
  • 〇アルコール度数:4.5%
  • 〇原材料:麦芽(イギリス製造)、直七すだち果汁、ホップ、食塩/炭酸ガス(麦芽使用比率50%以上)
  • 〇容量:330ml
  • 〇URL:https://derailleurbrewworks.com
  • 〇製造者:株式会社シクロ(ディレイラブリューワークス)
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